初めてのチーム
ダウシルの街並みはどこか既視感があった。
やはりゲームで見ているからだろう。
ヨーロッパとアジアの文化が溶け合ったコンスタンティノープル(現イスタンブール)に少し似ている。
こんな雰囲気のゲームだったよなあ……。
懐かしさをおぼえながら大きな通りを歩いていくと、間もなくダンジョン前広場へ着いた。
ここも人で溢れている。
「治癒師はいないか? 優遇するぜ!」
「アタッカーを募集だ! あと二人!」
広場では探索者たちが仲間を求めている。
ダンジョンの通路は狭いので、探索者たちは四~十人くらいのチームを組んで探索することがほとんどである。
チームの入れ替えは激しく、このようにメンバーを募集することも多いのだ。
「誰でもいい、メンバーになってくれ!」
若い男が募集をかけていた。
目つきが鋭く、チンピラ風の顔立ちだ。
長剣を装備しているところをみるとジョブは戦士あたりだろう。
そばには他に六人の探索者がいるが、みんな若く、いかにも初心者っぽいチームである。
このチームならすんなり俺を受け入れてくれるかもしれない。
「俺を入れてくれないか?」
呼び込みをしていたチンピラ風の男が俺を品定めする。
「あんたのジョブは?」
「遊び人だ」
「遊び人だとぉ……」
正直に打ち明けたが、やはり敬遠されるか。
スキル『空気を読む』を使うまでもなく嫌がられているのがよくわかる。
これは断られるかと覚悟したが、横にいた弓使いの女の子がとりなしてくれた。
「いれてあげれば? 武器はあるようだし、いいじゃない」
性格のよさそうな子だなあ。
青い髪のポニーテールがよく似合っている。
「だが、こいつの装備を見ろよ。胸当て一つしてないんだぜ」
リーダーがなおも渋ると、今度は弓使いの横にいた少女と少年が味方をしてくれた。
「かわいそうだよ、入れてあげなよ」
「そうそう、助け合いが大切だぜ」
どちらもまだあどけなさが残る顔をしており、女の子は魔法使い、男の子は戦士のいでたちをしている。
どちらも優しいのだろう。
だが、リーダーはまだ煮え切らない。
「だけど、遊び人じゃなあ……」
ここは自分で売り込んでみるか。
「まあ見てくれよ」
俺は鞘から短剣を抜き、軽快な足さばきで使って見せた。
宙返りなどの派手な技を織りまぜ、縦横無尽に刃を振るう。
さすがはレベル99だ。
体が思い通りに動いてくれる。
パワーだって悪くない。
まだまだ本気じゃないけど、これで実力の片鱗くらいはわかったんじゃないかな?
俺の演武にリーダーも驚き、考えを改めたようだ。
「すごいじゃないか。よし、アンタを入れてやるぜ!」
なんだか偉そうな態度だけどまあいいや。
それより、さっきの三人にお礼を言っておこう。
「口添えしてくれてありがとう。俺は佐倉欣太.よろしく」
「あなたの実力なら私たちの口添えなんていらなかったわね。私はファラ。弓使いよ」
「私はミフィ。魔法使いだよ」
「俺はラムダってんだ。ジョブは剣士だ。よろしくな!」
三人は同じ村の出身で一緒に帝都へ出てきたそうだ。
このチームに参加するのは今日が初めてとのことである。
年齢はファラが少し年上の十八歳で、ミフィとラムダが二つ年下の十六歳とのことだった。
ファラはしっかり者のお姉さんって感じだが、ミフィとラムダは子どもっぽい。
それでも二人は付き合っているそうだ。
チームは軽い打ち合わせをしてから出発した。
カクヨム作品のなろう移植です。
この作品がおもしろかったら、ブックマークや★での応援をよろしくお願いします!