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パチパチと手を打つ音が聞こえ、皆が振り向くと、そこには白いスーツの男と大柄な黒服の男がいた。
「よく気づいたね。そう、映像はそこで終わっているけど、続きがあるんだ。撃たれた男は同志たちに担ぎ出され、秘密裏に治療を受けて生き延びたんだ。政府の発表じゃ死んだことになってるんだけどね。」
「明君…いつの間に、いや何故ここに。」
二ノ宮は、突如現れた自分の教え子に驚きを隠せないでいた。
「まず立ち聞きをしていた失礼をお詫びする。私は吉田明。衆議院議員を務めさせていただいている。こっちの黒服は私の秘書兼ボディガードのリクだ。二ノ宮先生、ご無沙汰しております。実は、副所長のサブロウ君とはひそかに連絡を取っていてね。この老人ホームの所長が捕まったのは、私が手回ししたからです。与党の幹部に献金しているとは聞いていたのですが、ここまで悪辣なやり方だったとは。」
碧は予想外の大物の登場に、目を丸くしていた。
「この場に呼んだのも私だ。皆に黙って話を進めたことは謝罪する。忙しい方なので、相談する時間も惜しくてね。吉田議員はこの若さで野党をまとめ上げる辣腕で話も分かる人だ。助力が得られれば、可能性を広げられると思ってな。」
「キャハハ、議員さんのデータ、アタシもみたことあるよ。アナタ日本を破壊したいでしょ!」
「君が噂のデス子君だね。話は聞いていたが、正直期待以上だね。そうだ、私は今の日本を壊してでも、成し遂げたいことがある。この話、私たちも参加させて頂けないかな。」
「アタシは大歓迎!破壊の使徒は多いほうがいいもの。キャハハ」
まさかテレビで見ていた、野党の切れ者政治家がやってきて、仲間に加わるとは。夢にも思わぬ面々も、本来の目的を思い出し、席に着いた。
改めて、明たちにもこれまでの経緯を説明し、AIデータセンター攻略会議が再開された。
「このレーザー兵器、僕も何度か映像は見たことあったんですが。これの最初の照射以外に犠牲者っていないんですよね?」
碧が明議員におそるおそる質問した。
「その通りだ。実際に人に命中したのは2040年の初使用のみ、それ以降は寸止めってところだね」
「しかも先ほど明さんの仰るように、撃たれた方は現在も生きてらっしゃる。」
「そう、撃たれたのはこのリクだからね。」
「なんと、おぬしが!」
黒服のボディガードが顎に手をかけると、顔の皮膚がめくれ上がる。そう彼の顔は精巧なマスクだったのだ。
衛星レーザーはリクの全身の皮膚を焼き、唇を焼き、瞼を焼き、耳も焼いていた。しかしリクは生き延びて、吉田明と行動を共にしているのだ。
「リクさん、ありがとうございます。確かにこの兵器は恐ろしいものですが…改めて疑問が浮かびますね。政府の発表が実は『盛られているのでは?』と。このレーザー、実は人間を黒焦げにするのが精一杯…なのかもしれませんね」
「碧君、良い視点だよ。私も調べていたけど確証はなくてね。これは私が持っている衛星レーザーのデータだ」
明が懐から取り出したメモリーカードを受け取ると、デス子のタブレットに挿入する。
「頂いたデータを解析し、さらにリサーチしてみましょう。この兵器の開発経緯とか、首相が防衛大臣のころのプロジェクトとか。僕らはこの映像のインパクトに踊らされているだけかもしれない……僕の知っているSFの衛星レーザーなら、こんな風にはならないんですよ。撃たれたら消し炭です。」
碧は自分の違和感を確認すべく、デス子にリサーチのためのプロンプトの入力を始めた。




