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BONUS STAGE

ゲームセンターの隣にある公園

夏にもなれば花火やバーベキューで賑わう場所だが桜の花びらの散った夜の公園にはその魅力はなかった

まばらに消えている照明が薄気味悪く おそらく誰も利用しないであろう公衆トイレは物置よりも存在感がなかった

そんな公園のブランコに彼と女が座っている

さながらカップルのように見えた

こうなったのは女がギャラリーからの賞賛に耐えかねて恥ずかしさのあまりに店を飛び出したのが原因だった

一応ゲーム内とはいえ助けてくれた恩人を無視することはできずに咄嗟に手を取り彼も道ずれとなった

もう一時間はそうして話をしている

最初はゲームの攻略法やら基本や戦術 そしてプレイヤーの傾向だったりゲーマーの共通会話であったが 次第に話すネタが詰まり彼は疑問をぶつけてしまう

「誰かと待ち合わせでもしていたの?」

遠回しに彼氏がいるのかと探りをいれてしまうほどに ゲームの話に聴き入った女が彼には透明で 殺伐としているゲームセンターでの日常を変えてくれるのではないかと思えたのだろう

それは女も同じでゲームセンターという異質な空間で生きる彼が 特別な種類の存在に見え また突然のピンチから救ってくれたヒーローに見えていた

「彼氏はいません」

少し恥ずかしそうにではあるがきっぱりと女は答えた

彼の遠回しな質問は簡単に見透かされていたのだった

淡い気持ちが素直に彼の中に生まれたが それはきっと届かないだろうと一瞬にして彼は気持ちの延焼を自分で消し去った

俯く彼に女は言う

「アドレス交換しよう?」

普通なら男の方から言うべきであったが まるで気が利かない それもその筈で彼は彼女ができても長続きしないタイプで これといった趣味もない男であった

唯一の取り柄といえばゲームと役に立たない特技が一つだけだ

「ごめんケータイは持ってないんだ」

彼はそういうと立ち上がった

これでお別れというのも少し寂しい それでも女への期待が自身の中で膨らむのが怖かったのか無言で立ち去ろうと歩き出す

「わたし木葉 楓 こっちにはしばらくいるからまた一緒に戦おう!!」

割と大きな声が彼の背中を捕らえた

「杉山 良一 もし良かったら・・・」

自己紹介のついでに彼は突然ではあるがとんでもないことを口走った


「うーん せっかく付き合ってあげたのにこれはちょっと酷いですな」

箸を止めた木葉が言った

公園から移動した杉山と木葉は近場のラーメン屋にいる

店主は地元テレビ局の取材を受けたことがあり それを誇らしげに写真と色紙で前面にアピールしていたが

味はとても褒められたものではなかった

彼 杉山は付き合って欲しいと木葉に言ったのだが 木葉にはどうやら言葉の意味が上手く伝わらなかったようで

単純に行動を共にしている もちろん杉山は持ち合わせが少なく気も利かない男だ

通い慣れた安くて値段相応の店しか知らないのでこの反応は当然である

ほぼ無言でラーメンを口に運ぶ杉山と ご当地グルメであるタイピーエンを口に運ぶ木葉

普通に食事を済ませてそれでお終い

きっとこの物語はここで終わるのだと 葬式さながらの趣でラーメンは一段と不味く杉山には感じられた

誰も見ていないテレビがうるさく耳につく

いやカウンターに肘をついてタバコをふかす店主はテレビを眺めているようだ

そこへ外人の一団が入店する

「黒船来襲 カイコクシテクダサーイ」

それを言ったのは木葉だ 予想しない角度からの一撃は杉山に致命の一撃を放ち ラーメンと大切に残しておいた最後のチャーシューを口から戻すには十分な威力であった

「ごめん!!」

そう言いながらも笑いを止めることができない木葉

杉山も少し前に流行った某掲示板のネタに苦しみながらも表情は明るい

不味いタイピーエンをもうすぐ木葉が食べ終えようかという頃 外人の一団に料理が運ばれた

彼らは出された料理を一口すると無言で席を立ち退店する

慌てて店主が追いかけて外人を呼び止める

もちろん日本語は彼らには通用しないし はなから彼ら外国人は不味い物に対価を支払うつもりはないのだろう

それを見かねた木葉が追いかけて店主と外国人の間に入り丁寧に通訳を始めた

もちろん事態は収束には向かわず互いの文化的味覚的対立を浮き彫りにしてしまう

杉山は二人分の料金をテーブルに置いて 外交官ばりの活躍をする木葉の手を引いてその場から離れた

「内政干渉はよくないと思うんだ」

冷たく感じたのか木葉は手を引かれながらもムッとした様子である

外国人の一団が切れて手をあげれば木葉が巻き添えを受けるかもしれない

そう判断した杉山の優しさからの行動だった

早足で引っ張られながらも木葉は不味いタイピーエンを食わせた店主を気にしていた






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