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目立たず静かに生きたいだけなのに、 呪い付きモブとして転生した結果、 五つの学園を練り歩く最下位スタート生活になりました。  作者: ヤッくん
第一章 剣術学園編

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13話 決闘状は、辞令と同じくらい断れない件

 胃が痛い。

 前世、徹夜明けにブラックコーヒーとエナジードリンクを交互に流し込んだ時のような、あの嫌な灼熱感が這い上がってくる。


 手元には、一枚の紙。

 ランキング六十二位、ワイン・ワイトからの「決闘状」。


(……え、これって強制参加?)


 この剣術学園のルールは、単純かつ残酷だ。

 ランキングの移動は『ジャック・システム』と呼ばれ、下位が上位を倒せば、その順位をそのまま奪い取ることができる。

 だが、俺のような最下位には、別のルールが牙を剥く。


「……拒否すれば、不戦敗。最下位の不戦敗は、即日退学」


 退学。

 それは俺にとって、学園を去るという意味じゃない。

 『学生でなければ死ぬ』という呪いが発動し、物理的に心臓が止まる。


 つまり、この綺麗な文字で書かれた招待状は、俺への死刑宣告だ。


「……逃げたら、死。戦っても、たぶん死。……いや、戦えば数パーセントの生存率があるか」


 有給申請が却下され、さらに休日出勤を命じられた時の方がまだマシだった。

 俺は深くため息をつき、震える指でカレンダーの「七日後」にバツ印をつけた。

 それは、人生の終止符に見えた。


 ---


 翌朝。

 いつもの地獄稽古。


 シトラ・シトラスの剣を、転がりながら避ける。

 石床に顔を打ち付け、鼻血が出そうになるが、止まることは許されない。

 止まれば死ぬ。物理的に。


「……動き、硬い」


 シトラスが剣を止めた。

 無機質な瞳が、俺を見透かすように細められる。


「悩み事?」


「……まあ、少し。決闘を申し込まれまして」


 俺が言うと、シトラスの眉がミリ単位で動いた。

 彼女にとって、それは「興味深い」のサインだ。


「相手は?」


「ワイン・ワイトさんという方です」


「……あ。あの、掃除の人」


 掃除の人。

 確かにワインは「秩序の番人」を自称し、学園の風紀を正しているらしいが、彼女の認識では「いつも廊下で騒いでいるゴミを掃いている人」くらいの扱いらしい。


 シトラスは、ふむ、と短く息を吐いた。


「いい、機会」


「……はい?」


「吸収。今のあなたは、飽和状態。刺激、必要」


 彼女は淡々と言った。

 おそらく、「実戦を通して今の技術を定着させろ」と言いたいのだろう。

 だが、コミュ障な彼女の口から出ると、こうなる。


「ワイン……いい、肥料になる」


(……肥料!?)


 人間を肥料呼ばわり。

 俺がスポンジなら、相手は堆肥か何かか。


「死なない程度に、絞り出す。期待、してる」


 シトラスはそれだけ言うと、満足げに去っていった。

 ……「期待してる」が「きっちりトドメを刺してこい」という宣告に聞こえるのは、俺の心が荒んでいるからだろうか。


---


 その頃、学園の食堂は、朝から異様な熱気に包まれていた。


「おい、聞いたか!?」

「例の最下位、シズカ・ニクラス。ついに『番人』が動いたぞ!」


 噂は、光の速さで尾ひれをつけて広がっていた。


「ワイン・ワイトが、シズカに決闘を申し込んだらしい」

「当然だろ。最下位の分際でシトラスさんに取り入り、リネットちゃんまで毒牙にかけようとしてるんだからな」


 そこに、一人の学生が震えながら割り込んできた。


「……いや、違うぞ。俺は見たんだ。今朝の稽古場を」


 周囲が静まり返る。


「シズカのやつ……シトラスさんの言葉に、不敵に笑ってたんだ。『ワイン? ああ、あいつは俺の成長の肥料にすぎない』って……!」


「「「な、なんだってーー!!?」」」


 驚愕が走る。

 実際には、肥料と言ったのはシトラスだし、シズカは引きつった笑いを浮かべていただけなのだが。


「六十二位を、肥料扱い……」

「どこまで不遜なんだ、あの最下位」

「いや、それだけの自信があるのか? あのシトラスが直々に鍛え、数多のゴブリンを屠ってきた『ゴブリンキラー』だぞ……」


 噂の中で、シズカの評価は「不届きな最下位」から「底の知れない不気味な実力者」へと変質していく。


 ――そして。


「……なるほど。私を肥料、ですか」


 食堂の隅。

 磨き上げられた銀の食器を手に、ワイン・ワイトが静かに立ち上がった。

 その眼鏡の奥の瞳は、狂信的なまでの「秩序」の炎で燃えている。


「身の程を教える必要がありますね。不純物は、排除せねばならない」


 彼の背後には、彼を支持する学生たちが、まるで行列を作るように控えていた。


---


 一方、当のシズカは。


「……なんか、視線が痛いどころか、物理的に刺さりそうなんだけど」


 廊下を歩くだけで、周囲の学生がサッと道を開ける。

 モーセの十戒かな? と思うほどの割れっぷりだ。


「汗臭い……のを通り越して、俺、もう発酵してる?」


 本気で自分の体臭を心配しながら、シズカはトボトボと歩く。

 その背中が、周囲には「嵐を前にした強者の静寂」に見えていることなど、微塵も気づかずに。


 そしてこの時、彼はまだ知らなかった。


 自分が「ワインを肥料扱いし、ジャック・システムで一気に上位へ駆け上がろうとしている野心家」だと思われていることを。


 決闘まで、あと六日。

 胃に穴が開くのが先か、スキルを習得するのが先か。


 物語は、本人の意図を置き去りにして加速していく。

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