TRASH
市街地をミサキに連れられて歩く杉山
今風に着こなしたルックスとの対比で杉山が悪い意味で際立っている
「緊張してるの?デートするの久しぶりだもんね」
カラオケやファミレスに連れていかれる一連の流れ ミサキはこれをデートという
もちろん分別のある杉山は手さえ握ろうとはせず
腕を絡めてくるミサキに危険性を感じていた
フリータイムでボックスに入ると ミサキがリモコンで杉山にはよくわからない曲を連続で入力する
狭く薄暗い部屋を爆音とトゲトゲしい映像から出る光が満たす
時折 ちゃんと聴いているのか確認するように杉山の顔を振り返るミサキ
会話はなく 杉山は歌うこともせずにたまにリモコンで拍手を押している
殲滅や皆殺しといった歌詞が流れ 杉山の脳裏に生臭いものが浮かび上がる
飲むことしか考えていない杉山は 次々に酒を注文する
しだいに酒の効果だったのだろうか ミサキの感情の剥き出しの演技染みた横顔を見つめる
「キスしてあげてもいいよ」
熱唱を終えたミサキが言った どうやら本気のようであるが 杉山がそれを拒否するのは最初からわかっている
「冗談だよ」
一言残してミサキはおもむろにケータイを取り出す
どうやら誰かを呼ぶつもりのようだった
「誰かくるのか?」
相変わらず飲み続ける杉山 言いながらもグラスを離さない
「あなたの親友のタキ君を呼んであげたの すっごいノリが悪いんだから特別に電話してあげたの」
タキがきてくれればいくらかは楽になれる
杉山の表情が緩んだ ミサキはそれを見逃さない
「あったまきた!!今度は心臓刺しちゃおうかな?」
冗談に思えない凄みのあるミサキ 向こうでは何人も殺した殺人者だ
もちろん杉山ほど殺してはいないが 中学生でこれだ将来が怖い
しばらくするとタキがやってきた コンビニの袋いっぱいの菓子や炭酸飲料を持ち込んでいる
「ウケるなー タキ君って本当に自分に正直だよね」
タキもマイクを握り どうやら趣味が被るらしく熱唱に熱唱を重ねる
飲み過ぎたのか杉山は静かにソファーに横たわった
天井にキラキラと備え付けの小さなミラーボールが輝いている
ただそれを眺める杉山 手にはグラスはない
二人が熱唱を存分に楽しんだころ
フリータイムが終わりを迎えて タキは相変わらずバイトに忙しく去った
歩けないほどに酒を飲んでしまった杉山を押すようにミサキが店から移動させる
「帰れます?」
カラオケを出たミサキは大人の顔をして 成人男性の杉山をきずかってみせた
「大丈夫だ」
そう言い残して杉山は人混みに消えた どう見ても大丈夫な足取りではない
小さな腕時計をミサキは見る まだ補導される時間ではないことを確認すると杉山を追いかけた
結局 杉山は途中で力尽きてしまい動けなくなった
歩道に座り込んだ杉山を引きずり ファーストフード店に連れ込むミサキ
雲泥の客は困ると断られそうなものだが ミサキの知り合いが働いていたらしく杉山運搬を手伝ってくれる
奥の目立たない席に座らせると ミサキは飲み物買ってくると告げて席を立った
「一人にしないでくれ」
眠っているような顔で杉山がミサキを呼び止める
「こりゃダメだわ・・・」
ミサキが言うとカウンターへと向かう
眠りに落ちる杉山 やはりいい夢は見れていないようである
何度も呼びかけるミサキに右手を動かして大丈夫だとサインを送る
「大人が酔っ払うとほんと面倒」
ミサキがドリンクにストローを乱暴に刺した
結局 杉山は日付が変わるまで目を覚まさなかった




