RANKING
杉山はリーダーからの呼び出しでゲームセンターに向かった
当然というようにミサキもそれに同行してしまう
「なんだろ こうしてると不思議な気分だよ
わたし杉山さんを向こうで刺したのに
今は隣を歩いてるんだよ?」
失恋に沈む杉山とは対象的にミサキは明るい
「あっちでは一緒に生活を共にしてただろ?」
杉山が言うとミサキは詳しく解説を始める
「そうじゃないんだな あっちでは生き残るために必然的にああなったわけでしょ?
今はそれとは違うってことなんだけど」
先を歩いていた杉山の足が止まった
「今も変わらないだろ レギオンがきっと現実に押し寄せてくる
どんな奴でどんな規模なのかわからないけど おれたちはそれに備えなきゃならないんだ」
杉山は自身に言い聞かせるかのように言うと ただゲームセンターへと向かった
ミサキはレギオンという危機がやって来るとしても 今を大きく変えるつもりはなかった
死ぬ時は死ぬのだからとさめているのだ
ゲームセンターに着くとリーダーが杉山を暖かく迎えた
なんでも歴代の対戦ランキングが塗り替えられているというのだ
そのゲームは古い物で 杉山が中学の頃からゲームセンターに設置されているゲームだ
内容は実にシンプルなもので 閉所で1対1の対戦を行うというものだ
格闘要素はほとんどなく 閉所ではあるが身を隠せる場所や設置されたギミックや武器などを利用するのがメインとなる
もちろん経験者となればイレギュラーなステージの揺れや崩壊まで把握していて 武器の設置場所はもちろん相手の武器のアンチまで対策する
よってこのゲームのランキングはずっと不動のままであった
それが先日塗り替えられているというのだ
店員がデータをリセットするということは何度かあったが 新しいランカーが到来するというのは初めてのことであった
「名前はTで登録されてる 連続対戦記録の3位にあるんだけど
誰もその様子を見てないんだ」
杉山がリーダーから詳細を聞き終えるとゲームランキングを起動させて確認する
短時間で複数のプレイヤーを倒しているのがわかる
それも閉店時間の直前にだ
こんな芸当はできるはずがない 組織的なやらせか過去最大のプレイヤーのどちらかであることがわかる
「今日もくるかもしれない とりあえずランキング1位の島田は夜にはこれるらしい
ただ2位の涼原君の連絡がつかなくてね このTを迎え撃つ体勢は盤石とは言えないんだ」
リーダーはレギオンに備えるということを広く捉えている
ゲームでの生殺与奪の可能性も視野に入れて ゲームの腕前も磨いているのだ
このTがリーダーだけでなく今は平和なメンバーにいい刺激となると考えているようだった
「じゃあTが姿を見せたらとりあえず杉山さんが挑戦すればいいのかな?」
ミサキが杉山を指名するが残念ながら杉山はこのゲームにめっぽう弱い
アクションのセンスよりも単純な覚えゲーでありある程度の流れがあるからだ
同様にパズルゲームも杉山は不得意であった
「うっわ 杉山さんはあれか・・・
ミリオタなんだ?」
ロボットや戦闘機といった乗り物系に強い杉山に謎の冷たい眼差しが向けられる
「ランカーではないけれど Tを引き止めることはできるさ」
リーダーはそういうと杉山に笑って見せた
近くの不味いラーメン屋にて三人は昼食を済ませ 小一時間ほどのミサキのどうでもいい学校の話を聞かされてゲームセンターに戻る
見知った連中が杉山とリーダーを囲んでレギオンの話を始める
そして各々の得意とするゲームをプレイする
いつも通り繰り返される流れであった
ミサキは退屈からケータイを開いた 珍しい相手からのメールが届いていた
大量のユウタからのメールに一件 涼原からのメールだ
件名はなく ただ本文に「殺される助けて」とあった
メールの受信時間をチェックして 送信されてそう時間が経過していないことがわかる
ミサキはすぐにメールを返信する
今どこで何が起きているのか 肝心な情報を要求するとケータイを畳んでリーダーと杉山を捕まえる
「大変なことが起きてるみたいだよ!!」
ミサキの切迫した表情から悠長にゲームをしている余裕がないことが伝わる
涼原の番号に杉山がケータイを発信する
しばらくの呼び出しのあとに 聞きなれない相手の声が聞こえる
「誰だ?」
杉山の質問に電話の相手は応えた
「やあ 久しぶりだね 不適合者のキミを探していたらどうやら人違いだったようだ
涼原君かな?
彼はついさっき対戦に負けてミンチになったよ」
杉山にはこの電話の主が誰であるかわかった
一度だけ顔を合わせた相手 ゲームマスターから高比良と呼ばれた男である
「レギオンがきてくれるまで退屈なんだ
遊んでくれよ杉山君
とりあえず次はランキング1位と対戦するつもりだから覚悟しといてくれよ」
高比良はそれを杉山に告げると通話を終了した
何時も杉山が電話をかけるも繋がらない
「ゲームを確認しよう」
杉山が言うと二人も動いた
ランキングを表示させ画面を手慣れた操作でスクロールさせるリーダー
そこには塗り替えられたランキングが表示されていた
涼原もまた高比良ことTもゲームセンターに来てはいない
なのにランキングは変わっている
ミサキはその間にユウタに電話で涼原の家を聞き出す
ユウタが案内することを約束した
リーダーのクルマで三人はまず ユウタを拾いに行く事となった
「何が起きているのかわからない しかし今は涼原君の安否を確認することが先だ」
ハンドルを握るリーダーの顔には隠しきれない緊張があった
また悪夢が始まるのだと全員が理解していた




