35.クマからは逃げられない。
オレはどうやら選択を間違えたようだ。
なんとかクマのおっさんで受付するのを避けたい。
オレは美人には目をつけられたいが、目立ちたいわけではない。
よし今おっさんの威圧に気づいたフリでスルーしよう《演技》のスキルを持ってないのが不安だが仕方ない。
「す、すみません。許してください。間違えただけなんです。」
腰を抜かしたフリをしつつ、冷汗を流し、手を震わせながら言ってやった。
どうだオレの営業暦1年の演技は。
「いや、もう《威圧》使ってないから。」
え!マジですか。
困った、ここで下手にビビッたフリはもっとめんどうなことになるかも。
オレが弱いと勘違いしたヤツに絡まれるとかな。
服に付いた汚れを払いながら立ち上がる。
「いや~、よくお前は鈍いだの、反応が遅いだの言われるんですよ。それじゃオレは美人さんのところで受付しますのでお構いなく。」
ふ、完璧ないい訳だ。
しゃべりながらゆっくりクマから離れて行こうとしているとカマはカウンターを飛び越えてまたオレの肩をつかんだ。
クソなぜか腕を振りほどけない。
オレには解放のスキルがあるのに何者だこのクマ。
逃げられないとかおまえはRPGのラスボスか!
いや最近じゃ逃げれたりするんだっけ?
「まぁ、落ち着け。オレは今暇だから手続きをしてやるよ。」
「なんで上から目線なんだ。オレは美人受付嬢のところへ行くんだ!」
だがこのクマは人間の言葉を理解できないのか全くオレの言うことを聞かずに力づくでオレをカウンターの前に連れてきた。
まわりにいる人達はオレを見ながらなにか言っているがよく聞こえない。
クマからは逃げられないのか。
ラスボスよりすごいのかこのクマは!
はぁ、仕方ない諦めてこのクマに手続きをしてもらうことにするか。
「はぁ、講習を受けたいんです。」
レイナさん達から聞いた講習を受けておきたい。
「いや、お前に講習は必要ないだろ?」
「オレFランクになったばっかりの初心者なんで必要です。」
「へ・・・、ホントか?」
オレはアイテムボックスからギルドカードを出して見せた。
「ホントにFランクだな。」(こいつFランクでオレの威圧を意に介さないのかよ)
これが本日一番の驚きだったみたいだ。
「よし、特別にワシが講習をしてやる。」
「え、いやだよ。美人先生を求む。」
クマなんかに教えてもらってもやる気が出んな。
「いや、おまえみたいな変な奴を教えれるヤツはおらんよ。有数の講習経験があるオレ以外は。」
ジン・パッシーとオレは眉を八の字、口をへの字に曲げて首を傾げた。
「おまえら信じてないな。いいから行くぞ。」
またまた逃げられず。
オレはクマに引きずられて連れていかれた。
クマのおっさんのせいでギルドで目立ってしまったじゃいか。
おっさん責任とって美人受付嬢を紹介しろよ。
あぁ、こんなことなら美人の受付嬢のところに行くべきだった。
後悔先に立たずだなぁ~。
オレの抵抗もむなしくギルドの裏にある広場までひきづられてきた。
どうやらここはギルドの訓練場みたいだ。
「まず、基礎中の基礎スキル身体強化を見せておく。毎日練習して獲得しておくこと。よく見ておけ。」
すると≪プログラム魔力感知≫がクマの魔力の動きを捉えた。
どうやら魔力を発生させて必要箇所に与えて強化するみたいだ。
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魔力解析をしました。
≪プログラム・身体強化≫を獲得しました。
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「おっさん。これでいいのか?」
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ピコーン
ジンが身体強化LV5を獲得しました。
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なんと見ただけでジンはできるようになったみたいだ。
しかもいきなりLV5
「・・・・・、マジかよ。見ただけでできるなんてコイツが天才ってやつか。」
「これ、雷をまとったらかっこいいよな。こうかな?」
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ピコーン
ジンが身体強化・纏(雷)LV5を取得しました。
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魔力解析をしました。
≪プログラム・雷魔法≫を獲得しました。
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ジンがホントの雷神みたいにカミナリを身にまとっている。
「・・・・・・・・・・。」
クマがなにも言わなくなった。
まぁ、パッシーはもちろんできなかった。
クマがフリーズから元に戻ってから続きの講習がなんとか始まった。。
野営の仕方や、森の歩き方、解体の基本、冒険者同士の暗黙のルールなどいままで知らなかった基礎を教われた。
講師がクマなこと以外は有意義な講習だったと思う。
う~ん、この講習でどうやってレイナさんたちは知り合ったのだろうか?
しかし、これでようやく依頼が受けれるな。
クマって怖いですよね~。オレなら眉間にワンパンだという方は『評価』『感想』『レビュー』『ブクマ』をお願いします。




