29.火を避けたら水に陥りました
こんにちは。
ただいま絶賛ヘイロン暴走中。危険です。
なんでこうなった・・・
が、それでもいいよーという心の広い方は・
どうぞ。
「いや、ダメだ!」
咄嗟に叫んでいた。
「「なんで!」」
素早いツッコミをしてきた二人。息までばっちりそろっている。当然の反応だ。しかし、それにむしろイラっとしてしまう自分がいる。
なんでだ、自分でも謎だ。
常識に考えても、今までの俺なら、理由を聞かずとも、テティスがいい、と言えば、エイムとの契約を否めることはしない。理性も参ずべきだと言っている。
ただ、なんか嫌。モヤモヤとした感情が心を埋める。
それは、契約の方法を聞いて想像したあたりから溜まりだしたというのもわかっている。
これらのことから察するに、答えは明白なのだが、俺の意固地が阻む故に辿りつけない。そう、本当は分かっているのだ。
意を決して口を開く。
「俺が嫌だからだ」
エイム絶句。テティス唖然。
一瞬の間を置いて、復活してきたテティスが少し批難するような目で俺を見た。
「なんで?」
戻りたくなる心を足蹴にして押し返し、その躊躇を見せないよう、笑顔で自信満々を装って言う。
「嫉妬しちゃうから」
ときが止まる。
「へ?」
しばらくして、ようやく呟いたテティスの顔が爆発的に赤くなる。
追い討ちをかけるように、俺はテティスを真っ直ぐ見つめる。
「俺が、テティスのことが好きだから」
固まるテティス。
…なんか、もういいや。俺の中で何かが砕けた。
“それ”が今まで堪えてきたものだったというのに気付くのは、自分が無意識のうちにとった、次の行動の後である。
自分の右手が滑らかに動き、自然にテティスの右手を引っ張る。
突然の俺のその行動に、まだ呆然としていたテティスが反応できるはずもなく、当然テティスは、俺の胸に倒れ込む。
「ぇ」
柔らかなテティスをその自然な流れで左手は抱きしめていた。
そうか。俺はもうとっくに、テティスのことがこんなにも好きだった。
それを臆病な心と、中途半端な意地が、必死に隠していた。
あくまで受動の態度をとって。一歩前に踏み出すことも拒んで。変化を恐れていた。また拒否される、この日常 が崩れる、無意識に今までの経験が俺の心をつくっていたのかもしれない。
それが、今、明確な天敵が提示されてやっと気付いた。
誤魔化しに気付いた。この感情は、いつもテティスに向けてある溢れんばかりの感情は。この愛しさは。親心とごまかしてきたが、もうわかってしまったこの上には。そうだな、もう、いっそ…。
愛しさをこめて、このままの状態で、真っ赤な顔をしているテティスを見下ろす。
そして諦めを示すように。印をつけるように。
真っ赤なテティスの形の良い丸いおでこにそっと自分の唇を押し当てた。
エイム「ええっ!!!ちょっ・・・!なにしてんの!オレ放置!?」
放置です。少なくとも次回も。ははは。
失礼しました…続きます。




