表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の全てが嫌になったので、AIと世界を滅ぼしてみた  作者: 庄子貴裕
第三章:國の行末争うも、漁夫の利狙うは禿げた大鷲
20/31

3-7

2050年7月1日午前11時05分。データセンターエントランスホール。

高野議員の秘書、氷室ユリは、今回の作戦に参加したことを後悔し始めて…いや、完全に後悔していた。


「(鼓膜が痛い!さっき何か当たって、ストッキングが破れて伝線した気がする!こんなに大きな爆発だなんて、聞いてないのですけど〜)」


赤いペンキが出血したかのようにスーツを汚し、爆風で髪が乱れ、土埃もかぶってしまった。陽動に使われたロケット花火ランチャーは、音と光が派手なだけで、リムジンの爆発も炎上を起こすのが目的のため、至近距離にでもいない限り、ケガをするほどではない。


が、そんなことはユリには関係なかった。

ユリは移動中の車内で、今回の段取りを確認したはずだったが、実は高野議員から、どのような陽動が行われるかを聞いていなかったのだ。

女の子を連れて行くのであれば、新鮮な反応が良いだろうと気を利かせた高野議員が、陽動兵器の殺傷能力がほぼないと判断して、詳細なスペックをユリにあえて伝えなかったのだ。

ユリは期待通りにその役割を果たした。見事、警備責任者にしがみつき、責任者ごとデータセンターのエントランスまで避難したことで、現場の指揮を混乱させる事に成功した。

そして安全圏にまで避難した今、安堵からか脱力し、脚の力が抜けて、立てなくなってしまったのだ。無意識で責任者のズボンの裾を離さないあたりが、責任者の庇護欲を刺激して、いまだに行動を制限しているのであった。


「(お家にかえりたいです!。後トイレも行きたくなってきました!なんでトイレ休憩のタイミングで急な連絡が!あの電話のせいでトイレ行けなかったのです!)」


この後、赤面してユリがトイレに行きたいと伝えたことで、責任者の心労はさらに増すことになった。


----------


2050年7月1日午前11時10分。データセンター裏ヘリ駐機場。


このデータセンターは日本の重要拠点の一つだ。日本の産業を支えるAIボットたち。そのデータが集約され、学習、さらなる効率化を図るデータ制御センター。

重要度だけで言えば、日本の最重要拠点と言っても過言ではない。

そんなこの施設には、比較的軽武装ではあるが、武装ヘリが配備されている。米国から輸入したアパッチの後継機に当たる警戒ヘリだ。

本国でも民間警備会社で使用されることを想定して、装備は軽機関銃のみで誘導兵器こそ装備されていないが、日本における警備戦力としては破格の性能だ。 現在は5機が試験運用されており、そのうち2機がデータセンターでテストを兼ねて運用されている。

とはいえ、試験運用中と言う事もあり、扱いはあまり良いものではなかった。簡易な整備施設こそ置いてあるが、即応体制と予算の問題で残念ながら、露天に駐機されての運用となっていた。


「だから俺はさあ。折りたたみ式の簡易で良いから屋根を付けるべきだって言ったんだよね。」


パイロットの一人が、ため息をつきながら無残な姿になったヘリを眺める。


「おう、まさかこんな手段で足止め食らうとはな」


2機のヘリコプターは揃って蜘蛛の巣のような粘着物にまみれていた。

整備員その他職員が総出で、ヘリに絡まる粘着ネットの除去作業を行っている。

ゴキブリ退治の罠を思わせる粘着力のネットが、ヘリのローターやテールローターだけではなくドアにも付着していた。

さらにはこちらにもペンキ弾が飛んできており、片方のヘリのフロントガラスを覆うペンキが、操縦のための視界を奪うだけでなく、無線通信も妨害していた。

そのため職員の一人が、伝令としてエントランスに向けて走っている。


「これは、飛べるようになるまで相当時間がかかるな。近くの自衛隊基地から応援呼んだ方が早いが、通信はどこまで妨害されているんだ…」


実際のところ使えないのは無線だけで、有線の光回線などは切断されておらず、自衛隊基地にはすでに応援要請が届いている。首相や防衛大臣の指示さえあれば20分でジェット戦闘機の応援はくるだろう。その後ヘリも到着するはずだ。


「ただなあ、しばらくネットは飛んできて無いんだよな。向こうの砲撃は続いてるけど、これは応援が到着する頃には、敵さん全部撤退してるんじゃねーの?」


パイロットの予想はかなり当たっているのだが、当たっていても意味はない。

パイロットはひとまず目の前の愛機に向き合うことにした。飛び立てないヘリは、哀れにも蜘蛛の巣に捉えられ、あがく羽虫のように見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ