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リバステ! ~ゲームの世界で気ままな遊び人になりました。でも、裏では聖騎士もやっています  作者: 長野文三郎


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14/16

穴の魔女の噂


 ダウシルへ来てから八日が経過したが、俺は毎日ファラたちとダンジョンに通っていた。


「やった! キーンさん、私のレベルが15になったわ!」


 冷静なファラが飛び上がって喜んでいるぞ。

 地道な努力のかいあって、ファラはレベル15に、ミフィとラムダもレベル14になった。

 レベル15に到達できる探索者はなかなかいない。

 浅い階層で探索をしていれば経験値は上がらないし、そうなる前に命が尽きてしまうからだ。


「これもキーンさんのおかげね」

「いやいや、俺だって三人には助けられているよ」


 じつは俺の聖騎士レベルも一緒に上がり、いまや14になっているのだ。


 名前 :サクラ・キンタ

 ジョブ:聖騎士(レベル14)

  力  :52

  早さ :17

  体力 :51

  賢さ :16

  運  :17

  HP :129

  MP :70


 聖騎士のスキルと呪文

  かばう:仲間を守る

  身体強化魔法(初):自分の防御力をあげる

  回復魔法(小)

  身体強化魔法(中):仲間の防御力をあげる

  旋風破(闘気を飛ばす全体攻撃)


 新しく聖騎士のスキルも増えたけど、いまのところ使う機会はないな。

 それに、聖騎士であることはまだ仲間にも内緒にしているのだ。

 仲間の防御力をあげる身体強化魔法(中)は魅力的だけど、追い込まれるような状況にはないっていない。

 裏のステータスをさらすほどじゃないだろう。

 ファラのレベルが上がったと聞いたミフィが俺の手を掴んでブンブンと振りまわした。


「キーンさん、約束だよね。ファラ姉ちゃんがレベル15になったら地下三階へいくんだよね?」

「わかったから落ち着けって」


ファラはやることが子どもっぽくて困る。


「落ち着いてなんかいられないよ。地下三階に行くって言ってよ!」

「わかったって。リーダーのファラがオッケーなら俺はかまわないぞ」

「やったぁ!」


 ミフィとラムダは大喜びだ。

 ダンジョンは深ければ深いところほど魔物も強くなるが、そのぶん探索者の数も減り、魔結晶を見つける機会も多くなる。

 しかも、深層にある魔結晶は大きくなるのだ。

 今後はこれまでよりたくさん稼げるとあって二人は喜んでいるのである。

 地下三階へ行くことにファラも異存はないようだ。


「準備を整えて明日から地下三階へ臨みましょう。今日はもう少しだけレベルを上げてから戻るわよ」


 生真面目なファラらしい意見だ。

 だが、うちのお子様カップルたちがわがままをいいだした。


「その前に休憩したいっ!」

「俺も腹が減ったっす!」


 二人は子犬のような瞳で俺の顔を見上げた。

 以前、カジノの景品でチョコマシュマロをもらってきてやったのだが、それ以来二人はすっかりおやつの虜なのだ。

 甘いものは貴重だから、完璧に餌付けされてしまっている。

 そういえばチョコマシュマロのくせに3000レーメン分のチップと交換だったもんなあ。

 あれ以来、夜な夜なカジノで小さく稼いではお菓子を取ってきている俺である。

 大きく勝つことはまだしていない。

 おそらくギャンブルだけで生計を立てることも可能だろう。

 だが、俺はそんな生き方を拒否した。

 三人と一緒にダンジョンにもぐるのは楽しかったからだ。


「困ったものね……」


 おやつに夢中の二人を見てラファはため息をついている。

 だけどファラもおやつは嫌いじゃないらしく、出されたものは残さず食べている。


「今日は動物の形のクッキーを持ってきたぞ」

「わーい!」

「俺、お茶を淹れるっす!」


 こんな感じで、俺たちは楽しい休憩を入れつつダンジョンを探索している。

 休憩する俺たちの横を他のチームが通り過ぎていった。

 その先はワープトラップが仕掛けられているのだが大丈夫だろうか?

 スキル『空気を読む』はトラップをも敏感に察知するので、俺は引っかかったことがない。

 だが、ワープトラップは巧妙に仕掛けられており、ベテランでも起動させてしまう探索者が多いのだ。

 もっとも、ワープトラップは地表に送り返されるだけで、殺傷性はないのだが。


「うわっ!」

「ばか野郎! せっかくここまで来たのにトラップを踏みやがったな!」


 魔法陣の光に包まれて、先ほどのチームが消えていった。

 今頃はダンジョン前広場に飛ばされて呆然としているのだろう。


「地下三階に来てからよく目にするよな」


 ファラが事情を教えてくれる。


「地下に行けばいくほどワープトラップは増えるんだって」

「でも、逆に考えれば便利だな。帰りたいときはあれを踏めばいいんだろう?」

「そうそう、けっこう利用している人も多いらしいわね」


 それにしても、どうしてこんなにワープトラップが多いのだろう?

 地下三階だと15メートルに一つの間隔で出てくるぞ。


「トラップを仕掛けているのは穴の魔女だって噂よ」

「穴の魔女?」

「レジーナ・スマトラよ。彼女は皇女の一人だったけど、帝国に恨みを抱いて邪神を復活させようとしているんだって」


 レジーナ・スマトラだって!?

 俺はプレイしたことがないけど、レジーナは『ダウシルの穴』における主人公の一人だぞ。

 彼女は邪神を討伐するチームに賢者として参加するのだ。

 それなのにどうして……。

 レジーナは邪神サイドとは、やはりここは俺が知っている『ダウシルの穴』とは違うようだ。



 その日はワープトラップを使って地上に戻った。

 使うタイミングさえ間違えなければ、これは便利なトラップである。


「魔結晶を換金しに行こうぜ」


 そんな相談をしていたら広場にいた人々が騒ぎ出し、群衆がさっと左右に分かれた。

 割れた人の波の間をただならぬ覇気をまとった男がこちらに向かってくる。


「ハルミット様だぁ!」


 黄色い声を出したのはミフィだった。

 ハルミット……、ハルミット・クランプか!

 つまり『ダウシルの穴』の主役の勇者のことである。

 やはりこの世界にはいたんだなあ。

 ミフィは憧れのまなざしで勇者を見ている。

 あれがレベル60の勇者か。

 さすがに強そうだな。


「ハルミット様は穴の魔女が邪神を復活させないように頑張っているんですよ」

「穴の魔女を狙っているのは勇者たちだけじゃないですよ。有名な探索者たちはみんな狙っているっす」


 ラムダが補足してくれた。


「どうしてまた?」

「帝国は穴の魔女に3億レーメンの懸賞金を賭けているからです。帝国滅亡をたくらむ穴の魔女は国家反逆罪のお尋ね者っす」


 賢者レジーナがねえ……。

 俺にはどうにも実感がわかないぞ。

 レジーナは変人ではあったけど、国を愛する皇女だったはずだ。


「ハルミット様はいつ見ても強そうだなあ」


ミフィはうっとりしているが、ラムダが少しだけ反発した。


「強いっていうなら、うちのキーンさんだって負けてないぞ。キーンさんなら勇者にだって勝てるんじゃないですか?」


 ラムダが無邪気に聞いてくる。

 他人に聞かれたらどうするんだよ。

 少年は脇が甘くてひやひやするぜ。


「無理むり、勝てっこないよ」


 おそらく、すべてのスペックが違いすぎるだろう。

 勇者はパラメータがまんべんなく高い優等生だ。

 いくら俺のレベルが99でも、勝っている数値は運くらいにちがいない。

 それに、人間同士があえて戦う必要も感じないぞ。

 ただ、負ける気もしないけどね……。

 勇者が俺たちのすぐ近くまでやってきた。


「握手してください!」


 アイドルに対するようにミフィが叫ぶが、勇者はじろりと見ただけで行ってしまった。


「すごくクール!」


 ミフィは喜んでいるけど、それでいいのか? 

 なんだか冷たい印象だぞ。

 そういえば『ダウシルの穴』の勇者はいつもピリピリしていたな。

 主人公のくせに余裕がなくて俺は嫌いだった。


「カッコいいわぁ」


 勇者をほめちぎるミフィについ反感を覚えてしまった。


「おいおい、ミフィはラムダと付き合っているんだろう? そんなに他の男を褒めるなよ」

「別にいいじゃないですかぁ。リアルで付き合うことなんて絶対にないだろうし」


 俺の知り合いでもいたよな。

 彼氏がいてもアイドルが好きな女の子。

 あれと同じ感覚だろうか?

 だが、ラムダはそれでいいのか?


「もう慣れたっす」


 うちの剣士君は十六歳とは思えないくらい達観していた。

 二人が納得しているのなら外野が口を挟むことはないか。

 ミフィは無邪気に勇者が好きなだけであってガチ恋ではないのだろう。


「よし、それじゃあ改めて魔結晶を――」


 突如、ダンジョン前広場に雷鳴が響き渡り、巨大な魔法陣が地面に浮かんだ。

 少し離れたところで勇者が叫んでいる。


「全員広場から離れろ。これは悪魔召喚だっ!」


 人々がパニックになる中、俺は素早く三人の手を引いて広場の端へ移動した。


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