26.レムの日常
閑話的に、もう一人の生け贄、レムくん視点でざっくりと。
では。
僕は化け物だ。
そう思って生きてきたし、そう思わされていた。
なにより町には大勢人もいるのに、僕だけ髪の色も目の色も違う。少し考えればわかることだった。
人々にとって、僕は一目で不気味に写るのだと。
だから、ずっとやっていなかった『贄の儀』がはじまったあのときも当然のように僕は選ばれたんだ。逃げる、なんて思い付かなかった。今思えば馬鹿だったな、とは思うけど。
僕の唯一の味方だったおばあちゃんは死んでしまったし、僕は独りだったから。
どっちにしろ逃げる場所なんてなかったんだ。
抵抗できないように縄で縛られて、それだというのに抵抗する力もなくすように叩かれて殴られて。気付いたときには暗い森に一人置かれていた。
僕は死んだと思ったよ。
…なにが因果か、龍の生け贄の僕は、龍のとこに持ってかれたわけだけど。
寒くて気を失って次には、銀髪の可愛い女の子と、金髪の綺麗な男の人、それに、僕を運んでくれた本当に綺麗で優しそうな男の人がいたもんだからびっくりした。
銀髪に金髪なんて、僕以外で見たことなかったから化け物かと思ったよ。
いや、ホントに化け物だったんだけどね。
銀髪の可愛い女の子こそが、龍だったんだ。
金髪のお兄さん――――コルトーさんは風の妖精。
僕を助けてくれた黒髪の人は、ヘイロンさんは人間。街にいた人たちと同じ髪なのに僕に優しかった。それに、彼も、化け物だったんだって。
驚いた、僕と同じ髪の色が、黒髪を差別していたんだ。
あぁ、そうか。
僕は痛いほどわかったよ。なぜ僕が化け物だったのか。
それから一悶着あって、僕はなんだか活躍したらしいんだけど…それ依頼、ちょくちょくエコーが僕のところにやって来る。いや、嫌じゃないんだけどさ来ること自体は。
いきなり現れるのだけはやめて欲しい。ほんと。
心臓に悪いんだ。
それから僕はコルトーさんの作戦で街の人たちに忠告しておいた。ざまあみろ、だ。
うん。正直、恐怖を張り付けた顔は見物だったね。
いまさら恨むこともないほどどうでもいいし、むしろ可哀想だとは思うけど、次の僕が生まれないようにするには、どうしても必要だったんだ。
いやあ、それにしても……ぷぷ。
最近、僕性格悪くなってる?
うーん、悪戯好きなコルトーさんの影響かなぁ…。そうだと思う。
それから、テティスが
「ここで一緒に暮らす?」
って、言ってくれたときは本当に嬉しかった。後ろでヘイロンさんが満足げな顔をしていたから、まあ半分はあの人のおかげなんだろうけど。
それにしても、ヘイロンさん自分は人間だって言ってるけど本当にそうなのかな…。すごく疑わしい。ていうか、髪が黒じゃなかったら、いくら人間だと主張されても僕は寸分も信じなかっただろう。
だって、黒髪は芯がしっかりしていてでもサラサラで、風を通しては、全体が艶めくようにキラキラ光る。形のいい切れ長の目は優しい光を灯していて、見る角度によっては色んな色を写す。綺麗な鼻筋とのバランスも最高で、薄めの唇なんてほのかに笑みを漏らしたときなんて僕でも蕩けそうになるくらいだ。
つまりは、超絶セクシーでイケメンなのだ。(コルトーさん曰く)
しかも、風と話せるらしい。
だから風と遊んでるらしく宙に浮かんでたりするし、木とかスパッと切ってたりする。
それに加えて実は水ともしゃべれるらしい。
だから水も操れるんだとか。
いやいやいや!
それもう人じゃないでしょ!
って思ってたら、このあいだ、炎の妖精に喧嘩売られて、即返り討ちにしてた。…すごすぎる。
「龍の親なんだから当たり前だろ」
とあっけらかんと笑ってますが、無理です。普通無理です。少なくとも、龍の友達の僕は無理です。
龍の親は、親であって龍ではないのです。
そういえば、コルトーさんが「今までの親ではなかった」とか漏らしてたよ。
…ほら、ヘイロンさんはすごすぎるって。
ていうか、コルトーさんいくつなんだろう。
森の中では色々事件はあるけれど、毎日楽しくやってます。
ヘイロンさんはすごすぎるけど、相変わらず優しいし。むしろ生け贄になってよかったなぁ。
そんな僕は、テティスとかくれんぼをしています。
「…さーん、にーい、いーち、ゼロ!テティスーもういいかあい?」
僕は鬼です。
「もうい〜よ!」
…岩の向こうに銀色の尻尾が見えてますけど。
…ひととおり、見て回ってから見つけることにしようかな。
アバウトになりすぎたかしら…
とりあえず、ヘイロンのチートっぷりと、イケメンっぷりを書きたかったのです。
すみませんでしたー!
ではでは。
旅立つとか言ってまだ旅立ってくれませんでしたね。




