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世界の全てが嫌になったので、AIと世界を滅ぼしてみた  作者: 庄子貴裕
第三章:國の行末争うも、漁夫の利狙うは禿げた大鷲
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3-2

翌朝、碧はパチリと目を覚ます。その前日まで詰めるだけ詰めて、疲労も溜まっていたし、明の子供と戯れたり、デス子と話して緊張がほぐれたのか、ぐっすり眠れたようだ。あまり気負いすぎても良くないと自分に言い聞かせ、碧は身支度を整え部屋を出た。


リビングの食事用のテーブルでは明夫妻が食事をしていた。そしてソファーにはテレビで見たことがある女性ともう少し年の若い20代の女性が座っている。


「やあ、碧君おはよう。まずは朝食を。」


明議員の奥方がテキパキと朝食を用意してくれた。トースト、ベーコンエッグ、サラダにコーヒー。シンプルな朝食が並んでいた。


「(昨日の夕食も美味しかったな。きっとこの朝食も見た目以上に美味しいのだろう。素材が良いのかな。)」


実際施設で使っている食料は経費を削るためにかなり質が良くないものを仕入れていたようだ。とはいえ、お年寄りを死なせては票田として問題があるため、一応栄養価には問題はなかったのだが。そんな食事と首都の高級住宅街にあたる地域で流通している食料品、奥方の料理の腕も加味すれば、随分開きがあっただろう。

碧はしっかりと食事をいただき、吉田婦人に礼を言うと、リクに促されてソファーの方へ向かった。そこでは、先に食事を終えた明が先程の女性たちと打ち合わせをしていた。


「碧君、紹介しよう。私のグループの議員で、高野凛たかの りん議員と、秘書の氷室女史だ。」

「はじめまして、佐藤碧くんとデス子さん。話は伺ってます。今日は同行させていただくわ。よろしくね。」


「はじめまして!私が今回の主役デス子よ。アシスト期待してるわ!」

「こら!デス子、佐藤碧です。よろしくお願いします。」


デス子が先に挨拶してしまったため、碧も慌てて自己紹介し、頭を下げた。

氷室女史は眼鏡をかけたロングヘアーの理知的な印象の女性だ。

そして高野議員……彼女は政界の『白い薔薇』と呼ばれる女性議員だ。白のスーツが似合う、華がある容姿だった。元々モデルと言うことで体型にも気を遣っているのか、3人の子持ちと思えないほどスタイルも保たれていた。しかし美しい薔薇には棘がある。ヒステリック気味な言動で悪い意味で注目を集めている議員だ。

しかし、対面した彼女の印象は、テレビで見たことのある刺々しい雰囲気とは真逆の、柔和な雰囲気を感じた。


「おや、碧君は高野議員がイメージと違ってびっくりしているようだね。ご期待に応えられなくて残念だが、こちらが彼女の素さ。モデル時代から表のポーズはずっとこんなだけど。家族を愛するちょっと頑張る大人の女性さ。」


こうも真逆に雰囲気を変えられるものか…と碧は感心する。彼の周りには全く居なかった人種、いや単に碧が興味がなかっただけかもしれない。

しかも今自分の側にいる女性は考えが全く読めないと言うか、わかりやすいと言うか。そんな碧の考えをよそに、デス子がいつも通りに口を開く。


「なるほど、たしかに私の持ってる情報とはまったく違うわね。でも明が引っ張ってきたんだから、役に立つってことでしょ?期待してるわよ!」


デス子の遠慮のない、無駄に上から目線の言葉にも、高野は気にも留めなかった。元気な妹か娘を見るような目線を向ける。


「ふふふ、この子本当にAIなの?こんな自己主張の激しいAIは初めてよ。ところで吉田議員、なんかこの子の顔見たことある気がするのだけど。」

「高野議員もか、実は私も印象はまったく違うんだが、どこかで見たことがある気がするんだよ。」


高野議員に同意する明。しばらく二人で候補を挙げるも、結局答えは見つからず。出立の時間となった。

リクが運転する国産車のリムジンに四人で乗り込む。現地に着くまでの間、軽く打ち合わせを行う。


「危険に巻き込んで申し訳ないが、国の行末に関わる問題だ。君たちの協力に感謝する。」


明の言葉に、全員がうなづき視線を返す。ここまで挨拶以外喋らなかった氷室女子が、眼鏡に右手を添えて話し始めた。


「今後の予定を確認させていただきます。現地到着予定が11時。視察予定では、施設を1時間ほど回った後に食堂で昼食を取り、会議室で会談との予定でしたが、私たちはどこで動けばよろしいのでしょうか?」


碧がPCを開きデス子をアシスタントに今回の計画を説明する。ただし二人に必要な部分のみだ。


「到着直後に、頭上からドローンが接近します。おそらくドローンは警備用のドローンに撃墜されるでしょう。頭上に注意してください。落下物にぶつかれば負傷する恐れがあります。その後も騒ぎが起きますが、お二人は戸惑うVIPを演じ、首相の気を引き、正常な判断や指示が出来ないように混乱を引き起こしていただきたいのです。」

「キャハハ。適当にキャーキャー言ってるだけでも十分な気がしますけど、指揮系統が乱れてくれた方がアタシたちがやりやすくなるわ!」

「ああそうだ。一回車を降りたら、できるだけ総理の側に居て、この車に近づかないようにしてくれ。」


明がほのかに寂しさをにじませる表情で注意を促す。


「父から受け継ぎ、大事に乗ってきた車だが、故障も多くなってきてね。そろそろ新車にしようかと思っていたんだ……」


高速道路を流れる景色に目をやりながら、明は今度こそ寂しい表情を隠そうとはしなかった。


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