31.結局はどっちも、なんだろう
これで、一章完結かなぁと思っております。
エイム「や、…やっとだ~(泣)(嬉)」
水の空間はなくなり、壊れた家の中に視界は戻った。
白き龍は人型に戻って、力が抜けたように倒れた。俺はそれを受け止めた。
龍の子が龍になりました。
人型の見た目は、幼女から大人びた少女へ。俺と同い年くらいになった。ま、相変わらずふわりとした髪の感触も、笑顔も可愛いくて仕方ないけどな。
「えへへ」
テティスがいつものように照れて笑う。
「はは」俺もつられて笑う。
おでこを寄せ合って、笑ってしまった。あーやばい。幸せすぎる。が、しかし…
そろそろだろうな、と思い出したころ。
「あーあ、やっぱりね」
何がやっぱりか知らないが、いつものように雰囲気をぶち壊す天才のドS野郎が現れた。
「…コルトー、何がやっぱりなんだ」
苦笑して、テティスをソファに座らせる。
「いや、こっちの話。うふふ、主さまの奴に勝ったよ、僕」
コルトーがいつものようにいたずらに笑う。勝った?何の話だ?
つーか、主さまの奴って、敬ってんのか貶してんのか、どっちなんだよ。
「……まあ、いいや。で、どうしたんだ、いきなり現れて」
コイツに付き合って話の一つ一つに悩んで振り回されていたら身が持たない。諦めの境地である。
この頃俺はもう悟りを開けそうです。
と、このタイミングで現れてきたのだからあるだろう用を訪ねる。
「治水しに行こうか」
いきなり現れたコルトーは、釣りしに行こうか的な軽いノリで言ってきた。
「…ん?」
いま、ちすいって聞こえたんだが…。
ちすい…ちすいってアレか?あ、いやそのもしかしてだが血吸いに…!?
一瞬訝しげな表情でコルトーを見てしまったのは完全なる実態だ。
コルトーにさも馬鹿にしたように呆れられた。…いや、馬鹿にしたようにじゃなくて馬鹿にしてるんだろうな。絶対。
「血は吸いに行かないからね、分かってないなら教えてあげてもいいけど、治水。水を治めるで治水だよ」
案の定、やれやれと鼻で笑われた。
つーか、なんでコルトーはいつもこう俺の心の中を読めるんだ?俺がわかりやす過ぎるってのは分かってるんだが…努力しよう。
ポーカーフェイスだ、ポーカーフェイス。
「いや、治水って言葉くらいは知ってるんだが…いきなり言われても」
念のため顔を引き締めて呟いた。
「いや、ね。龍とその恋人には、世界の不良環境たちと闘って統治してきてもらわなきゃならないんだよ」
コルトーが含みのある笑みを浮かべた。
…あー、そっか。
俺は照れながら髪を撫でつける。
「龍とその恋人…ね」
はれてこれで俺とテティスは自他共に認める公式の恋人になったわけか。
にへらと笑いそうになりながら、はっとする。不良と闘う…?それって、人外でしかも、環境てことは、災害級の何か…むしろ災害そのものなんじゃねえか?
「いや、でも俺そんな強くないんだけど?」
照れ顔が引っ込みつかなくなり、照れながら続ける。
「テティスの役に立てるかどうかわからんぞ、むしろ足手まといになるかもしれねぇし」
部屋の床にへたり込んで呆然としていたレムとエイムが突如息を吹き返して叫んだ。
「「どこがだよ!?」」
おぉ、息ぴったり。初対面のクセに仲良いなぁ…。
「ん?何がどこなんだ?」
面白くなって笑顔で訪ねたら溜め息をつかれた。
やれやれと首を振る動作はコルトーも加えて三人でシンクロ。
…すげぇ。ってなんで俺こんなに呆れられてる?今回、俺なにも悪いことしてねぇよな?――あ。もしかして、『役に立てない』あたりにつっこまれたのか?
はっとしてコルトーを見ると、うんと頷いてくれた。
「や、しかし、本当俺は強くないぜ?水とか操れるっつってもテティスみたいに広範囲で嵐起こすなんてできないし、風とかだってコルトーみたいには遣えん」
自信を持って答えたのに更に呆れられた。
レムに至っては「もういいです」とか言って年に見合わない深い溜め息をついて苦笑。全く、なんだってんだ。仕方ないだろ、俺は人間なんだ。龍の親だ、って言ったって龍と同じことができるわけがねーだろが。
どうしろってんだよー!
泣きたくなってきた。救いのテティスは寝息をたててしまっているし。
…てか、エイム。そうだった、やっべぇ。…完全に忘れていた。
「…と、いうわけなんだけど、……契約」
俺は、テティスをチラリと見やってからエイムを見た。
…ごめん。でも、色々あったんだから仕方ないだろ?うん。
「いや、いいぜ。実は、オレもうさっきには決めてたんだ」
精一杯の謝罪くらいはしようと構えていた俺は、あっさりとしたエイムのその切り返しに拍子抜けしてしまった。
「…決めてた?」
「うん。なあ、ヘイロン、契約しようぜ」
炎の妖精は、にかっと笑った。
某日、夜。愉快な仲間が増えました。
ヘイロン「で、エイム、契約ってなんなんだ?」
レム「えっ…知らないで契約したんですか…?」
コルトー「馬鹿だなヘイロン」
ヘイロン「うっせ。いいんだよ、エイムが信用に値したからな」
エイム「お、おぉ感謝するぜヘイロン!契約は、具体的に言えば俺がヘイロンの魔力を燃やしますよ、ってやつだ」
レム「……」
ヘイロン「……すげえな」
レム(それって……魔法?)




