209.コーヒータイムの終わり
荒野についた俺たちは少数の見張りを置いて手前の森でおそらくコックローチ戦前の最後の休憩を取ることにした。
少量持ち出していたコーヒーをのんびり飲んでいると一頭のラプトルが駆け込んできた。
先行していた部隊の人のようだ。
「ライオネル将軍!コックローチが現れました!」
どうやらコーヒータイムは終わりらしい。
「全員!持ち場に付け!」
休憩中の獣王騎士団のメンバーが慌ただしく動き始めた。
しかし、ライオネル将軍がしっかり訓練しているのだろう、動きには全く迷いはない。
「婿殿、それでは大規模魔法の準備に入ってください。」
将軍って役職の人はもっと粗雑な感じの人かとイメージしてたけど俺が王女を妻になったからかライオネル将軍はとても丁寧に対応してくれる。
いや、俺がこの状況を解決するための要だからかな。
好感が持てるので理由はどうでも良いか。
「分かりました。ジンはエルと一緒に行動してくれ。」
「分かったぞ。俺がしっかりガードしてやるから心配しなくて良いぞ。」
ジンよ、獣王騎士団団長の前で言うセリフではないぞ。
ライオネル将軍が苦笑いしているぞ。
「ライオネル将軍すいません、うちのジンが失礼なことを。」
「イヤイヤ、ジン殿なら問題ありませんよ。実際我々の誰よりも強いですしね。」
俺も何度かみたのだがこの2日間の移動中にジンは獣王騎士団の全員と模擬戦を行って勝っているのだ。
それを笑いながら認めるなんてやはりライオネル将軍は懐が深い。
「それでは私は準備に取り掛かります。」
≪プログラム・飛行魔法≫を使って俺はコックローチの反応がある方向に飛び立った。
獣王騎士団の団員達が敬礼で見送ってくれている。
もっと気楽な感じで見送ってほしいのだが・・・。
すごくプレッシャーになるよ・・・。
5分も飛ばないうちにコックローチの集団が視界に入ってきた。
今も刻々とライヒ荒野の茶色がコックローチの黒色に染まっていっている。
コックローチの大群が津波ようにグエン王国王都に向けて進んでいるのだ。
「ここまで多いと気持ち悪いとすら思わないな。ただの黒い染みにしか見えない。」
のんびりコックローチの動向を観察してばかりではいけない。
ファルスの街の時のように≪爆弾≫や粉塵爆発を利用するやり方ではさすがに魔力が持たないと思っている。
なので今回は自然の力を利用しようと考えている。
とは言っても現象使えるものと言ったら二つしかない。
雨雲が近くに有れば呼び寄せて利用するのが一番効率がよかったのだけどこんな荒野にはそんな都合の良いものはない。
日頃散々都合の良いことが起きているから、もしかしたら雨が降ってるかもって思ったけどさすがにそれはなかったな。
となれば利用できるものは上空か地下にしかない。
さて今回はどっちを使おうか。
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