24.嵐は去らぬようで
最近、更新が全然できていませんでした。
なにぶん忙しくて…
珍しくシリアスめになっていた白黒でしたが、また今回からはギャグに近い感じで。
久しぶりでテンポがつかめなくてむずかしいです。
が。
どうぞ
「おい!お前勝負しろ!」
つり目の元気そうな少年がいきなり現れて、開口一番そう言った。
「よく聞け、龍」
ぬけぬけとテティスを指差してかっこつけている。まだ青年というより少年真っ只中そうな少年は反抗期感丸出しの、思春期感たっぷりの空気を漂わせ、それに合わせるようにオールバックの髪は前髪までツンツンと上を向いて立っている。燃えるような赤毛。
アンどころじゃねえな、とか思ってはた。アンって誰だよ。
まぁ、そんなことはこの際どうでもいいとして、お前!なーに俺のテティスに指なんて差してやがんだこの!!たとえ少年だろうとお兄さん許しませんよ!?
俺が内心、爆発を起こしながら睨んでいると、少年は両手を腰に当て、ふんぞり返って言った。
「オレは、炎の妖精だ!」
…いや、分かってたけどさ。
やっぱりな、ってまんますぎる。
はぁ、…今回もまた厄介な事件に巻き込まれるんだろうな、と半ば悟ったような気分になったが、ここは譲れない。
「あっそ」
俺はテティスと赤い髪の間に入って、そそくさとテティスの手をひく。
「さあ、じゃあ家に帰ろうか」
笑顔を顔に貼り付けたまま、俺は指を前にびしっと差して決めポーズをしている少年の横を通り過ぎてゆく。
うむ、心優しいテティスは「え?え?」とか疑問の声をあげている。が。
でも、しかし、いいんだ。今日は時間がない。まあ時間があったって構う必要なんてないがな。
「流すな人間ー!」
それまで唖然としていた少年は俺らが少し歩いてから、急いで走ってきた。
息を切らしながら、
「だから勝負しろ龍ー!」
叫んでいる。
全く、…ここまでしつこいとなると、このまま行くと家まで付いてこられかねない。
はあ、と深く溜め息を付いてから俺は振り返った。
「仕方ない、テティス、そこの残念な坊ちゃんを早く片付けてあげて、さっさとデートの準備をしようか」
そう、なんたって今日は、俺とテティスのデートの日!こんな奴に構っている時間なんてないのだ。
いつも森の中に二人で暮らしてるんだから変わらないんじゃない?とか思った奴でてこい。
心構えを教えてやる。
デートと思って過ごす時間とただ駆け回る時間じゃ全然違うわけだ。
そして、最近じゃレムがいる。
それに、テティスに俺が好きだと言われてからの…その……初デート……だったり…。
そりゃ、まだテティスを完全に恋愛対象にしているかと問われれば否、だが、完全に娘かと聞かれたら答えられない。感じだ、そんな感じ。
でも将来他の男のところに嫁に出すくらいだったら俺が貰う!
というわけで、久々の平安な日常が続いていた今日この頃になってようやく決心したというのに、だ。
邪魔をするなああぁ!
と、叫びだしたいのをぐっとこらえて少年を笑顔で見る。
俺のテティスに傷ひとつでもつけてみろ、末代まで呪ってやる。と思いを乗せて。
《ヘイロン、目ガ笑ッテナイゾ》
風がやんわりと忠告してくれたわけだが、ま、その心配はないだろう。
テティスが負けるなんてことはあるまいし。
「いでよ!炎の子たち、我にっ…へぶっ」
文字通り、火の粉が少年の周りに現れるが、最期…いや最後まで台詞を言い終わらないうちにどこからともなく現れた水でびしょぬれになっていた。
ツンツンに立っていた赤い髪もひしょげている。
負けたことがよほど悔しいのか、下を向いて、呆然としてしまっている。
負けたことがよほど意外だったのか、絶対に勝つつもりだったのか、悔しさというよりは驚きが勝っているように見えるが。
…いやいやいや、普通に負けるだろ、お前。
日を見るより明らかじゃねぇか。水を統べる龍に炎の君が挑んでも、たとえ実力が同じだったところで水の龍が勝つに決まっている。
相性が悪すぎる。はなから分かっていたことだろうに、と違和感を覚えたのも束の間、あろうことか少年はテティスをまっすぐ見据えてこう言い放ったのだ。
「このオレを任すとは!惚れちまったぜ龍の子!」
…なにぃ。
「仕方ない、そこまで言うならこのオレが契ってやらんこともないぞ」
嬉々として手を伸ばす少年。
…殴っていいですか。
次はいつになるかわかりませんが、今後ともなにとぞよろしくおねがいします




