2-6
「明様、その陽動の役目、私がお役に立てるかもしれません」
「あら、アナタ喋れたの!」
デス子のツッコミを無視し、リクが続ける。
「私が昔の同志たちに声をかけ、首都の各地で大規模な抗議デモを実施するのです。事前に情報を流してやれば、警察や自衛隊も人数を割かざるを得ないでしょう。データセンターの人員も減らせるのではないでしょうか?」
明は戸惑っていた。この10年間、ずっと自分に付き従ってくれたリクが、ここまで自分の意思を主張してくるのは初めてだ。無論今までも意見を求めれば、的確な答えを返してくれたし、自分が間違っているときは諫めてもくれたが、明らかに今までとは違う。
「できるのか?いや、やるというのだな。あの事件以降、お前は仲間たちと一切接触を持っていなかったはずなのに。」
そう、明の懸念にはその点もあった。リクは明の知る限り、昔の仲間と連絡を取っていなかったのだ。
「ええ、やります。明様に拾っていただいてから、私は同志たちとの接触を絶ってきました。政治家である貴方の足枷にならないように、と。彼らからも接触したい、情報がほしいとアプローチはありましたが、すべて断ってきました。今さら虫のいい話だと拒否されるかも知れません。しかし、今こそが立ち上がる時だと、明様も覚悟を決められた。私も過去と向き合って、未来を掴みたいのです。」
明がリクの手を取り、二人は見つめ合う。いま、新たな覚悟でさらに前に踏み出すことを決めたのだ。
そして、そんな二人の姿を見て、碧も覚悟を新たにした。
「視察には当然私も同行します。派閥の議員にも参加をお願いして、警備の足を引っ張ってもらうのはどうでしょう?」
リクがさらに具体的な計画を提案する。
「そうだな、視察団全員が姿を消したら怪しまれるだろうし、いい考えだ。視察団のメンバーは碧君、デス子君、私と明だな。派閥の議員全員には話せないが、頼めそうなメンバーもいる。やってみよう。」
今日知り合ったばかりだが、明とリク、そして自分のバディであるデス子とで、強敵の懐に飛び込むのだ。碧は武者震いとはこんな感じなのかと、頭の隅で考えた。
日も傾き、計画の概要も決定したので、会議は一旦解散となった。メンバーはそれぞれやるべきことを進めていった。
碧とデス子はデータセンターの攻略に向けて、中枢エリアへの侵入ルート選定やシミュレーションを念入りに行うほか、別動隊の作業や作戦のサポートのため、多機能サポートAI『ぷちデス子』の作成を行った。
老人ホームのメンバーも分担ごとに忙しく動いている。
サブロウはデス子のクラッキングも多用しながら、資材の調達、収集を行っている。
危険物の調達は難しいが、クラッキングを最大限に利用し、物資の収集が表向きは目につかないように手配を進めている。
ゲン爺さんと二ノ宮は、襲撃班のリーダーとして、目につかないように現地の偵察を行い、
部隊の配置などを計画中だ。
他のメンバーは、ロクさんの町工場を起点に、資材収集や手製の兵器の製作にいそしんでいる。
明とリクは交渉などに駆けずり回り、瞬く間に3週間の時間が流れた。
ゲン爺さんが明からの連絡を元に、最後の作戦会議を実施した。
「碧よ、視察の日程が決まったぞ。7月1日金曜日の11時に訪問することに決まったそうじゃ。これは天も我らに味方したかもしれんのう。」
「その心は?」
「梅雨じゃからのう、天気が悪くてレーザーが使用できない可能性も高いぞ。まさに天気が味方してくれるわけじゃ。」
「襲撃班の危険が減少するのはいいですね。」
ここで、懸念事項に目を通したサブロウが、思わず声を漏らした。
「しかし、まさかお出迎えに本人がお出ましになるとはな。」
明からの情報の最後に、懸念事項として、この計画の最大の妨げになる情報が記されていた。
当日は視察の案内のため、内閣総理大臣『草生景』自らが出迎える、と!
第二章 終わり




