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家作り二日目 「交渉だ?」

あれは、山の奥深くにある湖に魚を採りにいった時であった。

村の人でも余りここに足を運ばないと聞いていた場所に、ジョージがいた。


すぐに挨拶でもしようかと思ったが、おかしな点に気づいた。

村からここまでへの道のりは険しく、大の大人のでも一苦労するといのに、ただの少年が、しかも疲労の色など全く見せずにそこにいる。



俺は声をかけずに木に隠れこっそりと覗くことにした。

そして、その判断は正しかった。


ジョージがどこで知ったのか火魔法の呪文を唱え始めたかと思えば、手から炎の玉が湖へと放たれた。

それが着弾するやいなや湖に爆発が起こり上へと飛び上がった水が重力に従い雨のように降り注ぐ。


・・・確定だな。


俺は隠れるのをやめ、大胆不敵に歩いてジョージの方へと近づく。

そんな俺に気づいたジョージは「ヤバッ!」と驚き、あからさまに警戒の色を浮かべている。

しかし、俺の予想とは違い逃げる素振りはしなかった。


俺は面倒臭いことは嫌いなので、単刀直入にいった。


「お前は何者だ。言え。事と次第によっては貴様を排除しなければならない」


殺気を全開にしながら、持ってきていた斧を手に声を荒げずにただ忠告する。

俺の殺気に当てられたジョージはぶるりと体を震わせたが、


「・・・へ、へへっ」


しかし、何故かこの状況で目の前の少年、いやもしかしたら人の皮を被った化け物かもしれない存在は笑っていた。


「ちょうど良い。最近ここらの魔物じゃ相手にならなかったところでね。俺がどれ程強いのか試すのに良いチャンスだ」


どうやら、コイツにとっては俺は思いもよらぬ来訪者であったわけだが、好ましい偶然でもあったみたいだ。


ジョージは親から貰ったのか護身用のナイフを革の鞘から抜くと、俺に切っ先を向け、不遜に良い放った。


「安心してよ、オッサン」


そう言うと、ジョージの姿がぶれたかと思えば消えていた。

違う。俺の眼がアイツの速さに追い付けないだけだ。

そして、俺が余りのことに驚愕して固まっているすきに、ジョージは俺の背後からナイフを振りかざした。


「命まではとんないさ」



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「とか、自信満々に言ったくせに速攻で負けたよな、お前。今思うと、あれって赤面ものだな~。という訳で、本人の感想を聞いてみたい訳だが、どんな感じかね弱っちいジョージ君」


とまあ、あの後背後からの攻撃を避けて1発KOしたんだが。

あまりの呆気なさに毒気を抜かれてしまったんだよな。

で、現在もブチ切れたジョージが襲いかかってきたから、返り討ちにし組技で懲らしめていた。勿論、正当防衛だ。


「うるさい!黙れイテテテテテテテッ!!痛い痛い!子供相手にマジでコブラツイストとか大人げないとは思わないのかオッサン!」


「ええ~、だって~どっかの誰かさんは、最強(笑)だって言ってたからよ~。本気じゃなきゃ失礼かなと思ってね~」


「泣かす!いつか絶対泣かしてや、っイッテェェェェェェ!!ごめんなさい冗談です!ギブギブギブ!」


ふむ、今日はこんぐらいで良いだろう。

組みを解いて、ペイっとジョージを放り捨てる。

受け身をとれなかったジョージが顔面から着地しブべっと言ったが気にしない。


しかし、いまだ元気は有り余ってるらしく、こちらを睨んで悔しそうに呟いている。


「くそっ、何で勝てないんだ。俺、女神様からチート貰ったはずなのに・・・」


「まーた訳の解らねえこと言ってる。言っとくが、お前力だけで見たら俺より優れてるからな、悔しいがな。ただ、その才能をお前が見事に無駄にしてる。つまりは、お前の弱さが敗因だ」


スピードは申し分ないのに緩急がなく直線的、攻撃するときに狙いが視線でバレバレ、ナイフは斬りかかるではなく振っている、魔法の無駄が多いなどなど。

駄目な点を挙げていったらきりがない。


「うぐぐっ・・・」


しばらく恨めしそうに唸っていたが、唸り声が止んだ。


「なあ、オッサン。俺に闘い方教えてくれよ」


「・・・・・・はぁ?」


「おい、あからさまに『何言ってんだコイツ頭大丈夫か?』的な顔すんな。流石に傷つく」


いや、しょうがないだろ。俺の今の気持ちは、正しくそれなんだから。


「いやな、俺だって本当はこんなこと頼みたくねえけど訳だ『やだ、無理、断る』おい、せめて最後まで聞けよ。ったく、俺は強くなりたいが、いかんせん村には強い人がいない。そこで俺より、つ・・・つよいオッサンに頼んでるんだよ」


おお、驚いた。俺より劣ってること自分から認めやがった。普通ならプライドが邪魔するもんだが、なかなかどうして。

少しは評価を変えてやるか。言葉づかいはひどいままだが。


「よし分かった、断る。じゃあな」


「オイオイオイッ!オーイッ!おかしいだろ!話の流れ的にそこは許諾するとこだろ!」


うるさいなーコイツは。説明しねえと分からないようだから教えてやるか。


「理由は二つ。まず、お前にはメリットがあるが俺にはない。もう一つは、俺は家作りで忙しい。以上だ、分かったか」


じゃあなと一応別れの挨拶をしてやって、さっさと家づくりに勤しもうと思いジョージに背を向けた。


「・・・・・・つまりメリットがあれば良いんだな、オッサン」


「うん?」


だが、ジョージの含みのある言い方に立ち止まり、振り返る。


「オッサンさ。俺が家作るの手伝ってやるよ。俺には異世界の知識がある。闘い方を教えて貰う代わりに、その知識を提供するよ」


ジョージはそんなこと言いやがった。

異世界の知識って、せめてもう少しマシなこと言えよな


「はぁー。あのな、寝言は寝て言ってろよな。どんなに力が強くても、俺の半分も生きてないのになーーー」


「水素酸素玉」


俺が呆れながら軽く説教してやろうかとすると、ジョージは突然聞いたこともない言葉と共に魔法を行使した。


攻撃でもするのかと警戒し避けられるよう準備をしたが、どうやら違うようだ。

ジョージの手のひらに空気の塊らしきもの、無色なのでよく分からないが、が集まっているだけだ。

ジョージはその空気の塊を上へと投げると、即座に別の魔法を唱え塊に向けて放った。


火玉(ファイアーボール)


初級魔法の一つである火玉。

その名の通り、拳サイズの球状の火を対象に向けて放ちぶつけるだけの魔法。威力は小さく、軽く火傷する程度。


その火玉がひょろひょろと向かって飛んでいった。


「なあ、お前何をして」


「耳塞いだ方がいいよ」


は?と声に出そうとしだが、出来なかった。


ッバアアアアン!!


火玉が空気の塊に触れたかと思うと突如ビリビリと体が震えるほどの爆音が響き渡った。


「なっ!?」


予期もしない理解不能な現象にあっけにとられ上手く声が出せない。

しかし、驚く俺とは違い、ジョージは何もなかったかのように淡々と先程の現象の説明を始めた。


「これは単純な燃焼といった化学反応だ。酸素と水素を集めた玉に至って普通の火玉をぶつけることで燃焼現象が起き爆発となった。オッサン、今言った意味解るか?」


「・・・・・・お前、本当に何者だ」


異世界、前世、女神さま、転生。

戯れ言かと思い、ジョージの言葉は流し聞きしてきたが、流石に信憑性が沸いてきた。


ふふんと愉快そうにジョージは笑い、俺に言葉を投げる。


「何度も言ってるだろ。俺の()()()()はジョージだって。でだ、俺はこれ以外にも役立つ知識は沢山持ってる。勿論、家作りに役立つものも」


そう言ってジョージー手を俺へと差しだし、


「交渉だ。俺がオッサンに知識を教える。その代償にオッサンが俺に闘いの手解きを教えてくれ」


「・・・役に立たなかったら、すぐに止めるからな」


俺は差しだされたジョージの手を握り、交渉に応じたのだった。






その後、村に響いた爆音を聞きつけた村長が問いただしに現れ、必死で誤魔化した。

やはり、許諾するの早まったかな・・・

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