青いワンピース
今回切りが悪くて少し長めです!
その日の夜、夕飯も終わり、後は寝るだけの状態で私とセレナはお喋りをした。
「もうね、サラさんったら本当に可愛いの!荷物持つの大変だったけど、あれなら毎日行ってもいいなー!」
セレナは満面の笑みで足をばたつかせた。
弾みで彼女が腰掛けていたベッドが揺れ、ギシギシと音を立てる。
「サラさんって何かこう、かっこいいイメージがあるな。仕事はパパッとこなして、何でもシャキシャキやっちゃうイメージ!」
セレナは大きく頷く。
「そうね!確かに強さは感じるわ。サラさんに憧れちゃう!」
「ねー」
ところで、とセレナは切替えて真面目そうな顔になった。
「...屋敷の掃除って...大変だった?」
私はなんだかその変化が面白くて少しだけからかいたくなった。
すぅーっと大きく息を吸う。
「すっ...ごく大変だった」
すっ、の後にセレナが一緒になって息を止めたのが私は可笑しくて笑ってしまうかと思ったが、必死にこらえて真顔をキープした。
彼女の表情が青くなる。
「...ふっ!あはは!大丈夫だよセレナ!そんなに大変じゃなかったから!」
彼女の頬が膨らむ。
「もう!リーナってば!」
「ごめんごめん」
翌日セレナは掃除を終えて、かなり大変だった、と私に言ってきて、本当に疲労困憊していた。
それから数週間、徐々に仕事も覚え、それなりに出来るようになってきて、二人揃って休日を貰った。
「リーナは明日どこか出かけるの?」
休日の前日、私達は初めての休日にワクワクしてベッドに横になるものの眠れずにいた。
「そうだなぁ。持ってきた本がまだ読み終わってないから読みたいかな。服もあんまり持ってないし買いに行きたいな。お金があればだけどね。セレナは?」
「私はとにかく外に行きたいな!ゆっくり街も見たいし、お菓子も欲しいし。雑貨とか見たいものいっぱいだなー!」
「明日楽しみだねー!」
時計を見ると夜中の1時半。
いくら明日が休みでも、いい加減寝なければ1日動けず潰れてしまう。
「セレナ、そろそろ寝ようか」
「そうね。おやすみリーナ」
「おやすみセレナ」
私が起きた時、既にセレナは部屋に居なかった。
早いな、と思って時計を見ると午前9時。
私が起きるのが遅かっただけらしい。
私は着替えて、お腹がすいたので近くのカフェに向かった。
コーヒーとフレンチトーストを頼み、テラス席に座る。
街がよく見える。
私が休みでも他の人たちは仕事があって、街は今日も働いている。
その光景がすごく美しいものに見えて、私はフレンチトーストを口に運びながら街を見渡していた。
すると向かい側にある洋服屋のショーウインドウに見覚えのある女の子が食いついた。
「...セレナ」
彼女は街で色々見たいと言っていた。
ウインドウショッピングだろうか。
マネキンに飾ってある白のワンピースを眺めているようだ。
白い丸襟が付いていてウエストに青いリボンが巻かれている。
私の位置から見てもとても可愛い。
すると彼女は右を向き、ワンピースを指さす。
手招きをして、まるで誰かを急かしているようだ。
その先に目をやると、これまた見覚えのある姿。
「え...」
私は心臓が止まる思いだった。
全身が冷たく凍るように衝撃が走った。
「なんで...」
なんで坊っちゃまが一緒に、セレナと一緒に居るのだろうか。
それも、彼の手には既に紙袋が下がっている。
2人は仲良さそうに飾ってあるワンピースを見ていた。
顔を見合わせて、何か話しながら笑う。
二人の距離が屋敷にいる時よりもだいぶ近い。
するとセレナはおもむろにカバンを漁り始め、中から手帳とペンを出した。
店の名前をメモしているようだ。
書き終わると2人は道を渡ってこちら側へきた。
-まずい!バレてしまう!
私は近くにある植木に隠れるように少し身をかがめた。
そうとも知らず2人は横を通り過ぎていく。
「やっぱりさっきのワンピース可愛かったよねー!」
「ああ。きっと似合うと思うよ」
「ふふ!思わず候補に入れちゃった」
「買う時は声かけてね。お金は出すから」
「うん、ありがとう」
2人は楽しそうに話していた。
坊っちゃまもいつもより声のトーンが少し高かった気がする。
-何でセレナなの?好きじゃないって言ってたのに。応援するって言ってたのに。どうして...
私は2人が見えなくなったのを見計らって、最後の残りのコーヒーを飲み、カフェを出た。
私が向かったのは2人が見ていた服屋。
中に入り店員に声をかける。
私が店を出る時、外から見えるマネキンは何も着ていなかった。
私はまたさっきのカフェに戻って、今度はミルクティーを頼んだ。
先程と同じ席に座り、持ってきた本を開いた。
-これでいい。あの2人は『候補に入れた』と言っていた。だとするともう1度見に来るはずだ。それを待とう。
私は本を読みながら、時々店の方をうかがった。
だが2人は現れることがないまま日が落ちてきた。
もう夕方だ。そろそろ帰ろう。
私は屋敷に帰った。
「あら、おかえりなさい!今日は何をしたの?」
セレナは私より先に戻っていて、私が部屋に戻ると笑顔で迎えてくれた。
「カフェに行って本を読んだわ。セレナは?色々見たいって言ってたけど、何か良いものでもあった?」
私は彼女と同じように極力笑顔を作る努力をした。
幸い彼女は私から不自然な点は見られなかったようで、至って普通だった。
「うん!いっぱい見たよ!楽しかった!写真立てとか、髪飾りとか、あとね、可愛い服も見つけたの!全部買わなかったんだけどね」
彼女は肩をすくめ、軽く笑う。
すると私の手にある紙袋に気付いたのか、指をさしてきた。
「それ何買った...」
彼女は固まった。
紙袋の文字が見えたのだろう。
何せこの店は彼女がメモしていた店だ。そりゃ驚くだろう。
「服を買ったんだ!見てもらってもいい?」
「えっ!?う、うん」
明らかに動揺している。
-セレナ、隠しきれてないよ
けど驚くのはまだ早い。これからだ。
私は衝立に隠れて着替えた。
マネキンが着ていたものしかなかったとはいえサイズはぴったりだ。
私はスカートを揺らしながら彼女の前に出た。
「どうかな?」
私はくるりと回って見せる。
何て表情をしているのだ、セレナは。
目を見開き、開いた口が塞がらないとはこのことだ。
顎が外れてしまうのではないだろうか、と思うほどだ。
「セレナ、ねえセレナってば!」
彼女はハッと我に返る。
「どう?可愛いでしょ?」
私はモデル気取りでポーズをとる。
「う、うん!すごく可愛いね!似合ってる!そのリボンもいいねー!大きすぎないし、いいポイントだよー!」
頑張って笑顔を作っているのが手に取るようにわかる。
だってセレナの手、震えてるから。
「ごめん、私トイレ行ってくるね!!」
セレナは慌てて部屋を出た。
私は優越感にどっぷり浸ってワンピースを脱ぎ捨てた。
読んでいただきありがとうございます。
次の投稿も遅くなってしまうと思いますが、是非また読んでください。
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まっちゃ亜珠貴




