家作り五日目 「コイツがやりました」
1月8日に家作り四日目の話の内容を付け加えました
まだそちらを読んでない方は、気をつけて下さい
空から叩き落とされたドラゴンは、ボロボロとなっていた。
『グ、ググル・・・』
ガイウスの一撃により頭から生えていた角はパッキリと折られ、キーコの蔓でグルグル巻きにされ地面に縫い付けられていた。
「ふぃ〜、久々に本気出して疲れたわ」
ガイウスはそう言うと腰を地面へ降ろす。
疲れたなどと言いながらも、息はそれほど乱れていない。
「全然そんな風には見えないぞオッさん。てか、何だよアレ。ドラゴンの攻撃、晒してただろ」
ジョージは先程ガイウスが使っていた技について質問した。
それに対して、ガイウスはさも普通のことのように返す。
「ん?あれか。あれは以前の馴染みが使ってるの見てな。見様見真似の技だ。俺は器用じゃねえからアイツ程上手く出来なかったけど」
嘘つけ、とジョージは心の中でツッコミを入れる。
あれで器用じゃないって・・・・・器用の定義がおかしい。
「そう言えば、このドラゴン火を一度も吐かなかったな。ドラゴンって火を吹くイメージだったけど」
「そいつは恐らく、コイツが子供だったからだろう」
「は?子供って、この大きさでか!?軽く家より大きいだろ」
ガイウスの驚愕の真実に、驚きを隠せないジョージ。
「俺もドラゴンなんか滅多に見た事ないが、大人のドラゴンはこの比じゃねえよ。少なくとも3倍はデカかったな。流石にあれは見て逃げ出した」
「マジか。うん?じゃあさ、コイツ子供なら近くに親いるんじゃね」
「その心配はしなくていいだろう。ドラゴンってのはすぐに独り立ちする生き物だからな。親はいないだろ・・・・多分」
「そこははっきり宣言してくれよ!?」
ガイウスのはっきりしない物言いに不安になるジョージ。そんなジョージを宥めるようにガイウスは言葉を続ける。
「まあ、待てジョージ。ドラゴンは賢くて、人の言葉が解る。だから、説明すればなんとかなる筈だ」
「説明って言っても何て言うんだよ」
疑問を投じたジョージは、ガイウスはふっと笑いジョージの肩に手を置き、魔法の言葉を唱えた。
「『コイツがやりました』さ。な、簡単だろ」
「それ俺が助からない!?擦りつける気満々じゃねえか!!」
「良いだろが、こんぐらい!お前、英雄になって皆からチヤホヤされたいんだろ!今こそ、その名を轟かすチャンスだ」
「ならないだろ!なったとしても、『ドラゴンに刃向かったバカ』として語られるわ!」
ワーキャーと互いに言い合い喧嘩する2人。
次第にそれは治まり、沈黙が流れる。
2人は色々と疲れていたのだろう。
午前中は慣れない家作り、その後のドラゴンとの戦闘
、最後の言い合い。
そんな状況だったからだろうか、ぼそりとジョージがこんなことを呟いた。
「・・・食べて証拠隠滅でもするか」
『ガルッ?!』
その言葉にビクリッと震えるドラゴン。
ガイウスはジョージの案を聞いて、ちらりとドラゴンの方を向く。
「そう言えば、ドラゴンの肉って最高に旨いと聞いたな」
ガタガタガタ!
焼かれる己をイメージして震えだしたドラゴン。
今すぐにでも逃げ出したいが。
その姿を可哀想に思ったのか、キーコが蔓の縛りを少しだけ緩める。
「そう言えば、骨って肥料になるんだっけ。ドラゴンの骨なら尚更期待できるな」
「・・・・・・・」
ジョージの発言の後、何故かドラゴンに絡みつく蔓がキュッとさっきより強く絞めつける。
終いにはボロボロと泣き出すドラゴン。
ここまで言ってる2人だが、食べるというのは冗談だ。
大人気ないが、こんな事を言ったのはただの憂さ晴らしである。
流石にドラゴンの涙を見てやり過ぎたかなと思い、そろそろ冗談だとネタばらしをしようとした時。
ドラゴンの身体からボフンと白い煙が噴き出した。
苛め過ぎてドラゴン苦し紛れの攻撃でもしたのかと思い、ガイウスは鉈を構えるが。
煙が晴れると、そこにはドラゴンの姿は無かった。
代わりに、
「ゴメンなさいじゃー!後生じゃから許してたもう!」
裸の幼女が泣きながら土下座をしていた。
しかも、ただの幼女ではない。
背中からは蝙蝠のような小さな翼が生え、お尻からはトカゲのような尻尾が生えている。
突如消えたドラゴン。
全裸で土下座する幼女。
明らかに人ではない翼と尻尾。
あまりの激流の如く事の展開に付いて行けず、思考が停止しているガイウスとジョージ。
だが、展開はそこで終わらなかった。
「何してるんですか?ジョージ、ガイウスさん」
今まさに気絶から回復したリーナちゃん。
しかし、その声は氷点下よりも冷めていた。
振り向いた2人が見たのは、笑顔を浮かべるリーナ。
だが、その目は笑って居ない。
改めて2人は視線を戻す。
そこには、地面で土下座する号泣全裸幼女が。
しばし固まる二人。だが、そこからは速かった。
ジョージとガイウスはお互いの方を向き、同時に口を開いた。
「「コイツがやりました」」
この後、ガイウスとジョージはリーナに説教を食らった。