30.白と黒
かわいそうなエイムくんは、放置されたまま話は進んでゆきます☆
・・・失礼。
では、どうぞ。
暗転。
部屋に灯していたランプが消えたのだ。
――――テティスから溢れた圧倒的な力で。俺が触れたところからテティスは変化を迎えたのだった。身体中から放たれた風と、水。嵐のようなその力は一瞬で収まったが、その一瞬で部屋の灯火を消した。同時に何かが崩れる音がした。そして俺は床に尻餅をつく。ほこり臭い空気が風に乗って一瞬舞ってきた。
驚いた様子でレムが部屋から現れた。
そして、その開いた扉から漏れた光が一瞬だけ、真っ暗な部屋を照らした。部屋を埋め尽くしていたのは、白。
輝くばかりの白。
崩れた何かは家だった。テティスが龍になった。
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白は、何にも染まらない。
黒は、すべてを受容する。
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目が鳴れてきたのか、テティスの白い身体がくっきりと見え出した。輝くばかりの白。…いや、違う。輝いていた。
白き龍は、自らの身体の内側から光を溢れさせていた。
呆然とする。目が離せなかった。
神々しさまでも感じる。――いや、神なのだ。
はっとした。今更までに思い出した。近いようで遠い存在。俺は自分でも言っていたじゃないか、『いつまで一緒にいられるのか』と。遠い存在なのだと。まだ、名前をつける前にも、もう解っていた。
ありありと思い出されるコルトーの言葉。
――――別れがこわいんでしょ?
そうだ、そうなのだ。これが、今か…。
「テティス…」
でも、俺は名前をつけた。精一杯の愛をこめて。
白は、何にも染まらない。風は一瞬で通りすぎる。
俺はすべてをうけいれて、コルトーはすべてを愛して。
いや、わかっていなかった。気付かぬうちに忘れようとしていた。
「テティス…?」
俺は、微笑んでいた。俺の“仕事”は、ここまでなのだ。
彼女は、何にも染められない。その運命は彼女自身が握っているのだ。何も与えられることなく。
不思議と落ち着けた。気付けば、あの日のように、俺は水に包まれていた。
柔らかな水。静かに呼吸した。そうか、と納得した。
「汝、此処を欲するか、天を欲するか」
凛とした、それでいて柔らかなこえがした。
視界が輝き、この水の中で、白き龍が全貌を現した。そして、その隣に黒き龍。直感でわかった、あれが、主なのだと。黒き龍は神々しく光を纏って、ある種の重圧を持っていた。
「白は、何にも染まらない。黒は、すべてを受容する」
心地よく、深みのある声がこの空間にどこからともなく発せられて飽和する。
「これは、白き龍、汝が決めることだ」
語りかけるように、諭すように。主が、主である理由が感じられた。
絶対的な安心感。この人ならついて行きたくなる。変わらずそこにいて、すべてを示し、愛し、許してくれる。そんな存在だと思った。
白き龍は、どうするのだろう。“俺にとって”のテティスは。
何を選んでもいい、と思った。白き龍がだした答えなら、それが応えなのだろう、と。
しかし、白き龍は一抹の迷いすら感じられない、よどみのない口調で、清らかな声をだした。
「私は、テティスよ」
白き龍は黒き龍をまっすぐ見据えた。
「どこに、なんて最初から選べない。私は、テティス。ここか、そっちか、なんて愚問だわ」
あー、…俺は泣きそうだ、テティス。
何を選んでもいい、とか言っときながら今めっちゃ安心したわー。俺って…
とか思っていると、水は消えた。
最後に、嬉しそうに笑う主の声がきこえたようなきがした。
どうでしょうか。
これで、ヘイロンがいままでのヘイロン一族と何が違ったのか、テティスの成長がどうすごいのか、というずっとはってきた伏線が一応お分かりいただけたのではないかと思います。
…いや、わかんねーよ?
…ごめんなさい。作者の文章力のなさが原因です。そしてまだまだエイムは放置ing。
主「天界で働くキミと、人界に居つくキミ、どっちがにするー?ユー、天で一緒に働いちゃおうよ!」
テティス「私がどこにいようといいじゃんよー、お堅いこと言わんでさ、主。とりあえず回答は“both”で!」
欧米か!
・・・というお話でした。




