143.獣人国グエン
ミラさんが眼鏡をクイっと右手で押し上げた。
できるキャリウーマンのミラさんに非常にマッチした動きですね。
「残念ながら私も『大地神の機械像』がどんなもので何処にあるのかは存知ていません。ただ大地神は獣人族の国グオンで信仰されている神なので獣人国に行けば何かヒントがあるかもしれませんね。」
国外かぁ。
「そのグオンに行けるような依頼はないですよね?」
ミラさんが不思議そうな表情を浮かべる。
「ああ、ソラさんはご存知ないのですね。グエンは友好国なのでギルドの許可証と金貨1枚あれば国境を渡れますよ。」
え!
「国境ってそんな簡単に通れるんですか?」
「グエンは特別ですね。王国がグエンと軍事協定を結ぶほど友好的なので国境を渡るのも比較的簡単になっています。これが仮想敵国になると基準が厳しくなりますね。」
「ちなみに俺は許可証を発行してもらえますか?」
俺は少しドキドキしながら聞いた。
「ええ、ソラ様ならすぐに発行しますよ。」
ミラさんはすぐにカウンターから中の職員に許可証を取りに行かせた。
「すぐにお持ちしますのでしばらくお待ちください。」
「そう言えば珍しくクマが受付カウンターにいませんけどどうしたんですか?」
「ああ、最近エント子爵がこの街に戻って来てギルドマスターを呼び出したのでその対応に向かっています。」
エント子爵って元この街の領主・・・・。
今は違うよね?
あれどうなってんだろ?
「エント子爵ってまだこの街の領主なんですか?」
「まだ領主が代わったという知らせはギルドには来てないからまだ書類上は領主ですね。現在はアントレ侯爵が王国から統治権を渡させているのでただの名前だけですけどね。」
住民を見捨てたのに統治者のままなの?
日本じゃ絶対にないな。
「エント子爵には何のお咎めもなしってことですか?」
「さすがに何のお咎めもないってことは無いとは思いますが、エント子爵の派閥での立ち位置や王家と各派閥の思惑など様々なことが絡んでくるのでなんとも言えません。」
日本で言う大臣は辞めても国会議員は辞めませんみたいな感じになるのかな?
「まぁ、俺には貴族や王家のことは分かりませんがこの街の人達の不利益にならなければいいですが・・・。」
「その通りですがこればかりは何とも言えません。」
ギルド職員が一人カウンターから出てこちらにやって来た。
許可証が出来たのかな?
「ソラ様。こちらが許可証になりますね。」
ミラさんから手渡しで許可証を受け取る。
「許可証の発行にはお金は必要ないのですか?」
「発行自体には料金はかかりませんが国境を越える際に許可証1枚当たり金貨1枚が必要です。そして許可証1枚で10人まで国境を越えれます。」
それなら多少人数が増えても大丈夫だな。
「近いうちにグエンに向けて出発すると思います。一応クマにも伝えて下さい。」
「お気に入りのソラさんがいなくなるとギルドマスターが寂しがりますね。道中お気をつけて下さい。」
クマなんかよりミラさんに寂しがられてたいな。
それにしてもクマってギルドで共通認識されているんだな。
もしかしなくても俺のせいかな。
ま、いいか。
「ミラさんもお体にお気をつけて。」
ミラさんに挨拶をして俺達はギルドを後にした。
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