212.全員退避!
大規模な冷気魔法を実行した後に嫌な風が吹き始めた俺はセバス、ポックル、メアを回収するために転移を実行した。
「セバス、ポックル、メア、すぐに移動するぞ!」
どうやら3人で協力して上手く不審者を捕らえてくれたようだ。
4人の不審者は荒野の土と同じ薄い茶色の服と鎧を身に着けている。
全員植物の蔦で縛られて眠りこけていた。
メアが重力魔法を使って不審者4名と一緒に近くに寄ってくる。
「さ、さっきの天から降ってきた渦はなんなのじゃ?なぁ!なぁ!」
興奮のあまりメアのキャラが崩壊してしまっている。
実は俺の予想を超えてさらに大きな魔法になっていることを知ったらどうなるのだろうか?
メアの質問に答えてあげたいのは山々だが今は安全のためにも獣王騎士団が待機している場所まで退避しないといけない。
「後で説明してやるから、今はプライベートワールドに避難してくれ。」
「絶対じゃぞ!絶対!」
いつも「のじゃ」「のじゃ」言って威厳を保とうとしているメアが駄々っ子みたいに俺の背中にぶら下がっている。
緊急事態でなければ可愛らしく微笑ましいのだけど・・・、メアさんや首が絞まってるからやめてほしいのだけど。
「分かった、分かったから止めてくれ。首が絞まってるから。」
「分かれば良いのじゃ、分かれば。」
宙に浮きながら今までの行動がなかったかのように胸をそらして威厳を保とうとしているがメアがやっても子供が背伸びしているようにしか見えない。
「フフ。」
「なんじゃ、なんじゃ!」
俺の忍び笑いが聞こえてメアが杖でポカポカ頭を叩いてくるが全然痛くない。
「すまんすまん。ホントに危ないから避難してくれよ。」
いつまでもメアで遊んでいるわけにもいかないのでいつまでも俺の頭を叩くメアから逃げるように獣王騎士団が待機している森と荒野の境界に転移した。
「びっくりするじゃない。急に現われないでよ。」
転移するとすぐ目の前にエルが立っていて驚かせてしまったようだ。
「ごめんごめん、エルの無事を確認するためにもすぐ側に転移したんだよ。」
「う、その言い訳はずるいわ。」
頬を赤く染めながらエルはそっぽ向いてしまった。
これはご機嫌を取っておかないとダメだよな。
「エル、ごめん。機嫌直してくれ。」
スーっとエルの手が伸びてきた。
何だろ?
「手繋いで。」
「え?」
「手を繋いでって言っているの。」
「お、おう。」
エルの言葉に従って手を握った。
「もう、女の子と手を繋ぐって言ったらこうでしょ!」
互いの指と指が絡まるように手を繋ぎ直された。
「そうか、ゴメン。」
「イチャイチャするのは後にするべきだと思うぞ。」
ジンに注意されて周りを見渡すとライオネル将軍も含めて獣王騎士団の面々に生暖かい視線を向けられていた。
「姫と婿殿の仲睦まじい姿をもっと見ていたいですが婿殿が慌てて戻られたのはどうしてですか?」
エルとやり取りしている間にも天候は刻一刻と変化しすでに体が煽られるほどの強風が吹き始めている。
のんびりしていると俺の魔法の余波で誰かがケガをするかもしれない。
「魔法が想定以上の威力になりそうなので全員に避難をしてもらいたいのです。」
猶予時間は分からないがあと10分もせずに立っていられないほどの嵐になるかもしれない。
「魔法はすでに放ち終わったから帰って来られたのではないですか?それに避難と言われましてもコックローチが全滅したのかを確認せずにここを離れるわけにはいきません。」
ここで説明している時間も勿体無い。
「ライオネル!おまえの懸念も分かるが今はソラの言う通り避難をするぞ。話は全てその後だ。」
エルの援護のお陰でライオネル将軍も納得したわけではないが避難の準備を始めてくれた。
しかし、まだ問題が残っている。
今から避難しても絶対にこの後起こるであろう災害から逃げるのには間に合わない。
ここに止まってここにいる全員を守り切る自身はないなぁ。
これすべて俺が悪い。
ほかのみんなには悪いけどプライベートワールドを避難先にしよう。
「セバス、来てくれ。」
「お呼びですか旦那様。」
俺の呼びかけと共にプライベートワールドへ扉が開いてセバスが現われた。
「獣王騎士団の全員をプライベートワールド避難させる。入り口を開いてくれ」
「かしこまりました。」
セバスの言葉と共にプラーベートワールドへの入り口が一度に10人は通れるほど大きく開いた。
「ライオネル将軍!この中に避難してくれ。」
「分かりました。」
すでに立っているのがやっとな状態まで風が強くなってきた。
ライオネル将軍にも現在の危機的状況が分かってきたようで素直に返事が返って来た。
「セバス、エル。ライオネル将軍と協力して避難誘導を行なってくれ!」
「ソラはどうするの!?」
「俺は少しでも被害を減らすために行動するよ。」
このままだと全員が避難する前にことが起こるかもしれない。
エルの非難の声を背中で聞きながら強風の向かう先、俺が天から冷気が地上にぶつけた地点に向かって全力で向かった。
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