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世界の全てが嫌になったので、AIと世界を滅ぼしてみた  作者: 庄子貴裕
第三章:國の行末争うも、漁夫の利狙うは禿げた大鷲
19/31

3−6

2050年7月1日午前11時00分。データセンター正面玄関前。


撃墜された不法侵入ドローンによってばら撒かれた物体が、人間には聞き取れないが不快な音を発しながら落下し、地面に落ちて鈍い音をたてた。

ほぼ時を同じくして迎撃に向かった五機の警備用ドローンがコントロールを失い、蛇行しながら墜落している。

ドローンがコントロールを失う直前に、ピリっと弱い電流のような感覚を受けた防衛大臣の白石が声を張り上げる!


「なんだ!?何をされた!?」

「ドローンが通信異常を起こしてコントロール不能です!」

「通信機器も全て使用不能、ジャミングと思われます!」


ツキさんの操るドローンからばら撒かれたのは、スマートフォンに電子レンジから取り出された部品、マグネトロンを使って作られたジャミング装置だった。

マグネトロンが発するマイクロ波は、食品の内部にある水分を振動させて熱を発生させる。この効果は意外と強力で、電子レンジでアルミ箔を熱すれば発火するし、マイクロチップなどは破壊されてしまう。

また、電子レンジ外にマイクロ波が飛び出せば、携帯電話の通信やあらゆる無線通信の障害を起こしてしまう。

今回は意図的にチューニングされ、通信妨害に特化した周波数をスマホの電源で可能な限り発振する妨害装置として投下された。持続時間は1分強だが、狙い通り最初の混乱を引き起こすには十分な効果を発揮した。


「おい、これなんかカウントダウンしてるぞ!」


落下したスマートフォンの画面上ではカウントダウンの表示が行われていた。


「こっちもだ!残り30強!」

「退避だ、護衛対象を優先して屋内に退避させろ!」


首相付きのSPや施設の警備担当者が素早く対処を始めるが、想定外の事態に現場は浮き足立っている。


「な、何ですかコレは!?一体どうなってるの!早く説明しなさい!」


ここぞとばかりに高野議員が金切り声を上げ、現場の混乱に拍車をかけていく。

氷室女史も可愛く悲鳴を上げながら、冷静に対処しようとする指揮者を見極めて擦り寄っていた。

SPと警備の手でなんとか首相と視察団が屋内に誘導が開始される中、次なる攻撃がデータセンターを襲った。

ビシャ!ビシャ!と、血の色をした赤い液体が周辺を汚し始めた。

エンビパイプから発射されたペイント弾だった。



2050年7月1日午前11時03分。


こちらはタマダが指揮するエンビパイプ迫撃砲の発射地点。第二射のための準備が進んでいる。


「二酸化炭素濃度を確認、サーキュレーターはきちんと稼働しているか?確認後、交換作業と弾込め開始!」


このエンビパイプ迫撃砲は、ソーダメーカーのボンベに充填されている、圧縮二酸化炭素の圧力を利用してペイント弾を射出する仕組みだ。

エンビパイプの内部には、簡易的にではあるがライフリングも刻まれている。ライフリング加工で強度は落ちているが、5発撃てれば御の字の使い捨て兵器なので問題はない。

エンビパイプに接続された2本のガスボンベが交換され、先端からペイント弾が装填される。このペイント弾は内部に薬品を用いた時限装置が組み込まれており、発射の衝撃で内部に仕込まれたカプセルが破れ反応を起こし、発射から10秒で弾体外部が破裂し、内部のペンキをぶち撒ける仕様だ。

このペンキも特別配合で、微弱な電波障害を起こす物質が配合されている。さらに混乱を狙って、着色も血の色に近い赤に調整された。


「準備ができた砲塔から射線の安全確認後順次発射、各砲塔第三射まで終わったら速やかに装備を放棄して逃走!用事が終われば長居は無用でい!」


おう!と職人たちの威勢の良い返事が聞こえる。

タマダは念の為二酸化炭素のモニターに目をやりつつ、着弾で死傷者が出ないことを祈った。



2050年7月1日午前11時03分。データセンター正面玄関前。


玄関前の混乱の中、警備担当の所員が怒号をあげていた。


「敵襲!迎撃のためにヘリの出動を要請してください!」

「キャー!血、血ぃー!」


氷室女史が悲鳴を上げ、パニックを装う。警備責任者が彼女を抱えて屋内に向かう。


直後、所員の怒号をかき消すように、鼓膜を破るかのような轟音と、目を灼く光があたりを包んだ。

同様の音と光が数回した後、視察団の乗ってきたリムジンが爆発炎上する。次々と飛来する弾頭が音と光を上げる。現場は現状把握も困難な状況に陥った。

陽動班の第3の兵器、鉄パイプを使用したロケット花火ランチャーによる砲撃だった。



2050年7月1日午前11時05分。陽動チーム作戦本部。


陽動班作戦本部の隣にトラックが2台停車している。その荷台には数本の鉄パイプが斜めに立てかけられ、先端からは煙があがり、花火の匂いが立ち込めていた。

ここでは製造に関わったロクさんが指揮を取り次弾装填の準備が進められていた。


「第1トラック、ロケット花火の次弾装填急げ!第2トラック、1番砲塔から10秒感覚で砲撃開始!」


すぐに火線が尾を引いてデータセンターに飛んでいき、花火よりも派手な音と光を上げる。

双眼鏡を除く監視担当者から砲撃の成功が報告される。

砲撃の成功に湧く本部を諌めるように、作戦司令のゲン爺さんから檄が飛んだ。


「この場所はすぐ気付かれるぞ。すぐに退避出来るように準備も同時進行だ!」



2050年7月1日午前11時05分。データセンター正面玄関前。


「砲撃が止んだ?裏のヘリ駐機場や車両に向かった者たちからの報告は?」

「まだありません!」


砲撃で屋外は混迷を極めている。玄関を入ったエントランスの奥では、防衛大臣の白石が首相に詰め寄り、興奮しすぎて唾を飛ばしながら声を出す。


「首相!非常事態です!ジャミングも受けているようですので、私はコントロール・ルームに向かい、レーザー通信で直接衛星レーザーを作動させ、報復攻撃を行います!」

「まて、白石君。この現場だけではなく、首都も同時に攻撃を受けていると考えるのが自然だ!現状把握を優先せ…」


慌てて首相も返答するが、振り返った時には、もう白石の姿は見えなくなっていた。


2025/10/14

文章が気になったので修正を入れております。

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