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世界の全てが嫌になったので、AIと世界を滅ぼしてみた  作者: 庄子貴裕
第三章:國の行末争うも、漁夫の利狙うは禿げた大鷲
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3-9

2050年7月1日午前11時06分。データセンター内3F通路。


白石は細長い通路を弾むかのような早足で進む。


「この私が、防衛大臣を務める日本においてこんなテロ攻撃だと? ご丁寧にジャミングまでかけて? くくく、良いだろう。こういう時のための備えだ。」


白石にとって、今日は待ち望んだ日になりそうだ。日本の安全神話が崩れ、大義名分のもとに暴力を振るい、その働きを賞賛される日。その時がきたのだと、白石は歓喜に震えた。無論態度には出さないようにはしていたが、実際は踊り出したい気分だ。


「(そして、あのレーザーをまた放つことができる!自分の手で。そう、この日を10年待ったのだ!)」


今まで人類が夢想の産物と考えていた衛星からのレーザー照射。ソラから突然降ってくる閃光。悪夢の様な暴力装置。

10年前、初めてレーザー照射に成功した時のことがリアルに回想される。


あの首相官邸の前で、大規模なデモ運動が行われた時。衛星レーザーの開発責任者となったことで、防衛省の幹部に昇格していた白石は、これまでになく首相に接近していた活動家に対して、首相を守るためと言う大義名分を得た白石は、不安ながらも照射のためのスイッチを押した。

そもそも正常に稼働するのだろうか。稼働しても、設定した照準を外れ、一般市民や建造物を傷つける可能性もある。このタイミングで露見することで軍事的影響も多大なものがある。

そして使用の責任は誰が負うのかなどの、ごちゃ混ぜになった思考のなか、照射されたレーザーは、見事にターゲットのみを焼き焦がして、想定以上の効果を見せた。

黒焦げになって地に臥した活動家を見た時、それまで白石の胸を駆け巡っていた不安は、一気に解放へと塗り替えられた。そして暴力の結果から生まれる黒い力の衝動に快感を覚えた白石は、その場で失禁していた。


衛星レーザーの完成、そして実際に使用して効果を上げたことが「有事の判断力あり」と認められた白石は、草生首相の後釜として防衛大臣に就任した。

正式に政治家に転身してからも、白石はあの暴力の快感が忘れられなかった。自分が開発から手がけたレーザーが世界的に影響を与え、世界のパワーバランスにまで影響し、日本は国際的な発言力を全盛期まで盛り返した。

今の日本があるのは、自分の力ではないかと錯覚する時すらある。

しかし、日本では効果があり過ぎたのか、以降衛星レーザーを人に向けて使用する機会はなかった。せいぜい示威行為に使用する程度だったのが白石の密かな不満だった。


白石はデータセンターの中央コントロールルームに到着した。

この部屋は展望室の様な構造で、各種通信設備が配備されているだけでなく、スーパーコンピューター群が設置された中枢施設や、研究室に直接降りられる直通階段も設置されているまさに心臓部とも言える場所だ。

さらにこの部屋には、首相官邸と同等の衛星レーザー制御装置とレーザー通信装置も備えられている。

白石と側近の技術者が、3重に設定されているセキュリティを一つずつ解放して、衛星レーザーを使用可能な状態にしていく。時折手順を間違う部下を叱咤しながら作業を進めていく。


「おっと、お得意様にも、この状況は連絡しておくか。これは我々がTOPに立つチャンスだろう……」


白石は、自分のスマートフォンを、コントロールルームの端末に接続し、有線通信を開始した。共犯者へ次なるステップに至るチャンスを連絡するために。


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