12.出逢い
外から見ていたときと違って、森は明るかった。木々が鬱蒼としていて暗くてジメジメしたイメージが有ったが…。
入ってしまえば、木々の間から降ってくる緑々とした光はむしろ、澄み渡っており、心まで白く、明るくなるようだ。
もう随分と歩いている。庭園の芝生とは違う剥き出しの土は、靴を汚していったが、別にそんなことは構わない。湿った土がひんやりとした空気を作っていて気持ちがいいくらいだ。
しかし、困った。
闇雲に歩いてきたおかげで…。
「見事に迷ったな」
ひとり呟いて、木の木目と目を合わせた。
気のせいであって欲しいことだが、さっきもこの顔を見たような気がする。よく小説やなんやらで道に迷い同じところを彷徨うのを見て阿保らしいと笑ったものだが、どうやら俺の方が阿保だったらしい。事実のようである。
乳母はじめ、村で専らの伝説となっているだけはある。
それよりも、恐らく、こんな深い森に入ってゆこうという者、それこそ村から一刻も出たい理由がある者か、よっぽどの阿保くらいというものだ。それが帰ってくるはずがない。
伝説が生まれた理由が分かった気がする。
そして、やっとだ。
何周つづけたか分からない同じ景色の連続に飽き飽きしてきたころ、やっと違う景色に巡り会えた。
――水辺に佇む小さな小屋。
俺は意気揚々と鬱蒼とした木々が少し減った水辺に足を踏み入れた。
「出ていけ!!!人の子!!」
突然のことで俺は不覚にも戸惑った。…今、声が聞こえたような気がしたが…。首を回してみるが、人の姿は確認できない。
もしかして、もしかするとの事態かもしれない。
いやいや、森をさまよいすぎて少し錯乱しているのだな。
気のせいだ、気のせい。
俺は自分に言い聞かせた。
取りあえず落ち着け。
その場に腰を下ろして湖を見つめた。ここはひとまず、これからのことを考えるとしようではないか。
「でていけと言うとろうが」
また聞こえた。
それに今度はもう空耳と自分に言い聞かせる術はなかった。
湖の中から箒を片手に美しい女の子が現れたのだ。
それが俺とエコー、水鏡の妖精との出逢いだった。




