227.お使い
今回の魔物の襲撃に関してアントレ侯爵から話を聞いた。
それによるとこの始まりは王都でのクーデターらしい。
ってそれってノースエンド王国の一大事じゃね?
ことの始まりがいきなりクライマックスじゃないですかねぇ。
このクーデターを起こしたのが王弟リオらしい。
そしてこの王弟リオの後ろ立てがレジル公爵とその派閥の貴族はてはローガ帝国らしいのだ。
そして現在王弟リオを擁護するレジル公爵派と王太子ラインを擁護するブラウン公爵派との内戦状態になっているとのこと。
そしてアントレ侯爵はブラウン公爵派であり、フォレスの街を襲った魔物はレジル派の工作の可能性が高いとの話だ。
レジル公爵の後ろには帝国がいる。
帝国といえばグエン王国でのコックローチ騒動のときにもいたな。
「なるほど帝国が今回の魔物騒動に絡んでいるんですね。」
俺の呟きを聞いてクマとアントレ侯爵が目を見開いて驚きを顕にしているがアントレ侯爵も知らなかったのか?
「俺達がグエン王国を訪れているときにコックローチの大量発生がありましてそのときに帝国の諜報員を捕らえたんです。もしかしたら帝国が何らかの方法で魔物を操ったのではないかと考えていたんですが今回の魔物の襲撃で隷属状態のゴブリンキングとオークキングがいたので繋がりがあるのではと思ったのです。そしたら案の定アントレ侯爵と敵対している者の中に帝国がいるとのこと。状況証拠ばかりですがほぼ確実と言っていいのではと思ったのです。」
グエン王国での魔物大量発生、帝国が魔物を操っている可能性と言う一大事にアントレ侯爵は頭を抱えてしまっている。
クマは何も考えていないのかボーっと紅茶を飲んでいた。
「それでグエン王国は無事なのか?」
「早い内に対応しましたので人的被害は無いですね。避難するために放棄した村が幾つかありましたがこれもすでに復旧の目処が立っています。」
懸念の一つがなくなったからかアントレ侯爵は大きく息を吐いた。
「そうか、それは良かった。」
同盟国からの助力を期待しているのならあまり期待できないぞ。
「ただ。」
「ただ?」
「グエン王国からの助力を期待しているのなら無理だと思うぞ。今回のことで魔物対策として軍部増強を行なうみたいだから今は他国に貸す力はあまりないかもしれない。」
アントレ侯爵は困った顔で苦笑いした。
「確かにグエン王国の力を当てにしていなかったと言えば嘘になるがそれは最終手段だ。自国のことを自国の力だけで解決できなかったら他国から侮られるからな。できればそれは避けたい。」
それならどうしてレジル派は帝国の後ろ盾を受け入れたのだろうか?
俺が首を捻っているとアントレ侯爵がそのまま話始めた。
「レジル派が帝国の後ろ盾を受け入れたのはおそらく魔物を使役する力を知ったからだろう。下手に帝国に逆らうよりもその力をできるだけ利用したほうが良いと考えたのかもしれんな。実際魔物を動かしただけでファルスは陥落しそうだったからな。」
確かに俺みたいな反則技がないとなかなか対抗できないよな。
「それでソラ殿の力を見込んで依頼があるのだが受けてくれまいか?」
「レジル派を亡き者にしろとかは嫌だぞ。」
「そんなことは頼まんよ。君にとってはちょっとしたお使いみたいなものだよ。」




