WARSHIP
通路を行く杉山と8番 先行するのは杉山である
巨体のゴーレムが前に立つと先が見えずに対処が遅れるという杉山の判断でゴーレムは後ろを守っている
「どれくらいの規模の風穴だったんだ?」
杉山が言うと 8番は元から大きな風穴であったと言う
それをファーストは闇のダンジョンへと作り変えたのだ
一本道だった通路は二つに別れ そこから幾つものドアと階段で杉山たちを迷わせた
前後からのトカゲの奇襲と 床の抜けた落とし穴に侵入者に反応して放たれる矢
傷を追うことは辛うじてなかったが それらは確実に杉山たちを疲弊させている
「杉山さん 帰り道を憶えていますか?」
8番が確認する
「ちょうど同じことを言おうと思っていたとこだよ」
どうやら杉山も帰り道を見失っているようだ
階段を下ると 方向感覚を失わせる似たような通路の連続 閉じ込められてしまったのではないかと感じるほどに巧妙な作りである
一度戻って増援をとも8番は考えたが 狭い場所では数の利はむしろ脆さに直結すると杉山に諭される
「遠くに光が見える」
杉山が警戒しながら言う きっと罠だとわかってはいるものの他に通れそうな道を憶えていない
「わたしが先に行きます」
8番は恐怖を押し殺して杉山の前へと出た
ゆっくりではあるが確実に光へと向かう8番
杉山もすぐ後ろについている
「ドアがあります」
8番がドアに手をかける
漏れ出ていた光が杉山たちを包む 8番に続いてドアの先へと足を踏み込む杉山
石でできた通路とは違う柔らかな感触が足元から伝わる
「海ですよね・・・?」
8番が辺りを見回して杉山に確認する
幻覚なのかどうなのか判断がつかない 少なくとも明るさに慣れた杉山の視界には広大な海と一面の砂浜があった
「あるわけないよな地下に海だぞ」
杉山はいいながら通った道を振り返る
そこには何もない ドアも通路もなく砂に足を取られるゴーレムがいるだけだ
波の音がリアルに響き高い位置に太陽も顔を見せていた
周囲に敵の姿もない けれどこれが現実であるはずはないのだ
「ファーストは天地創造の力を持っているのか?」
杉山が言う
8番は幻想的な光景に緊張感を失っていた
波打ち際へと向かうとそれに触れてしまう 休日を満喫するかのように自然に振る舞う
「ここは戦場だぞ」
杉山が言うも8番の様子はおかしい
靴を脱いで膝まで海に浸かる8番 海風が彼女の髪を散らす
緊張から解かれた8番は一人の女の顔をしていた
それも長くは続かなかった
海の彼方から帆を張った船が現れた それも大きい軍艦である 大砲を何重にも並べた巨大な木造船だ
掲げられた旗が何を意味しているのかは理解できないが
二人に向けて放たれた砲弾が砂塵を巻き上げる
「ゴーレムを盾にします!!」
臨戦態勢に戻った8番がゴーレムを動かして杉山の盾にする
そして自身も急いでゴーレムの影へと走った
「戦車砲にも耐えれる金属のゴーレムです
旧世紀の大砲くらいでは壊れません」
8番のゴーレムは至近弾の風圧から二人を守り 持ち前の頑強な体で直撃を受けても揺るがない
命中した大砲の弾が砕けるだけでゴーレムにはヒビ一つ入らない
かといって反撃できるほどの距離に敵はいない
軍艦が大砲を撃ち尽くすまで動くことはできないのだ
やがて大砲の攻撃が止み軍艦が風を受けて速力を上げ向かってきた 有効射程距離へと入ると杉山はロケット砲を構えた
いきなりの実戦投入である 命中させるのは困難な代物だったが標的が大きいことが幸いした
杉山の放ったロケット弾は緩やかな弧を描いて船首に命中して爆発した 木造船には有効打となるも大きな船体は勢いに任せて直進する
第二射の準備にかかる杉山
軍艦は砂浜に乗り上げて止まるが甲板に動くものがあった
それらが杉山たちを視認すると 奇声が辺りに響いた
「アンデット」
8番が呟いた そして噂を思い出した
かつてウィザードの初期メンバーに死霊使いがいたことを
「ゴーレムを前に出してくれ 抜けてきた奴を迎撃する」
杉山が軍艦から飛び降りるアンデットの群れに対処すべく的確な指示を出した
砂浜に飛び降りるアンデットたちは無様で着地さえできていない
だがそれでも殺戮の本能は確かなもので 腐った肉をまとっていても動きは鈍いわけではなかった
手に持った曲剣やラッパ銃でゴーレムに襲いかかる 内半数がゴーレムに潰され砕かれるが やはり狙いは新鮮な肉であり杉山と8番に迫る
「時代遅れの弾が当たるかよ」
乱雑に放たれた銃弾を意に介さず杉山がロケット弾を撃ち込んだ
肉片と変わるアンデットたち 船からはアリの大群のように絶え間無く上陸してくる
うつ伏せになり杉山がアサルトライフルを構える
単発で確実に標的を撃ち抜く 胸そして頭部を狙うも勢いは止まらない
距離を詰めたアンデットが放つラッパ銃はいたずらに放たれるも その数からしだいに驚異となりつつあった
杉山の銃撃だけが頼りであった




