65.閑話 そよかぜ亭
私の名前はエリナ。
娘のエナと一緒に宿≪そよかぜ亭≫を切り盛りしています。
主人は2年前にあった魔物の氾濫で亡くしてしまいました。
氾濫からの復興の後も宿の業務をこなす日々を送り悲しみにくれる暇もありませんでした。
そんな私の姿を見ていた幼い娘が仕事を手伝うと言ってくれました。
まだまだ幼いと思っていた娘でしたが立派になったと喜ぶべきでしょうか?
それとも幼いのに子供らしく遊べないことを悲しむべきなのでしょうか?
しかし、私ひとりで宿を切り盛りするのも限界でした。
それからは娘と2人で宿を切り盛りするようになりました。
主人が亡くなって2年が経ち、主人がいないことに段々慣れてきてしまったころソラさんがやってきました。
彼はとても不思議な人でした。
女だけで宿を経営しているので男性客は断ることが多く、特に初めて見る方は紹介でもない限り泊めることはありません。
それなのに初めて会うソラさんはなぜか宿泊を断らなかったのです。
エナも止めるそぶりがありません。
「従魔と一緒に一部屋を10日間お願いします。食事がおいしいと聞いたので楽しみにしています。」
いままで宿をやってきて食事がおいしいなんて言われたことはありませんが自分の料理がおいしいと言われるのはうれしいものですね。
「ありがとうございます。私この宿の主人をしております。エリナと言います。この子は娘のエナです。何かご用があれば言ってください。」
なぜか自分でお部屋に案内したい気持ちを抑えてエナに案内してもらいます。
なぜかその後何度もソラさんに話かけられたが他の男の人と違って不快な感じはしませんでした。
むしろ楽しかったのです。
こんなことは今までなかったのですがソラさんはホントに不思議な人です。
その後なぜか大量のお肉を持ってきてくれたりもしました。
ソラさんに甘えたくなる気持ちを押させて断ってもエナと一緒になって進めてくる。
エナは素直に甘えられて羨ましいわ。
ホントこんなことは今までなかったのにソラさんはホントに不思議な人です。
私の名前はエナ。
お母さんと一緒に≪そよかぜ亭≫を切り盛りしている。
お父さんはいない。
魔物の氾濫のときに死んじゃったんだって、けど私はよく覚えてない。
まわりの子たちがお父さんと遊んでいるのをみて羨ましいこともあったけどお母さんを困らせたくないから言ってない。
そんなある日宿に不思議な人が来た。
初めて見る男のお客さんをうちに泊めることなんてないのにお母さんが泊めちゃった。
私もなぜかお母さんを止めなかった。
その人ソラさんとお母さんが楽しそうに話すのを見るのがなぜか嫌だったのでお部屋に案内したときに注意することにした。
いままでこんなことを注意したことないんだけど。
「ソラさん、分かってると思うけどお母さんにちょっかい出しちゃダメだからね。」
「はい!ただ眺めるのやめられません!」
お話しないんならいいかな。
あんまりお客さんにしつこく言うといけないから良いことにする。
だけど、ソラさんはどんなに注意してもお母さんとのお話をやめない。
朝起こしに行くときに強く注意してもダメだ。
そんな風になかなか注意を聞いてくれないソラさんがたくさんのお肉を持って来てくれた。
いままで食べたことないおいしいお肉ばっかりだった。
ソラさんもこんなお肉をもってきてくれるなら、ずっとうちに居てくれたらいいのに。
そういえば最近ソラさんを注意してないな。
でも、不思議ともう嫌な気はしないからいいかな。




