231.王太子
「これは気が付かれたな。」
どんな存在かは分からないがこれだけ大きな鳴き声が響き渡れば誰でも気が付くだろう。
恐らく帝国が隷属させている魔物の類だと思う。
「さっさと王太子を回収して転移で逃げるぞ。」
兵士が集まってくる前に王太子を助けるためにセバスを先頭に王城の地下をかける。
左右に牢が広がるがどの牢にも誰も入れられていない。
そうした空の牢の先に見張りの兵士が立つ扉が見えてきた。
ここまで近づいても全くこちらに気が付かない。
ここでもまたセバスが一瞬で兵士を気絶させた。
こんなに近づいても気づかれない俺たちのことに気が付いた魔物が非常に気になるが今は王太子を救出するのが先決だ。
兵士たちの慌ただしい足音が聞こえてくるが魔力感知の情報では地下に向かって来る兵士はまだいないようだ。
扉を抜けると天井の窓から差し込む月明かりで薄っすらと人影が見えた。
「ん?お前たちは誰だ?」
おそらく王大使であろう人物がこちらに顔だけを向けて尋ねてくる。
「俺はブラウン公爵に頼まれて貴方を救出に来た冒険者のソラと言います。」
俺はエレナさんから預かった短剣に魔力を込め浮かびあがる文字を見せながら自己紹介をした。
「そうか、ブラウン公爵の手のものか。ここまで進入したのだからかなりの実力者であることは分かるがお前たちが進入したのはレジル派の連中にもバレたのだろうどうするのだ。すまないが私は嗜み程度の剣術ができるだけで足手まといにしかならんぞ。」
いや、さすがの俺も王大使に戦ってもらおうとは思ってませんよ。
王大使を発見したらプライベートワールドに入ってもらった後は俺が転移で逃げれば良いだけですからね。
そう言うわけでさっそく王大使をプライベートワールドへご案内。
ここはどこだとか、おまえはいったい何者だとか言っていますが急いでいるので無視。
城の庭ばかりで聞こえていた兵士の声や足音が段々近くでも聞こえるようになってきた。
そろそろ地下にも兵士がやってきそうだ。
こんなジメジメした地下牢からはさっさとオサラバしよう。
エンドの外壁が見える場所で王太子をプライベートワールドから出てきてもらう。
王大使との接し方が分からないのでフォローしてもらうためにエルにも一緒に来てもらう。
同盟国の王族同士なのでもちろん何度もあったこともある間柄とのこと。
後で分かったことだけど俺もエルの夫になることが確約されていたので身分的には王太子と同格だったのでそこまで礼儀を気にしなくてもよかったらしい。
ただ王太子がエルと俺が婚約していることを知ったときに真剣な顔をしていたのが非常に気にはなった。




