62.運命の美女に会いに行く
意を決してお店の扉を叩いたけど全く返事がない。
お店閉まってるのか?
しかし、ここで諦めたら試合終了だ!
今度は少し強く『ドンドン』と叩く。
まだ、返事がない。
もっと強く叩く。
「すいませ~ん、誰かいませんか~。」
すると全く扉が開く気配はなかったのに急に開いた。
「うるせぇ!!近所迷惑だよ!」
用心棒なのでは思われるくらいガタイの良い男が出てきた。
しかもこの男魔力感知に全く反応がなかった。
今までにこんなことはなくて驚いたが魔力感知も完ぺきではないことが早くに分かってよかった。
≪冷静≫さんと≪ポーカーフェイス≫さんに仕事してもらって驚きを隠す。
「すいません。ここって≪運命の導き亭≫ですよね。」
「はぁ?なんだそれは、今度オレの家に来たら衛兵に突き出すからな!」
男はそのままバタンと勢いよく扉を閉めて家に入っていった。
オレはあまりの剣幕に≪ポーカーフェイス≫さんも形無しで呆然となってしまった。
なんだとここは≪運命の導き亭≫ではないだと。
オレは両ひざをついて崩れ落ちた。
オレの運命の美女は一体どこにいるんだ。
オレの運命の美女は一体どこにいったんだぁ~!
力の入らない足腰で立ち上がりもう一度地図アプリで確認するがやはりさっきの民家を指示している。
このままここにいれば本当に衛兵を呼ばれるかもしれない。
いくら運命の美人に会いたいからと衛兵に捕まるわけにはいかない。
力の入らない足を何とか動かしながら初期型ゾンビのように歩いてこの場を離れようとしていたら、先ほどの民家の扉が開いてさっきの男が出てきた。
「すいません、今から帰るので衛兵は勘弁してください。」
ここで男に衛兵を呼ばれたらいろいろ困ったことになる。
「おい、お前こっちに来い!」
男自らオレを始末に来たのか!?
この男はオレの魔力感知を誤魔化すほどの実力者戦うのは無謀だ!
ここは逃げの一手だ!
相手から目を離さずに摺り足でジリジリと距離をとる。
このまま距離をとったら≪隠者≫と≪偽装≫を全力発動して一気に離脱だぁ!
「おまえ何してんだ≪運命の導き亭≫に用事があるんじゃないのか?」
これは罠?じゃないよな。
どっちにしても運命の美女には会いたい・・・。
「本当?いつまでも帰らないから始末しに来たわけじゃないよね?」
「おまえ頭おかしいじゃねえ?なんでそんな面倒ごとをわざわざ起こすんだよ。」
男は残念なものを見る目を向けてきた。
ですよねぇ~。
「はい、≪運命の導き亭≫にいる美女にお相手してもらいと思ってきました。」
「その美女がおまえをお呼びなんだよ。」
なんあとぉぉぉ!
美女がオレを読んでいる!美女がオレを読んでいるぅぅ!
「行きます!すぐに行きましょ!案内してください!」
1秒たりとも余計に美女を待たせるわけにはいかない。
「おぉ、分かったなら中に入れ。」
オレの気迫にこの実力者でさえビビったか。
美女に会うことにくらべればこの程度の男などどうってことないわ




