DUEL
ミサキとユウタが戻らないまま杉山とリーダーは行動に移った
リーダーは島田の仕事先に向かい 杉山は入れ違いを考えてゲームセンターにて待機することになった
いつもとさほど変わらない時間が流れ まもなく夕時という頃にリーダーからの着信
「島田と合流した Tがどういった接触をしてくるかわからないから
味方の多いそっちに向かうよ」
落ち着いたリーダーの声にも緊張があった
杉山は来店する客を逃さぬように終始目で追っている
それらしい人物はまだ姿を見せない
けれども思いもよらぬ人物が来店していた
木葉である
もちろん彼氏を連れているのだがこのタイミングでの接触はタイミングが悪い
杉山は隅に移動してきづかれないようにと顔を逸らしている
木葉と彼氏は杉山にきづいていない 時代遅れのゲームセンターを楽しそうに見て回っている
視界の端に映るその光景が杉山には辛いものであった
「久しぶりだね 256」
不意に声が杉山にかけられた 先ほどまで誰もいなかったはずの場所に高比良が現れた
「驚いたかい?周回遅れのきみには理解できないだろうけど
これくらい普通なんだよ」
杉山の意識が一瞬それたとはいえ 確かに高比良はいなかったのだが 瞬時に杉山の目の前に立っている
「暇なんだ勝負しないか?
もちろんあっち側の勝負になるけどさ」
高比良は座っている杉山に鼻でゲームを指し示した
「おれたちの仲間をやっておいてよくここに来れたな?」
杉山が立ち上がって高比良との距離を詰める
どちらの攻撃も届く距離だ
高比良は下がりもせずに余裕を見せる
「現実で暴れるのはなにかと面倒だろう?」
辺りを一瞥する高比良の言葉には重みがあった
木葉がこのゲームセンターにいて それが杉山の弱点であることを知っているかのようにも見える
「わかった ゲーム内でおまえを殺す」
杉山は握り込んだ拳を緩めてゲーム台に腰を降ろす
高比良もそれに続いて向かい側に座った
「手加減しないからな」
嫌味な薄ら笑いと上からの発言で普通なら乱闘ものだが杉山は高比良の隙を突くつもりだった
ゲームが起動し互いのキャラクターを選択する 杉山の選んだキャラクターは平均的なもので長所も短所もない
しいて言うならば若干小さく被弾しにくいくらいだ 対して高比良の選択したキャラクターはスピードに秀でたキャラクターである
杉山の選択したキャラクターから高比良は勝利を確信した
ステージ選択へと画面が移行すると杉山は地下シェルターを選択 1P側の杉山に乱入した形となった高比良にはステージ選択の権利はなかった
互いのキャラクターが戦闘開始の合図を受けると二人の意識は向こう側へと飛んだ
杉山も高比良もこれにはすでに慣れており当たり前にゲームを行うように動いた
ほぼ均等に配置された武器 高比良が先に武器を手にした
杉山に向けて断続的な銃弾が放たれる キャラクターの小ささからそれは命中しない
もちろん高比良もこれで勝負を決めれるとは考えていない
ステージの上層部にあるガトリングガンを取りに行くために牽制をかけたにすぎなかった
杉山もステージ選択の際にガトリングガンの存在を知っていた だがそれを取って勝負を決めるつもりはなかった
セオリーである武器の確保は理解している
それでも杉山は被弾しないことに重きを置いた
高比良がエレベーターを起動させようと画面隅に停止した瞬間 杉山は近い位置にある非力であるボウガンを放った
命中してもプレイヤーの体力をさほど削れない 弱武器とされているボウガンだ
エレベーターの起動を優先させる高比良は回避せずにダメージと引き換えにエレベーターに迅速に乗り込むことを選んだ
初期の階層にあるのはせいぜいRPGであり爆発系の武器だ
これはガトリングガンの弾幕の前には意味をなさない
かといって火力においてガトリングガンに勝るものはない
スピードや位置的に高比良を終えない杉山は動くことをせずにボウガンを構えている
余裕でガトリングガンを手に入れた高比良はエレベーターで下層に戻ると異変にきづく
杉山のキャラクターがいないのだ
撃ち切ることも難しい装弾数を有したガトリングガンを周囲に斉射し 高比良は目視できない杉山を探す
ここで杉山が高比良を攻撃すれば位置がバレる 当然杉山は攻撃をしない
高比良は圧倒的優位な武器で恐れることなく隅から隅へと移動しながら攻撃を継続する
激しい弾幕が虚しくステージに穴を開けて行くが杉山のキャラクターの発見には至らない
やがて戦闘時間が秒読みされた頃に高比良は杉山の位置を掴んだ
そこは背景オブジェクトに重なった場所であり本来行けないはずの場所であった
ゲーム内のバグを利用できるキャラクターで 最初に警戒されない弱い一撃を入れた杉山
あとはじっと時間切れまでそこにいればいいのだ
怒り狂った高比良が杉山のキャラクターを覆う背景オブジェクトに近距離射撃を行うも破壊できない
また装弾数が多く消化できずに投擲武器に変えて隙間に投げ込むということもできない
汚いやり方ではあったが完璧に杉山の作戦勝ちであった
やがて時間切れとなり残り体力の多い杉山の勝利が確定した
二人の意識が現実に戻ると 高比良の背中に不自然な膨らみがあった
ボウガンの矢が刺さっている 怒りに震える高比良であったが負けた事実を噛み締めているのか 杉山に襲いかかるような暴挙には出なかった
高比良が顔を歪め言う
「えげつないことするんだな?」
弱った獲物を前に余裕を見せる肉食動物のような足並みで杉山が高比良に歩み寄り 生殺与奪権を有して一言振り下ろす
「おまえが何者なのか全部喋ってもらうぞ」
高比良は無傷であれば現実でも杉山に勝る
しかし背中に負った一撃はゲーム内での時間切れで現実に持ち越されてしまい 自身を死地へと追いやる痛恨の一撃となった




