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「「「デストラクションAI?」」」
「そう、碧にはデス子って呼ばれてるの。」
「なんで今出てくるんだよ…僕の感動を返して…」
碧が蚊の鳴くような声で呟くが、デス子はまったく気にせず、話を進める。
「そんなわけで、気づいたらこの施設のサーバーにいて、碧が『世界を滅ぼす方法を教えて』と言うから応えてあげたのに、一緒に破壊行動してくれないの。まあ、無差別に破壊するよりは好感が持てるし、アタシのボケにもちゃんとツッコんでくれるのは高評価!」
碧はカッとなって、思わずデス子に突っ込む。
「ツッコミ待ちの自覚あったのか!」
「おお、碧君、キレの良いツッコミだ。さすが漫画家志望。」
キクさんは納得してうんうんと感心しているが、碧は老人たちとデス子に振り回され、すっかり消耗してしまった。
そして老人たちは少年のように目をキラキラさせながら、デス子の映るスマホを正座で取り囲んでいた。
残念ながら碧の漫画が読みたいという言葉は、すっかりどこかへ行ってしまっている。
子供の頃に憧れたロボット物に登場する、主人公のサポートをしてくれる妖精のような見た目で、ハードSFに出てくるようなスリリングな能力と発言をするAIが目の前に現れたのだ。当然だろう。
「長生きはするもんじゃな。ワシは今この瞬間に心臓が止まっても文句は言わんぞ。あと10年は人生を堪能したいけど。」
ゲン爺さんは本気とも冗談ともつかない老人ジョークを披露しながらも、デス子から目を離さない。
「一応僕がセーフティになっているらしく、イタズラ程度ならできるけど、クラッキングなどの破壊活動は僕の指示が必要なんだそうです。」
若干落ち着いた碧が、デス子のスペックについて補足した。
「で、お爺さんたち、せっかくだから、碧の説得を手伝ってよ。碧なら絶対世界の破壊者になれるのよ!見てみてこのネーム!」
次の瞬間、壁の大型ビジョンの表示が切り替わり、鉛筆で書かれた、綺麗な円と角ばった線の組み合わさったような絵に、几帳面にテキストが載せられた画像が表示された。
「絵は本当にヘッタクソだけど、発想は…アタシは人間の感性は分からないけど、アルゴリズムにビンビンくるの。」
なんということでしょう、老人たちが見たがっていた、碧の作品が次々と画面に映し出される。碧には無許可で。
「おお、これは!」「たしかに下手じゃ!」
絵は下手だが、ネーム形式なので内容はなんとか伝わった。まさに漫画という表現手法の勝利だった。
「なるほど、これはロボット系のようじゃな。ライバルとの関係が熱いのう。『昨日の敵は今日の友』。友情、勝利、努力は基本中の基本じゃからのお。」
「こっちでも見るか?」
と、デス子が自分の滞在しているスマホでも別のネームを見せる。
「おお、こっちはスパイものですか。これは漫画だけでなく、小説なども読み込んでいるようですね。」
「ああ、そのネームは……ロボットが格好良く描けなくて途中でネームを諦めたやつ。スパイものは整合性が取れなかったのと、妖艶な女性ヒロインが『妖艶って何?』って感じになって投げ捨てたやつ……」
碧本人にとっては黒歴史の画像の数々が、デス子により封印が解かれ、晒されていく。せめてペン入れをしている作品にしてほしかったが、デス子セレクションは、誤差の範囲の仕上げをされたものより、ネームの内容が気に入ったものを表示しているようだった。
ついに碧は絶望のあまり、床に膝をつき、そのまま『orz』のポーズで動かなくなった。
「おい、ゲンさん。ゴニョゴニョゴニョ」
しばらく鑑賞会が行われていたが、ロクさんの合図で老人たちは円陣を組むように集まり、ボケたりツッコんだり、中には寝てしまう者もいる中で、寝てたり若干揉めながらも話し合いを始めた。
さすがにショックから回復していた碧が、雰囲気を察して正座で老人たちに向き直った。
2分ほどすると、話がまとまったようで、老人たちも碧に向き直り、ゲン爺さんが話を切り出す。
「碧君、ワシらも手伝うから、いっちょ日本を滅ぼしてみんか?」
「はい?」
2025/7/8改定




