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PAIN

母親を連れて階段を登ると 木葉がベッドに縛られているのがわかった

犯人のユウタは武器を持っていない 慌てて布団を被せて木葉を隠す

「そいつを返してくれないならお前を殺す」

銃口を向けられたユウタは恐怖に顔を歪ませた

辺りにはゲーム機と無数の漫画が散乱している ペットボトルも部屋の隅にいくつかあるがどうやら飲めるものではない

「こいつボトラーだよ」

女の子がペットボトルを拘束した母親に押し付ける

機械が発するモーターのような唸り声がユウタから発せられた 強く唇を噛み締めて呪い殺すように杉山を睨む

加害者の目つきではない 反省もなくまた自身の行いをさも正当であるかのように勘違いしている

「ユウタ君逃げて!!」

女の子がカッターで拘束している母親が言うと ユウタが体当たりをしかけた

ユウタは一切の運動をせずにゲームと食事だけの日々を過ごしたヒキコモリであった

その体重が武器となった 杉山のライフルは口径が大きい トリガーを弾けばユウタを貫通し木葉に当たる

ライフル本体でユウタの顔面を殴りつける杉山

それでもユウタの勢いは止まらず杉山の態勢を崩して階段を駆け降りる

「お前の母親殺すよ?」

女の子が警告するもそれを聞かずにユウタは止まらない

杉山が態勢を整えて発砲する ユウタの逃走先を見越して玄関に銃撃を行った

「あれ?あいつどこ行くんだ?」

玄関から逃げるのが一番良いはずだが ユウタはそこには行かずに偶然ではあったが銃撃をかわすことができた

木葉の拘束を解く杉山 木葉は意識こそあるも動けない

「クスリ飲まされてるよ」

女の子は経験済みであり杉山に今は動かさない方がいいことも付け加えた

「ユウタ君は悪くないのよ その女が誘惑してきたのよ」

母親の言葉を銃弾で遮る

「木葉はそんな奴じゃない」

天井に幾つかの風穴が空いた 女の子が母親を押し倒して腹を蹴った

うめき声が響く その光景を木葉はしっかりと見ている

しばらくするとユウタの唸り声と何かの動物の足音が近づいてきた

「犬か?」

杉山が女の子に問いかけるも首を振る

狭いユウタの部屋から出て杉山が階段の上を陣取る

何がきたとしても位置的優位は確保できた

「趣味の悪い動物を飼ってたんだな」

トリガーを弾きながら杉山が呟いた

銃声に混ざって獣の鳴き声が響く それもすぐに収まるとユウタが怒鳴り始めた

「またぼくが悪いって言いたいのかよ!!

ぼくは悪くないんだ その女がぼくを騙したんだぞ!!

クソ女なんか死ねばいいんだ」

階段下の死角から叫ぶユウタは巧妙であった 杉山を挑発して降りてきたところを鉈で襲うつもりだった

「これ使う?」

女の子が母親を指差して杉山に物として使うか判断を仰ぐ

杉山が頷くと母親は階段から投下された

女の子に蹴られ意識を失っていた母親は 物理法則に沿って転がり落ちた

ユウタには何がきたのか確認する余裕はなく鉈を振り下ろしてしまう

痛みで意識を取り戻す母親 自ら手をくだして惨劇を招いたユウタ

返り血で錯乱しいっそう大きな唸り声をあげる

杉山が鉈を撃ち抜くも微動だにせず 唸り声をあげ続ける

「かーちゃーん・・・かーちゃーん!!」

ユウタの目から溢れた涙が母親の頬に落ちた

もう長くない母親だったが

かすれた声で 大丈夫 大丈夫 と繰り返す

酷い光景だ

先に葬った犬とも猫とも区別がつかない大型の獣を踏み越えて 杉山は母親の頭部を撃ち抜いた

「母親は死んだ 黙らなければお前も殺す」

母親はもはや手当のしようがない傷を負っていた

痛みから解放したのだが こんなにもあっさりと殺せてしまうことに杉山は内心驚いていた

「杉山君 もういいよ!!それ以上はいいよ!!

わたし平気だよ!!」

木葉だった まだ上手く動けないのだろう 這って移動して上から静止を呼びかける

「ついて来い」

銃口をユウタの胸に当てて杉山が命令すると

ようやくユウタの口から発せられた唸り声が止んだ






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