208.尻が痛い
あ~、ケツが痛い。
この世界に来る前には馬にすら乗ったことがなくこの世界に来てからも一回ラプトルに乗っただけの俺が二日間もずっとラプトルに騎乗していたらケツがヅル剥けになっちまった。
なんでか再生が効果を発揮しないんですよ。
おそらくケガとして認識されてないからだと思うけど。
余りに痛いので≪プログラム・飛行≫でラプトルからほんのちょっと浮き上がって移動しているという物凄く無駄なことをしている。
今回一緒に付いてきたルシア・エル・ジンは平気な顔をして乗っている。
エルは初めて会ったときもラプトルに乗っていたからおそらく今までに何度も乗っているのだろう。
ルシアも長い間旅をしていたのだから何度も馬に乗っているいただろうことも予想できる。
しかし、なぜにジンは平気なんだ?
俺と同じような経験しかないはずなのに。
そうか!
鬼人族の尻の皮はものすごく分厚いんだ!
そうか、そうか、納得。
「ソラ、さっきから俺をジロジロ見てんだ?」
「いやいや、何でもない何でもない。」
そういって俺は前を向くとジンも首を捻りながら前を向いた。
ライヒ荒野に向かう二日間は基本的には順調だった。
遭遇する魔物はウルフやゴブリン、オークなどの弱い魔物ばかりで獣王騎士団がすべて対処してくれた。
俺達も手伝おうとしたが魔力を温存してくれと全力で止められてしまった。
いや、そんなに気にしなくても大丈夫なんだけどなぁ。
まぁ、ライオネル将軍や獣王騎士団の面々を安心させるためにも大人しくしておくことにした。
ただ、ジンは喜々として参加している上に獣王騎士団の面々に気に入られているようだ。
移動中の食事も獣王騎士団に混じって一緒に食べていた。
俺としてはエリナの手料理が食べれないのが残念で仕方がない。
周りの全員が味方だけど俺たちだけプライベートワールドでゆっくりするのは気が引けるからな。
「婿殿、そろそろライヒ荒野に到着します。」
ライオネル将軍がラプトルを寄せてきてわざわざ知らせくれた。
それにしてもまだ木々が日本の田舎の山よりもたくさん生えているのにもうすぐ荒野に出るとは想像できないな。
「分かりました。間に合いましたかね?」
「先行した部隊からの報告ではまだコックローチは現れていないようです。」
あと心配なのはコックローチがまとまって移動してくれているかだな。
ライオネル将軍の報告から5分も立たずに急にさっきまでいたところに生えていた植物がなくなり森が忽然と終わり荒野に到着した。
左右を見ると植物の緑と荒野の茶色がくっきりと現れた境界線がずっと続いている。
荒野は今までいた森とは打って変わって強い日差しと地面の照り返しによって肌がヒリヒリするほどの熱を感じる。
空気は乾燥して風が土埃を巻き上げている。
背の低い植物がポツポツ生えているだけで生き物の気配は感じない。
確かにここでなら多少大規模な魔法を使っても問題ないだろう。
心置きなく魔法をぶっ放しますかね。
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