REWARD
街の雑踏も忙しく行き交うクルマの流れもない 空は静寂の青に満ちて
ただ太陽が世界を照らすのみであった
そこは極少数のプレイヤーとして選定された者だけが存在する現実である 杉山とミサキそして7番によってゲームマスターは倒された
それにより 現実も本来の姿を曝け出していた 杉山たちが退屈を持て余した現実 それは仮初めの姿であり 本来は人類絶滅寸前にまで追い込まれた劣悪な環境である
現実は生存したプレイヤーたちに絶望をもたらし その一切の希望を砕いた
杉山とミサキ 7番の三人は荒廃した街から街へと歩き続けていた 水と食料を確保しながら 繰り返し湧き出る疑問を押し殺して
何人かのプレイヤーは有効的であり 物資と情報の交換を行うことができたが 大半はゲームマスターを破壊し世界を 現実までも破壊した杉山たちを断罪しようと殺意をあらわにした
これを何度も撃退することで生きながらえているのだった
「杉山さん 後悔してますか?」
7番が口を開かなくなってずいぶんとたつ杉山に言う 杉山は黙って次の街へと歩くだけだ
7番を後ろから追い抜いてミサキは言う
「面白くない学校に行かなくていいし 親もいないし ちょっとお風呂には入りたいけど わたしはこれで良かったな」
大きな罪悪感に苦しめられる杉山を気遣って ミサキは明るく振舞っている 何度も危険にさらされ 汚れた服を着ているのに泣き言や不満を漏らさない
いつものように食料を確保しながら旧市街地に辿り着くと 久しぶりにプレイヤーと遭遇する
最初は一人であった 愛想良く正面から近づく 武器は持っていない
これは杉山たちの戦力を見定めるための挨拶である 男一人に女二人 数で優位にたてるのならば獲物と認識される
「どこからきた?」
上品とは呼べない男が杉山に近づき言う 杉山は辺りを警戒せずに男に手を差し出して言う
「何人だ?」
杉山はこのての輩に飽きている すぐに終わらせるつもりなのだ 男は警戒しながらも杉山に行為的に手を重ねた
当然とばかりに杉山は男を強く引き寄せ 地面に引き倒した
男が助けを求め思わず伏兵として配置した仲間に目配りする 左右に建ち並ぶ廃ビルそこに伏兵がいる
杉山がアサルトライフルで銃撃を始めると ミサキは7番と物陰に移動し 闇の中から杉山を狙う伏兵を確実に撃ち抜き始めた 無駄のない動作で人の体を撃ち抜くこと それを平気でやれてしまう
杉山によって転倒させられた男は いつもとは違う光景に目を伏せている 身包みを剥がして必要なら女を奪う単純な作業のはずであった
それがあっさりと破られると 熱を帯びた銃口が向けられてしまう 杉山は男に容赦するつもりはない
「やめてくれ 殺すつもりは最初からなかったんだ」
男は頭を地面に擦り付け 謝罪と言い訳を始めた しかし様子がおかしい 杉山が男から離れるとほぼ同時に爆発が起こり 噴煙が杉山を隠した
ミサキと7番が杉山に駆け寄ろうと動いたとこを銃弾が襲った
とっさにミサキが7番をかばう 銃弾を受けて倒れるミサキ それを7番が物陰まで引きずり始める
「バカ!!撃たれる!!早く逃げろ!!」
ミサキが言うも7番はミサキを放置することをしない
下位ランクを利用した二段構えの奇襲だ 複数の方向から銃弾が飛び交う 肩と足を撃たれミサキは身動きがとれない
位置を探ろうにも噴煙が邪魔をしている それでも正確な射撃を行う敵は上位のプレイヤーだと推し量ることができた
噴煙が収まるとそこには力なく膝を着いた杉山が見えた ゴーレムと重装騎兵が召喚されている
爆発のダメージは杉山に微かに残っていたスキルが軽減してくれている 耳と口から血が溢れているもまだ生きている
杉山の生存が現になると狙撃対象は7番とミサキから外れ 杉山を襲う 石のゴーレムは動かず杉山の盾となり 重装騎兵は敵を求めて馬を駆る
銃弾をものともせずに直進するも突然の爆発が起こり動きを封じられ そこに手榴弾が次々と投じられた
重装騎兵が地面に転がると 敵が姿を見せた
強化スーツを纏った上位プレイヤーだ ライフルを捨てて拳銃を両手に発現させる
「止まって!!」
7番が警告する それを無視して杉山のゴーレムに銃撃する上位プレイヤー ミサキが7番を見ると7番はやむなくフェニックスを召喚した
砕けるゴーレム 鳴り響く銃声 フェニックスの雄叫びがそれらを打ち消す
「警告はしました!!」
7番が攻撃を命じるとフェニックスが爪で上位プレイヤーを襲う 対処が難しい上からの攻撃
アスファルトの地面を貫く刃のような爪 それが回避されている フェニックスに対して人は脆弱であるがその小ささが優位に働いている
強化スーツがフェニックスの熱を遠ざけてもいるようで 決着まで時間を必要とした
杉山は上位プレイヤーの口元が動いていることにきづく アサルトライフルを向けるもトリガーを引けない 右手が壊れていた
左手でアサルトライフルを握り直し視線を戻すと 杉山の目に二体のフェニックスが映った
互いの立ち位置を確認するようにフェニックスは動かない 7番と上位プレイヤーが攻撃を命じると フェニックスは交錯し振り向きざまに互いの喉元に喰らいついた
上位プレイヤーが残った銃弾をゴーレムに撃ち込み すり抜けるように杉山に迫る 素早く拳銃を捨てると剣を発現させて切っ先を杉山に向けた
アサルトライフルで剣を受ける杉山 立ち上がろうと力を込めるも足にもダメージがある
杉山を上位プレイヤーが蹴り倒すとアサルトライフルが手から離れてしまう
フェニックスは交戦を継続し互いが熱を持って一つの太陽のように輝いている 杉山を援護することは到底できない
またミサキもダメージが深くまともにスナイパーライフルを扱うことができずにいた 7番がミサキを支えるが そこにナイフが投じられて7番の頬を掠める
「邪魔をするんじゃない 杉山を殺ることができればそれでいいんだ 大人しくしていてくれないか?」
上位プレイヤーはあえてナイフを外して警告する それは7番に対する礼儀でもあった クランさえも意味を失った世界でも この上位プレイヤーは誇りを失ってはいないのだ
「こちらのフェニックスは本物じゃない
もう長くはもたないだろう 決着をつけようじゃないか」
杉山に言う上位プレイヤー 杉山が立ち上がるのを待っている しかし強化スーツを纏った相手を倒すだけの武器が杉山にはなかった
シルバーホワイトを失ったことで 強化スーツは絶大の防御力を有する
ミサキが不毛な戦いを止めようと必至に言葉を紡ぐ
「もうゲームは終わったんだよ?
世界がこんな風になったのは杉山さんのせいじゃないんだよ
最初からゲームマスターが偽物の世界でわたしたちを騙していたんだよ ここで争う意味なんてないよね?」
ミサキの言葉は理にかなっている しかしそれを受け入れることをプレイヤーはできない
「わかっているよ こんなことに意味がないことくらい理解している
しかしそれでもこの世界で戦うことをやめたら何もない 特別に恨みがあるわけでもない
だが どうせなら最高ランクのプレイヤーと戦って終わりにしたいのさ」
上位プレイヤーが言い終えると 杉山が口を開く
「そうだよな ただ生きるってだけじゃ退屈なんだ
意味もなく命を浪費するだけじゃダメだ そんなのは本当の意味で生きているとは言わない」
まるで友達であるように二人の気持ちが重なっている ミサキも7番も立ち入ることのできない空間だ
やがて上位プレイヤーのフェニックスが7番のフェニックスに敗れ 地上に叩きつけられた
それが合図となり二人が動いた
瞬時に加速する上位プレイヤーが杉山に剣を振り下ろす 杉山はかわそうとせずに前へと踏み出し動いた
上位プレイヤーの体が金属音と共に粒子となって消滅する 彼の剣は杉山によって砕かれ切っ先が地面に刺さる
「木葉さんの剣!?」
ミサキが言った 杉山の左手に木葉が使用していた剣が握られていた 使用した杉山自身も驚いている
「今になって使えるようになるとは思わなかったが 試してみるものだな・・・」
杉山は言いながら剣を見つめていた
ゲームマスター側の武器であり それは何度も使用されることを拒んでいた 意思がそこに介在するのだろうか プレイヤーである杉山に使われることを許さなかった
それがここにきて杉山に使われることを許したのだ それに何らかの意図を感じるも杉山にとっては貴重な武器であることに変わりはなかった
「これからどうしますか?」
7番が杉山に尋ねる そうだ これからどうするのか?
単純に生存することだけを共通の目的として旅を続けるミサキと7番にとっては重要な問題だ
「さがそう」
杉山が呟くように答える
「さがすって何を?」
ミサキが言った
「何かをさがすんだ まだわからないけど きっと何かみつかるはずだ」
杉山が曖昧な答えではぐらかしているのだとミサキは勘違いしてしまう つまらない口論が始まると7番は久しぶりに笑うことができた
治療を終えると 杉山がミサキを背負い 7番がそれに続いた
空は相変わらずの静寂に満ち 世界は荒廃していた しかしまだ三人は生きている




