CASTLE
砂浜のに置かれたドアを開くと幻想的な城が見えた
大軍をもってしても破れないであろう石造りの城で高さも十分にあり また城門は竜が彫られた鋼鉄の扉
ゴーレムよりも大きな扉 人が押し通るのは不可能であった
杉山が扉に触れると仕掛けが作動して扉が左右に開いた ファーストが久しぶりの来訪者を歓迎しているのだ
侵入者を迎え討つには十分な広さをもった中庭に整列する重装兵 長槍と盾を持ってファーストの命令を待つ
立派な軍隊まで準備し堅牢な城までも作り出したファースト ウィザードの追撃に備えるだけではなく レギオンの単独制覇も視野に入れた入念な準備がなされていた
重装兵が杉山に背を向けて膝を着く 主であるファーストが姿を見せたのだ
「ようこそ勇敢な挑戦者 満身創痍とはいえよくぞ参られた!!」
真赤な衣装に身を包んだファーストは演技染みた立ち振る舞いで杉山に近づく
大軍に囲まれてでも銃撃すべきか 一度距離を置いて狙撃すべきか 杉山は判断ができない
余裕と威厳をもってファーストは杉山の眼前に迫った
「前置きはいい 始めないのか?」
杉山は強がって言ったが重装兵の強さは身をもって体験している ファーストが本気になれば直接手を下す必要もないことは理解している
「勇猛さは時に蛮行と同意である しかし おまえの若さがわたしは嫌いではない」
必中の距離であったが杉山は動けない 意識とは別に体が絶大的な力の差でそれを拒んでいるのだ
「始めるとしよう」
ファーストは杉山が動きやすいようにあえて言葉にした
杉山が瞬時にアサルトライフルを発現させるもファーストは眼前から消えていた
「女でもわたしは強いぞ」
背後から囁かれる杉山 冷たい感触が背中を貫く前に動いた
前に転がることでファーストの手にあるナイフから逃れ銃弾を放つ 崩れた態勢からの反撃だ正確な射撃はできない
全弾を撃ち続ける
強い反動を両腕で抑え込んで照準をファーストに向け続けた
「少し前のわたしになら通用しただろう
しかし わたしもここで遊んでいたわけではない」
銃弾は全てファーストに届くことなく消滅し わずかなダメージも与えてはいない
攻撃は無駄であった
ファーストの手から血で彩られたナイフが放たれる
動きは俊敏で杉山の右肩深くに突き刺さった
「もっと力をわたしに見せてくれないか?」
アサルトライフルを落としロケット砲を左手に出した
「これならどうだ!!」
個人が携行できる中でも最高ランクの火力をもったロケット砲だ アサルトライフルの銃弾とは違い爆発による攻撃
爆風が辺りを包むもファーストは健在であった
想定内の攻撃であったのだろうか 表情からは余裕を失ってはいない
「その程度の射撃スキルは見飽きているんだよ 2番が見込んだおまえだ何かあるんだろう?」
杉山にもっと楽しませろとあえて攻撃を要求するファースト
立ち上がった杉山の逃走を阻むように重装兵が隊列を変える
攻撃の手段を封じられた杉山になす術はない
ファーストは満足し右手を天にかざした
光が集まり眩い輝きを放つ やがてそれは球体となって杉山へと放たれた
回避すらできずにロケット弾以上の爆発が起こった 粉塵が舞いあがると肉片と化した杉山があるはずだった
しかしそうではない
「まさかこんな使い道があったなんてな」
杉山は自身がとっさに発現させたスキルに驚いた
杉山の左右に異形の豚がいる そう向こうで倒したアンテナ豚である
彼らの尾にあるアンテナがファーストの魔法を遮断したのだった
「ゴーレム」
杉山が言うと眼前に岩のゴーレムが姿を現す
ファーストは杉山の想定外の力に焦り 配置した重装兵に突撃命令を与えた
ゴーレムがファーストへと襲いかかる ファーストは雷を両手にまとってそれを放った 岩のゴーレムに亀裂が入り腕が落ち 足が砕けて砂へと変えられた
ファーストの側面 完全に意識の外に重装騎兵がいた 馬による勢いの乗った剣戟がファーストを捉えた
銃弾とロケット砲に耐える対遠距離攻撃スキル ファーストはそれを獲得していたが近接攻撃には生身である
持ち前のスピードも反応が遅れ活かすことはできなかった
それでもファーストは歴戦のプレイヤーである 避けることを諦めて炎で重装騎兵を迎え討った
それでも重装騎兵の剣がファーストの片腕を飛ばした
高比良との戦闘で獲得した重装騎兵が役にたった
久しぶりの痛みを味わうファーストにロケット弾が襲った
杉山の攻撃はやはりファーストには届いていない それでも十分だった 杉山の接近を隠す煙幕の役割を果たしたのだ
接近する杉山に向き直るも遅く ファーストの胸にナイフが深く刺さる
「あんたに恨みはないけど 死んでもらう」
杉山がファーストの耳元で呟いた別れの言葉
寸前にまで迫った重装兵たちが活動を停止すると ファーストは杉山から離れて崩れるように地面に横たわった
皮肉なことにファーストは自らの投げたナイフにより絶命した




