プロローグ 「新しい人生」
クロス王国に一人の騎士がいた。
ガイウス・ユーキッド
その男は、この国の兵士だけでなく、敵国の兵士にですら名が知られているほどに強かった。
歳は20代後半。短く切り揃えられた金髪に、絞り込まれた体。
身に付けている鎧は使い込まれているのか傷でボロボロ。
手や足も鎧同様に傷だらけ、頬には大きな一筋の傷痕があり、それがこの男の特徴でもあった。
ガイウスは一人で敵の部隊を殲滅し、敵だけでなく味方からも恐れられるほどの強者であった。
故に、そのガイウスが突然騎士を辞めると言った時は国を挙げての大騒ぎとなった。
ガイウスの上司だけでなく王自らが説得しようとしたが、ガイウスは聞く耳を持たなかった。
最終手段として軍を使っての武力拘束を図ったが、力業で騎士に軍の兵士たちを薙ぎ倒し、そして、騎士を辞め王の下を離れたのだった。
どうして辞めるのかと、王の質問にガイウスはこう答えた。
「戦うことに疲れた。だから、騎士辞めて休む。それだけだ」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
とある辺境の寂れた村。
そんな地に住居を引っ越した変わり者の男が現れた。
大荷物を背負う男の名はガイウス・ユーキッド。
今の彼は騎士ではなく、ただの村人である。
過去の己を捨て、ここから新しい人生を始めるのだ。
「よし、まずは地元の方への挨拶からだな」
そう生き生きとした顔で村へと足を進めるのだった。
こうして、ただのガイウスの波乱の家作り物語が始めるのだった。