表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/61

2PLAY

シャッターの下りた商店街

やがて日が暮れようかという頃に手ぶらで歩く青年がいる

ずいぶんとくたびれた格好をしていた

不潔というわけではないが 自分を少しでも良く見せようという意識はないようだ

荷物も持たずに手ぶらである ケータイも持たずに無造作にポケットに突っ込んだ紙幣が僅かにあるだけ

たまに通り過ぎる自転車とすれ違ってもまるで見えていないかのように歩いている

小さなスクランブル交差点を抜けて緩やかな坂を登ると 長い鉄橋が川を跨いでいる

そこを超えると暗い街灯にそって路地へと曲った

学生街の片隅にあるゲームセンター そこが彼の安らげる居場所であった

誰と約束があるわけでもないが彼は同属の集まるこの閉塞的な空気を日々求めていた

プリクラやUFOキャッチャーなど置いてない時代遅れのゲームセンター

休憩用のベンチに彼は座ると店内をゆっくりと見回した

そこは昨日と変わらない そして明日も変わらないであろう若者の顔があった


耳を刺すような大音量のゲームが敷き詰められた店内

メンテナンスも十分とはいえないがゲーマーからすればあるべきゲームがある珍しくも古いゲームセンターである

店の外に学生の自転車が並んだ頃 場違いな客が訪れた

女だった

世界の約半数は女性であるが男連れでもない女が一人でこんな場所に来るのは珍しい

そしてまるで通い慣れた場所のように平然と振る舞い目的のゲームへと進んで行く

狭い店内にひしめいた男達は女に道を開けきれいに退いた

彼は女の振る舞いに見惚れているとこに声がかかった

「やっちまうか?」

そう言ったのはタキである 彼の高校からの友達であり卒業後も変わらず

同じ空気を共有していた

隣に座るタキの手には1.5Lの炭酸飲料が握られている

どうやら今日も閉店までここで過ごすつもりらしかった

そのタキが彼に言ったのは 気に入らない奴や目障りな奴を狩る

素人狩り カップル狩りのことで現実で危害を加えようとするのではなく ゲームでのことだ

様々なゲームがあり形式も多様だが

主に一人で遊ぶゲームと対戦や協力して遊ぶゲームがあり

女が始めたゲームは対戦と協力もできるアクションゲームだった

彼は他人をゲーム内で蹴落とすことに喜びを感じている いつもなら我れ先にと硬貨を投入しているだろう

特に女を連れたカップル狩りが彼とタキのお箱である

もちろんそんなことをすれば二度とこの場所に女が来ることはないだろう

しかし対戦台に女は座り 向こう側の席は空いていた

決めかねる彼を差し置いてタキは立ち上がり ゲーム内で女のキャラクターをゲームオーバーへと突き落とすつもりだった

彼の表情に焦りが見える いや彼だけではない

女はここに似合わない少女趣味の服を着こなせる一輪の迷い込んだ花である

タキの行動は女なんかには興味がないという硬派アピールでもあり またゲームセンターの厳しさを叩き込むというローカルな無言の掟に沿った行動であり

誰も避難はしない だが女の纏った雰囲気は上品であり若干いい匂いがするのかもしれない

そのことから獲物を前にしてひしめく男達は思考を停止させていた

彼の位置からは女のゲーム画面は見えない

だから彼は女の手元を観察していた

左手のレバーは忙しく動き 右手のボタンは小刻みに打たれている

通称グルグルレバーという症状であった

初心者プレイヤーがゲームに複雑なコマンドを要求されると陥る行動である

これはとても滑稽であると同時に珍妙な音を奏でてしまう

失笑を買うことは間違いないが 女である

そしてどうやらCPUの敵にも苦戦しているようだ

時間の問題である いずれは落ちる線香花火だ

ならば自分の手でというある種の義憤に駆られた古参プレイヤーが乱入した

そう一瞬タキよりも速く着席し硬貨を投入したのだ

女のグルグルレバーが止まる どうやら乱入されたのは始めてのようで表情が固まっている

ここで彼の中で正義の心が目覚めた

女のプレイするゲームは四人同時プレイが可能で 味方として隣に座り互いに運命共同体となれるのだ

タキは無難に古参の隣に座り硬貨を投入している

女一人に男が二人がかりで狩ろうというのだ

掟破りもいくらか許されようというものだ

彼は飛び出すようにベンチから動き 女には顔も向けることなく2P側に硬貨を投入した

「え?」

女は状況が理解できずに困惑している

やがてカウントダウンが始まり 男たちの熱い戦いが女を巻き込み開始された





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ