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漫画の棚と敷き詰められたPC 照明も暗くジャズが緩やかな空間を作っている

ネットカフェに走り込んだ杉山とミサキ 未成年であるミサキを察してタキがカウンターで対応した

「まだ店内にいるよ」

タキはそういうと伝票を二人に渡して業務を続ける

「直接話しかけるチャンスはきっとあるはずだよ」

ミサキが用意された席へと杉山を誘導する

大きくなる期待と不安に杉山は押し黙っている

二人が席についてしばらく経つと始発の時間となり 退店する人の動きが見え始めた

「今のところそれらしき人は動いてない」

すぐ隣の席で戦艦や近代兵器を検索している杉山 ミサキは本人よりも本格的に張り込みを継続している

「大丈夫 もう眠くないんだ」

杉山は言うとミサキに飲み物を取りに行くと告げて席を離れた

若い世代よりもPCにも触らない世代の利用が多いことに杉山は驚いていた もうしわけ程度に席に積んである漫画を枕にして眠る大人たち

本来なら自分もそういった苦労をすべきかもしれないと 将来を考えていない杉山は珍しい光景に目を奪われていた

簡易的な席であるオープンブースを抜けて 個室のリクライニングブースにさしかかった時だった よそ見をしている杉山に衝撃があった

小さな悲鳴に驚いて視線を向けるとそこには見知った顔がある

「ごめんなさい 大丈夫ですか?」

木葉 楓 間違いなく同一人物である 手に持ったグラスからオレンジジュースがこぼれている

衝突の衝撃でいくらかが床にこぼれ 大半は杉山のシャツを濡らしていた

「大丈夫です 気にしないで」

慌ててハンカチを出した木葉 杉山であることは十分認識できるはずだがまるで他人である

杉山はハンカチを遮って 事態に感ずいたミサキを目で制した

互いに他人行儀に別れ 杉山は飲み物を取ると席に戻った

「本人だったよね?」

完全に諦めた杉山にミサキが言う

杉山は頷いて飲み物を口にした それは眠気をさますコーヒーなどではなくまたもアルコールであったがミサキはそれを止めることはしなかった

やがて昼になろうかという頃にタキが杉山を起こした

ミサキは有り余った時間を少女漫画を読み続けることで消化していたらしく 疲れが顔に出ていた

フリータイムがようやく終わり 杉山とミサキがカウンターで支払いを始める

そこに見知らぬ男から声がかかった

「さっきは連れが失礼いたしました」

スーツ姿の男だ 杉山には心当たりのない人物である

けれども察することは容易であった

「気にしないでください よそ見していた自分が悪いんです」

アルコール臭い杉山が丁寧に喋っているのがミサキには滑稽に見えて仕方がない

「彼女さんは大丈夫でしたか?」

ミサキがさりげなく探りを入れる

男はそれに笑顔で答えた

「うちのは大丈夫です」

まるで熟年夫婦のような相互理解を見せつけられ

杉山に入る余地が微塵もないことを示した

ミサキはどうしても最後の希望さえも砕いておきたかったのだ

去り際に差し出された男の名刺には立派な肩書きがあった

「名刺なんてもらったの始めてかも」

人の流れに沿って繁華街を帰る杉山は ミサキが受け取った名刺に一切の興味を示さなかった


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