68.一匹見たら10匹はいる
思った以上に街のみんなに状況を知らせるのに時間がかかった。
絶対に必要なことだから仕方ないのだがジン達が心配だ。
地図アプリで確認するとジンたちはずいぶんと街に近い位置まで後退している。
これは合流した瞬間一発ぶちかます必要があるな。
とにかく急ごう。
ジンたちとコックローチの戦いの現場にやっと着いた。
ジンたちは上手い方法でコックローチの相手をしていた。
ポックルが《水魔法》と《土魔法》を使って広範囲に泥を撒いている。
広範囲に撒いているために人間であれば苦にならない程度の泥になっているがコックローチの短い足ではかなりの足止め効果をもっているようで動きがかなり遅くなっている。
偶に飛んでいるコックローチも居るようだがそれを優先的にジンとパッシーが《雷魔法》や《火魔法》の《ブレス化》で仕留めている。
それに加えてコックローチも短い時間しか飛べないようでうまく対処できている。
「ポックル。ジンとパッシーにオレの合図で一旦さがるように伝えて。」
ポックルの念話を使って戦闘中の二人に指示を送ってもらう。
(ワカッタ)
「それからポックルはオレの合図で《土魔法》で例の壁を作ってくれ。」
(ウン)
もうしばらくの間コックローチの相手を使い魔3匹に任せてオレは急いでコックローチを一掃する準備を始める。
まず、《プログラム・結界》で直径20センチほどの丸い結界を5つ作る。
次に《プログラム・水魔法》で結界内に水を貯める。
その水を《プログラム・雷魔法》で電気分解して水素と酸素を作り出す。
電気分解が完了したら、結界の中に《プログラム・土魔法》で作ったツブテでは強度が足りないので《プログラム・物質化》でツブテを作る。
用心の為《プログラム・条件》でオレから500メートル離れたら物質化を解除する条件をいれる。
最後に《プログラム・条件》で地面に落ちたら《プログラム・火魔法》が発動して《プログラム・結界》を解除する条件を加える。
《プログラム・爆弾》とコレを仮称する。
もっといい名前を思いついたら変える予定だ。
ただそれにはネーミングセンスのある新しい仲間が必要になるだろうな。
「ポックル、ボムのカウントダウンを始めるぞ。」
「5」
(ミンナ、モドッテ)
「4」
ジンとパッシーがこちらに撤退を始めた。
「3」
ポックルが例の壁、硬い土の板と砂をミルフィーユのように積層にした壁を《土魔法》で作製した。
「2」
ジンとパッシーがオレとポックルの側に撤退を完了した。
「1」
オレがボムをコックローチの大群に《プログラム・風魔法》と《プログラム・ベクトル操作》で別々の場所で飛ばす。
「みんな、伏せろ」
≪ボム≫が地面に落ちた瞬間、≪火魔法≫で発生した火によって水素と酸素が激しく反応して大爆発を起こしコックローチ達を吹き飛ばし、結界から解き放たれた激しい炎が襲う。
その炎を免れたコックローチも爆発で弾丸と化した金属のツブテによって穴だらけになっていく。
5つの耳をつんざく爆発音とポックルの作った壁に突き刺さるツブテの音が終わったあとで壁の向こうに広がっていた光景は酷いものだった。
草原に大穴が5つも開き、ほとんどのコックローチが燃えるそれを免れたものも穴だらけになって死んでいた。
ポックルが作った壁もボロボロになっている。
ツブテを一定範囲内から外れたら解除するようにしてなかった一体どこまで被害を広げていたのだろうか。
これは大勢の人が居るところでは絶対使えないな。
またしても使いどころが難しい《プログラム》を作ってしまった。
「とりあえず見える範囲には生きているコックローチはいないな。」
「ソラがまたとんでもない魔法を作ったぞ。」
「ブヒブヒ」(大量破壊兵器だな)
(アルジ、スゴイ)
やっぱりオレの拠り所はポックルだけだ。
オレはコックローチが他に居ないか探るために《プログラム・魔力感知》と《プログラム・望遠》を組み合わせた《プログラム・拡大魔力感知》を使う。
「マジかよ~。」
全くもって嫌になるな。
「ソラどうしたんだ。」
「ブヒブヒ」(なんか嫌なセリフだな)
(ナニガアッタノ)
オレの《拡大魔力感知》は今倒したコックローチの10倍以上のコックローチを感知していた。




