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チャラ王

突然の大物登場。


「正直すまんかった。」




俺は牢屋にいたと思ったら、いつのまにか王様に謝罪されていた。


何を(以下略)。

とりあえず、今後王様のことを心の中で佐々木と呼ぶことにする。




おっさん騎士との気まずい雰囲気の中、肉体言語騎士と共に現れた人物は自らをこの国の王だと名乗った。そして俺はそれを嘘だと思った。王制の仕組みなどはよく知らないが、一国の王様がこんな暗くて汚い場所に自ら足を運ぶとは思えなかったし、そして何よりもその風貌が俺の中の王様のイメージと全く異なっていたからだ。


この男を一言で表すとするならば、チャラいホスト。

顔は整っているし、服装や髪形もお洒落だが、どことなく軽い雰囲気を纏っている。友達がたくさんいて、SNSを常にチェックし、女の子に囲まれている姿が容易に想像できてしまう。そしてそういうタイプは俺が苦手とする人種である。この佐々木に対しても第一印象で拒否反応が出た。

しかしどうやら本当に佐々木は王様らしい。


ドウシテコウナッタ。


あの自称神にしてこの王あり、ということなのか。どうも腑に落ちない。


「でも、今、俺はもう失うものは何もない。俺に出来ることだったら、とことんやる。」


騎士2人が頭を下げつつも尊敬のまなざしで佐々木を見ている。王様が簡単に謝罪して良いものなのかとか、失うものはたくさんあるだろとか、王のくせにすごく軽いなとか、もしかしてツッコミ待ちなのかとか、言いたいことはいろいろある。それはもう次々と頭の中に浮かんでくるが、相手は仮にも王様である。本当ならば庶民が軽々しく口をきいてはいけない人物である…ハズだ。たぶん。おそらく。

よってシンプルイズベスト、定番の質問をぶつけてみた。


「ここはどこですか?」


そして俺の名前は何でしたっけ?


名前に関しては聞いても絶対分からないだろうから声には出さなかった。そしてここがどこかなんて答えられてもどうせ分からないだろうと思った。だって異世界の地名なんて一つも知らないし。

その予想通り、返ってきた答えは見たことも聞いたこともない首都の名前だった。一応国の名前も聞いてみたが、やはり全く分からなかった。地理は高校で習っただけで記憶もあいまいだが、地球上には存在していないはずだ。


佐々木の言葉を素直に信じたのは、俺を騙す理由がないからだ。そしてなにより、ここに来るまでに通った街中で見た建物や服装、食べ物が地球上にあるものと全く異なっていたからだ。すでに魔法らしき存在も確認した。


まじかぁ。


急に異世界に来たという実感が湧いてきて悲しくなった。悲しいというか、寂しいというか。友達はそんなに多くないし、両親は既に他界している。仕事については俺の代わりなどいくらでもいる。だから日本に残してきたものは少ない。しかし、ごく僅かでも存在していた繋がりが、もうなくなってしまったのかと思うと泣きそうになる。

失うものがないのは俺の方だ。


俺の様子で何かを察したのか、心配げにこちらを見つめる3人。肉体言語騎士は特に暴力を振るった負い目があるせいかオロオロしており、俺とおっさん騎士と佐々木との間を視線がいったりきたりしていた。


今は落ち込んでいる場合ではない。


なんだかよく分からない内にこの世界に来て、あれよあれよという間に牢屋に入れられ、突然の王様からの謝罪。さすが異世界と言うべきか、なんとも濃い1日である。だがまだ今日は終わらない。これからやるべきことのために、佐々木に満面の笑みを向ける。


「さっき、とことんやるって言いましたよね?」


言質は取った。

当面の生活費、そして住む場所と仕事が手に入れば、ある程度これからひとりでも生活していける。


後で振り返ると、国王相手に交渉とか何考えてんだとこの時の自分をぶん殴りたくなるが、今ここに未来の自分はいない。そして俺はこれでも一杯一杯だったのである。不安とか、緊張とか、恐怖とか、そういうマイナスの感情は昔から表に出さないようにしていたけれど、目まぐるしく変わる状況についむしゃくしゃしてやった。反省はしていない。


急に雰囲気が変わった俺におっさん騎士がドン引きし、肉体言語騎士が大層驚いた顔をしていたような気がしたが、今は交渉に集中しなければならない。交渉相手である佐々木はというと、新しいおもちゃを見つけたかのような、とてもいい笑顔でこちらを見ていた。




この時俺は、面倒事イベントからは逃れられないのだと察して、反省はせずとも少しだけ後悔した。




王様=ホスト

ホストという人種に会った事はありません。人たらしというイメージ。

チャラ男は苦手。


結局主人公にかけられた容疑とは何だったのか。

そのうち明らかになるかもしれない。

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