9.習性
「私は――ヘイロンが好きなの!!」
…え?
す、好きって?知ってるさ、そんなこと。何年母親がわりを勤めてきたと思ってるんだよ。一年だよな。そんな親の俺が大好きなんだろ。…いやいやいや。
自分にどれだけそう言い聞かせようとしても、もう理性ですらそうでないといい放っていた。
あのテティスの表情は、見たことない。
あんな表情…はじめて見た。
つまりは、親である俺ですら見たことのない表情ってことは…。
平常を保とうとしたものの、上がる心拍数と高揚してしまった呼吸に邪魔されて不可能だった。
カサリと落ち葉を踏んでしまって、二人に気付かれてしまったようだ。
テティスはこちらに振り返ると見る見るうちに赤くなって、
「いまの聞いてた!!?」
と凄い勢いで迫ってきた。
「いいい、いいいや!!聞いてない聞いてない!」
俺は急いで全力で否定するも、この赤面と焦り様ではどうも説得力がなかったらしい。
「嘘つき!聞いてたんでしょ!!」
決めつけられて、俺は一瞬の間を作ってしまった。
「…聞いてないって!!」
もう完全に聞いていたことは確定してしまったらしい。非難の目を向けるテティスに俺はハハハと笑って誤魔化すしかなくて、その後、二人の無言の圧力に負けて「それじゃ」、と引きつった笑顔のまま去っていくこととなった。二人から姿が見えなくなるまで俺の背中にはブスブスと視線が刺さってきていた。…怖かった…。
つーか、コルトー。何処行きやがった。
「意味が解からないわ」
エコーが力なく呟いた。
「なんで、好きなのに、そんな…」
私だって、こんなことしたくない。でもね、ダメなの。好きなのに、見られるだけで恥ずかしい。
コルトーの嘘吐き。恋、なんて良いことひとつもないじゃない。このままじゃ、本当にヘイロンに嫌われちゃう。ホント、どうしちゃったの、私。
「こういうのを照れ隠しっていうんだよ」
いきなり、横から声が聞こえた。
「…コルトー」私は、綺麗な金髪の青年がいきなり現れる瞬間を見てしまった。
なんだか、あまり幻想的でもなければ美しくも綺麗でもなかった。なんか…キモい。いつもコルトーって、いきなり現れるけどこんな風に登場してたのね…。風が吹き荒れる中で散り散りになったからd…いや、表現するのは止めておこう。
「照れ隠し?」
私は気を取り直して聞き返した。なのに、
「やぁっぱり、テティスはヘイロンが好きだったんだね」
コルトーはそう言って意味深に、それなのに何処か寂しそうに、ふふふと笑った。
「質問に、答えてよ、コルトー」
私はもう一度問うた。今回に至っては、コルトーはこちらを見向きもせず、エコーの方へ向き直った。――全く、なんなの?また今度はなんのイタズラ?私がため息を付きかけたときだった。コルトーは、また意味深に笑って呟いた。
「ねぇ、エコー、知ってる?人間ってね、好きなひとには素直になれない、なんともめんどくさい習性を持っているらしいよ」
やたら短いですが、ここがきりがいいので…。
すみません。早いペースでやっていこうと思いまして、一話一話を」短く、読みやすい感じにしようと思ってます。
目標は、週1★
なんか、無理そうですが…頑張ります。




