表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/61

BAR

杉山の向かった先は小さなバーであった

地下に降りる階段で杉山が転倒するアクシデントはあったが

今は落ち着いている杉山を見てミサキはある程度の安心を得た

そしてよりによって未成年を連れてきてしまった杉山は眠っている

他に客がいないということもあり ある程度の酒と水を飲ませて杉山は床に放置された

マスターをしているのは杉山を向こうで助けた島田である

運悪くドラゴンにやられたそうであったが 久方ぶりに店を訪れた杉山に驚いていた

「もしかして彼は木葉ちゃんにフラれたのかな?」

島田はカウンターに座るミサキに言った

「それより酷いかもしれない」

そう答えるとミサキは出されたケーキをフォークで突き刺す

一連の説明をミサキが島田に終える頃には杉山もカウンターに着いた

「記憶がないってケースは聞いたことがないな」

島田が言った 島田は定期的に杉山をはじめとした集まりに参加してほぼ全員と会話をしている

リーダー派閥であったこともあり面識も広かった

それでも記憶の欠損や一時的な記憶障害などは誰一人起こしてはいなかった

「嘘をいう理由もなさそうだし そんな風でもなかったよ」

ミサキがグラスを煽る杉山に言う

「もし本当に記憶がないとしたら それはそれでいいのかもしれない

木葉がこれからの人生を歩むのにあっちの記憶は邪魔でしかないんだから」

急に大人を取り戻した杉山

あっちで見せていた顔である

ミサキは島田にもう一つケーキを要求する

「寂しいことだけどこれが現実で ゲームのように上手くは行かないってことなんだろうな」

続けて今回の木葉についてのまとめを杉山が言い終えると 場にそぐわない着信音が鳴った

どうやらミサキのケータイが鳴っているようで

カスタムされた光るアンテナもご自慢のレインボーな光を発している

実に迷惑極まりないケータイであるが 学生の間ではこの光るアンテナが大流行しているらしかった

どうやら電話の相手は杉山のよく知ったタキであるようだ

だが ミサキの様子がおかしい

通話を終えるとミサキは半分は残ったケーキを急いで口に入れて叫ぶ

「緊急事態!!」

かろうじて聞き取れる言葉に続いて 詳しい説明がなされた

どうやらタキが木葉を見つけたようで 彼の新しいバイト先のネットカフェにいるらしかった

まだタキは接触してはいないが もう入店からかなり経っているようである

杉山がケータイを見ないので ミサキに連絡をつけたのだ

「行こう!!」

そう言うとミサキが決着のついた杉山の気持ちを無視して店から飛び出す

「まだワンチャン残ってるかもな」

島田が焚きつけるように杉山に告げると 杉山が立ち上がった

「また来るよ」

心なしか杉山の声が明るい

記憶がないとは言え木葉に会えるかもしれないのだ それだけでも本当は嬉しくて仕方がない

繁華街を杉山とミサキが走る

もうすぐ明け方だというのに通りにはまだ人がいる

ギターを掻き鳴らす青年とギャラリー 屋台でたこ焼きを売る強面のオジサン

それらに脇目も振らずにネットカフェに向かう

「ネットカフェって何だ?」

情報に疎い杉山が信号待ちでミサキに問う

息切れしているミサキが呼吸を整えると 呆れたように笑って見せた

まるで無人島の住人のような杉山が面白くて仕方がないのだ

しかしミサキは流行に無頓着な杉山を嫌いではなかった



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ