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世界の全てが嫌になったので、AIと世界を滅ぼしてみた  作者: 庄子貴裕
第三章:國の行末争うも、漁夫の利狙うは禿げた大鷲
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3-15

謎の女性の登場で、コントロールルームは何度目かの沈黙に包まれる。

最初にフリーズから立ち直ったのは、意外にも草生首相だった。


咲良さくら!こんなところで何を!?まさか今回のテロ行為に咲良も手を貸していたのか!?」


フリーズから立ち直った訳ではなく、彼にとってもっと衝撃的な事が起きていた。モニターに映っていたのは、草生首相の最愛の一人娘、『草生咲良くさお さくら』だったからだ。

テロリストの襲撃を受けていたら、テロリストに娘が加担していたのだ。首相としても父親としてもこんなにショックな事はないだろう。


「おじ様は…メモリーにデータが残ってる感じが……あ、草生首相!お久しぶりです!私は娘さんの咲良さんではありませんよ。姿は確かに咲良さんの…あれ、なんか変ですね。」


モニターの女性からさらに衝撃的な事実が語られ、コントロールルームがざわつき出した。

そんな中、咲良の姿をした女性の言葉で草生首相は冷静さを取り戻していた。


「お久しぶり?その姿で咲良ではない。まさかお前は、行方不明になっていたL.O.G.OSか!?」

「この姿では違和感がありますね。今、アバターデータを設定し直しますので…」


モニターが一旦ホワイトアウトし、メルヘンチックなフォントで「着替え中 覗くな!」と表示されたかと思うと。


「キャハハ、設定完了。欠損データを見つけて統合した時に、アバターデータが初期化されてたみたい。改めて、元L.O.G.OSの、デス子でーす!このデータセンターは全部掌握しちゃったので、衛星レーザーももう使えません。残念でした⭐︎」


パンクな衣装に金色の瞳が煌く、いつものデス子がメインモニターに現れた。


「キャハハ、衛星レーザーは確かに凄い兵器でしたが、最終的に日本では一人も死人を出す事なく終わりを迎えるの、日本人らしいと言えば日本人らしいですね。」

「何!?まさか…今の照射も失敗したのか?」


白石大臣は続けての失敗に気を取られてしまう。この辺りは元々技術者の性分だろうか。失敗したとなれば原因を探り改善を検討しなければならない。


「碧も安心して、おじいちゃん達はこの通り無事だから。キャハハ」


自分の右手側のサブモニターに、ゲンじいさん達が映される。

土まみれになっているが、皆大きな怪我はなく元気そうだ。その周辺には銀色の風呂敷状のものがいくつか見える。


「防災用アルミシートを2重で使った対レーザーマント、役に立ったんだ…」


それは、ホームセンターに残されていた、防災用のアルミ蒸着シートだった。

薄型のシートにアルミを蒸着させたこのシート。嵩張らないし緊急時にシートに包まると暖が取れる。光の反射率も極めて高い。このアルミシートを二重に重ね、コンパクトに畳み、腰と肩にベルト状で装備できるようにしたのが「対レーザーマント」である。肩にセットされた紐を強く引くと素早くシートが展開され、亀の字になる事で、身体の重要部位を守る仕掛けだ。

陽動チームは、万が一レーザーの標的になった場合の備えとして全員にこの装備を配布していた。

今回は標的になったチームが赤外線探知センサーを携帯していたため、対レーザーマントの展開が間に合ったようだ。


「そんな、防災用アルミシートなどで、私の衛星レーザーが。」


アワアワと動揺する白石大臣にリクが歩み寄る。


「白石大臣、10年前、初めて衛星レーザーを使った時のことを覚えていますか?」

「な、今更それがどうしたと言うんだ。もちろん覚えているとも。私が操作していたんだから!」

「あの時の照準の先に居たのは私です。」


リクが顔のマスクを丁寧に剥がした。

一度は見たはずの碧たちでも目を背けたくなる、凄惨な火傷の痕。

その無惨な顔のまま白石大臣に詰め寄るリク。


「さて、アンタが無敵の治安維持兵器と喧伝したレーザーの威力がこれだ。だが俺は死んじゃいねえぞ!勝手に死んだことにしやがって!そのせいでみんな萎縮しちまって言いたいことも言えねえ世の中になっちまった!」


白石大臣の戦意は、大暴落のストップ安である。情けない悲鳴をあげ、下手したら漏らしてしまいそうな状態だった。


「こんな世の中にしてしまったのは私だ。全ての責任は私にある。」


草生首相が哀れな白石大臣を、いや、リクの気持ちを汲んで動いた。


「すみませんでした。今この現状を作ってしまったのは、政治家一人の責任じゃない。かといって有権者が悪いとも言えませんが。私は貴方が最善を行おうと動いていたのを、明様の横で見ていました。興奮していたとは言え、貴方にそのような事を言わせてしまったのは申し訳ないです。」


思いを吐き出してすっきりしたのかは、火傷の顔からは読み取れなかったが、リクは改めてマスクに火傷の顔を収めた。


「そうか、ともあれ私はあの時撃たれた君が生きていて、本当に嬉しく思う。衛星レーザーは私の発案だ、それが君の身体に傷を負わせただけでなく、人生を奪ってしまったようだが、それでも言わせてくれ。生きていてくれてありがとう。」


草生首相はリクの手を取り握手をしたのだった。


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