213.テンペスト?
自分が起こした事態を少しでも収拾するためにセバスとエルにみんなの避難誘導を任せて強風渦巻く空を飛んで行く。
「我主よ。どうやってこの状況を収集するのだ?」
「ぬわ!」
いきなり背後からメアの声が聞こえてきてビックリした。
「メア、ついて来てたのか!?」
おそらくセバスを呼んだときに俺の背中に引っ付いたのではないかと思うけど全く気付かなかった。
精霊だから重さも感じないし、どうやったのか魔力感知にも引っかからなかったようだ。
「うむ、我契約者が起こしたこの超常現象を間近で見たくてのぉ。」
「危ないからプライベートワールドで待っててほしんだけどなぁ。」
「何を言っておる。それなら尚更我が一緒におらんといけんじゃろが!主が危険な所におるのに安全なところでのほほんとしているなど持っての外じゃ!」
見た目が魔女っ子幼女にしか見えないけどメアも大精霊だもんなぁ。
「メアの言うとおりだな。被害を抑えるためにメアの力を貸してくれ!」
「うむ、任せよ!」
メアと話している間にも周りの状況は刻々と変わっている。
遂にはあまりの強風で石が空を舞い始めた。
その強風が集まり巨大な竜巻が形成され上空には分厚い青いキャンバスに墨零したようにを黒い雲が急速に発生し始める。
「あ、主よ。コレもお主の魔法の効果なのか。ちょっと出鱈目すぎるぞ。」
そんなに大口を開けたらメアが大事にしている威厳が全く無くなっちゃうよ。
最初は俺もここまで大変なことになるとは思ってなかったさ。
でもちょっと考えれば分かる筈なんだよね。
成層圏の低温の空気を地上に叩きつけることで極寒の世界を作り上げて温度変化に弱い昆虫型の魔物であるコックローチを一網打尽にする予定だったんだ。
ただ空気中の水分が結晶化するほどに冷やされてしまった為に空気の密度が急激に下がる結果をもたらした。
すると空気の密度を一定に保つ為に周りから空気が移動してくる。
しかし移動してきた空気も冷やされて折角大きくなった空気の密度が再び下がる。
そしてまた空気が移動してくる。
それの繰り返しでどんどん風が強くなっていたのだ。
しかしそれだけでは終わらない。
集まってきた空気は温度の高い空気だ。
冷たい空気は下に溜まり暖かい空気は上に溜まる。
つまり上昇気流が発生するのだ。
するとさらに風が強くなり終いには竜巻を発生させてしまった。
だが気象変化はコレだけでは終わらない。
暖かい空気が上昇気流で巻き上げられた結果雨雲が発生する。
上昇気流の勢いが人が立っていられないほど強いために雨雲は目でみても大きくなるのが分かるほどに急速に成長している。
その雨雲に地上から氷の結晶や水滴が巻き上げられ雨雲内で互いに激しくぶつかり合い静電気を大量に内包していくのだ。
それらの現象が平行して起きた結果目の前には映画の世界でもないような天災が巻き起こっている。
天まで伸びる竜巻が3つもでき、まるで誰がもっとも強いのか競うかのように互いにぶつかっては弾かれぶつかっては弾かれを繰り返している。
そんな竜巻の上では墨のように真っ黒な雷雲が立ちこめ雷がまるで雨のように地上に降り注いでいる。
強風で巻き上げられて空から降ってくる巨木や岩、氷の彫像や巨大な雹が普通であれば命の危険を感じる死の雨のはずなのに今はただの背景の一部にしか思えないほどだ。
「この事態を収拾するのはちょっと無理かな。それにこれを力技で収集したらまた何が起こるか分からん。」
「それじゃ、このまま放っておくじゃの?」
「いや、収めはしないけど早く天候が回復するように手を打つよ。」
《プログラム・素粒子操作》を使って対応を始めた。
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