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リバステ! ~ゲームの世界で気ままな遊び人になりました。でも、裏では聖騎士もやっています  作者: 長野文三郎


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13/16

夜の街


 一日中ダンジョンを探索していたけど俺の足取りは軽かった。

 まだ遊びが億劫になるほどの年齢じゃないからね。

 オンとオフはきっちり切り替えていくぞ。

 ミフィたちも連れてきてやってもよかったのだが、ここからは大人の時間だ。

 三人をで来るのはもう少し後でもいいだろう。

 歓楽街のゲートの向こうはきらびやかな夜の街が広がっていた。

 いや、本当にお酒を飲んだり風俗へ行ったりしようというのではない。

 俺の目的は他にある。


「すみません、カジノ・リッチはどこですか?」

「この通りの突き当りだよ」


 気のよさそうな酔っ払いのおっちゃんが笑顔で教えてくれた。

 ゲーム『ダウシルの穴』では何度もお世話になったカジノである。

 やはりこの世界にも存在していたか。


「あんた、これからかい?」

「ちょっと運試しにね」

「カモられないように気をつけな!」


 千鳥足のおっちゃんは元気よく手を振って去っていった。

 少ない所持金を少し増やしてやろう、というのが俺の思惑である。

 普通のばくち打ちはそれで身を亡ぼすんだけど、遊び人はちょいと違う。

 なにせ俺の『運』はいい。

 パラメータの数値は155もある。

 しかも俺には『伝説のギャンブラー』というスキルまで備わっている。

 だから、少なく見積もってもマイナスになることはないと踏んでいるのだ。

 ただ、賭け事で食っていくつもりはないぞ。

 あくまで今夜は緊急避難的な措置である。

 角を曲がるとひと際ネオンがギラギラと輝くカジノが見えてきた。


「さて、腕の見せ所だな……」


 騒ぐ心を落ち着かせながら俺は店内に入った。


「いらっしゃいませ~♡」


 ほぉ……、ここではバニーガールまでリアルだ。

 ゲームの中ではそれほどときめかなかったが、間近でみるとグッとくるものがあるなあ。

 抑えきれないオスの本能みたいなものだろう。

 だが、同時に俺の理性も囁いている。


(惑わされるな。気を抜くとウサギに狩られるぞ!)


 わかっている、大丈夫さ。

 俺は伝説のギャンブラー……のはずなんだから。

 今日はその伝説が始まる日だ。


 奥に進むと俺はざっと店内を見まわした。

 ここにはスロット、ポーカーテーブル、ルーレットなど、様々な種類のギャンブルがそろっている。

 客層はさまざまで、お金持ちから探索者、身なりの悪い者までいろいろだ。

 奥の方に黒服が守っている扉があるぞ。

 あそこは高額チップを賭けるハイローラーが集まるビップルームか。

 興味はあるけど、あそこへ行くのはまた今度だ。

 今夜は様子見だからね。

 ギャンブルのテーブルを観察し終えたので次は景品交換所へ回った。

 ここではチップを現金に換えることもできるが、景品と交換することもできる。

 ここでしか手に入らないようなお宝が景品として並ぶこともあるのでチェックは怠れない。

 もちろん、そういったアイテムは高額だが、カジノの魅力の一つになっている。

 俺は武器や防具が並ぶケーズの前に立った。

 なかなかいい品揃えじゃないか。

 猛毒が刃から染み出す『呪術師のダガー』なんて俺と相性がよさそうだ。

 手甲グローブなんかも悪くない。


 交換所を確認してから、俺は手持ちの3000レーメンをチップに替えた。

 渡されたのは500レーメンチップが六枚である。

 他人が見れば少ない軍資金だろう。

 だが、俺にとってはこれでじゅうぶんだ。

 それじゃあ、はじめてみようか!

 戦場をルーレットと定めた俺は席に着いた。

 ルーレットはホイールを転がる玉がどの数字に入るかを当てるゲームだ。

 賭け方は数通りあるが、いちばん高い倍率はストレートアップで三十五倍だ。

 これはどの数字になるか番号を当てる一点賭けである。

 ここのルーレットは0~36までの数字があるので確率的には三十七分の一で的中する。

 まあ、そううまくはいかないんだけどね。

 それでも俺は1000レーメンずつ、赤の15と黒の17の二ヵ所にチップを置いた。

 17は高校三年生のときの出席番号、15はそのとき好きだった島村優実ちゃんの出席番号だ。

 きてくれよ、俺のラッキーナンバー!


「ベットを打ち切ります」


 ディーラーが宣言した。

 これでもう追加で賭けることはできず、後は運を天に任せるのみである。

 ホイール内をカラカラと回転していた玉は徐々にスピードを落とし、ついに一つのホールに収まった。


「赤の15番です。おめでとうございます」


 俺の前に3万5000レーメン分のチップが戻された。

 やっぱり遊び人は持ってるなあ……。

 目立つのは嫌なので今夜はこれくらいにしておくか。

 出入り禁止になったり、裏社会の人間に目をつけられても困るからね。

 人間、何事につけほどほどがいちばんなのだ。

 今はそういうことにしておこう……。

 景品所にはお菓子なども並べてあったので、明日のおやつだけ景品交換した。

 手に入れたのはチョコマシュマロだ。

 これ、けっこう好きなんだよね。

 たくさんあるからファラたちにも分けてあげるとしよう。

 残ったチップは換金して昨晩も泊まった宿屋へ帰ることにした。



 夜の闇が増すほどに街のネオンもまた妖しい光を強めていた。

 店からは人々の歌声や喧嘩の声が聞こえ、街路には春をひさぐ女たちが立ち始めている。

 おや、娼婦たちの横にいるのは騎士たちじゃないか。

 なにをやっているのだろう?

 かつて聖騎士ルマンドをプレイしたことのある俺は少しだけ興味を覚えた。

 ルマンドは中央騎士団の団長でもあったからだ。


「ほら、さっさと出すもんを出せ。素直に出さないとしょっ引くぞ!」

「勘弁しておくれよ。今夜はまだ一人も客がついていないんだから」


 ブツブツ言いながらも娼婦は騎士に1000レーメンの大銅貨を渡した。

 なんと、騎士が娼婦からみかじめ料をとっているのか!?

 地回りではなく騎士がこれとは情けない。

 俺は持っていたタオルでほっかむりをして不良騎士たちに近づいた。


「やれやれ、天下の騎士様が女から金をせびるとは情けない」

「なにっ!」

「貴様、我らを愚弄するか?」


 愚弄するもなにも、醜い行いをしているのはこいつらだ。


「いやいや、あんたら恥ずかしくないのか?」

「おのれぇ……」


 騎士たちは剣の柄に手をかけたが、俺はそれを抜かせなかった。

 あらかじめ両手にしていた豆粒ほどの石つぶてを指ではじいたのだ。

 いわゆる指弾というやつである。


「ぐわっ!」

「め、目があっ!」


 目を狙うのがお家芸になってきたな。

 軽く弾いただけだが、急所に当たれば動きは封じられる。

 踏み込んで、悶絶している騎士たちに当て身を食らわせた。


「まだやるっていうなら相手になるぜ」

「く、くそっ!」

「覚えていろよ!」


 分が悪いのを悟ったのだろう。

 騎士たちは慌てて逃げていく。

 俺は騎士たちからスキル『スリ』でかすめ取った大銅貨を姉さんたちに返した。

 

「いい男! 遊んでいくかい?」

「たっぷりサービスするよ!」


 姉さん方は年上だったようだ。

 スキル『ジゴロ』が発動して目がハートマークになっているぞ。

 誘いに乗ればさぞかしホットな夜になるだろう。

 だが、俺にその気はない。


「気持ちだけいただいとくぜ!」


 俺の裏の顔は聖騎士である。

 それは隠して生きていくつもりだけど、同じ騎士としてあいつらの行為が許せなかっただけだ。

 ルマンドはよく騎士団長なんてやっていたよな。

 あんなのにかかわるなんて俺は絶対にごめんだぞ。

 やっぱり俺は遊び人として生きていこう、その考えを新たにした夜だった。


カクヨム作品のなろう移植です。

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