12 タイミング2
ああ、どうしよう。
瞬に見られた。
キスなんてするつもりなかったのに……。
「……ありがとう。別れる事にはなったけど、思い出にはなった。これからあまり坂本とは関われないかもしれないけど、部活の先輩後輩として、よろしく……」
「……はい」
何も頭に入ってこなかった。
何か兵藤先輩が言っていたけど……。
どうしよう……。
その日はそのまま家に帰った。
翌日。
瞬に会えるかな……?
昨日の事、ちゃんと言わないと……。
誤解されたよね?
兵藤先輩とは別れたんだよ?
私は駿の事が好きなんだよ?
ちゃんと……言わないと……。
あ……昨日で罰の掃除当番は終わったんだっけ。
「おはよ!佳世、ちゃんと兵藤先輩と話せた?」
「……おはよ。うん、別れたんだけどね……」
昨日の事を友達に話した。
「はあ?!何で!そんな事……」
「駿が見えたら、動けなくなっちゃったの……」
「……あー!もう!何でこんなにうまくいかないの?!」
「……わかんない」
「と、とにかく!新谷君とも話さないと!」
「……うん」
「今日にでもちゃんと話すんだよ?!」
「……わかった。でも、この流れだと……告白までしないといけないよね?」
「……そうだね。もう、新谷君に言うしかないよね」
「……言えるかな、私」
「……言わないと。このままだと、終わっちゃうよ?」
「……そうだね。……うん。そうだ」
「覚悟決めなよ?」
「わかった、ありがと」
「頑張んな!」
そうだ。
もう、怖いなんて言ってられない。
このままだと終わっちゃう……。
それならいっそ……当たって砕けるしかない!
よし、覚悟は決まった。
全て話そう。
今日、私は、瞬に告白する。
放課後、部活も終わり、瞬を探す。
あれ?
もうバスケ部、終わってる?
「あの、すいません」
「はい?」
「男バスの新谷、いませんか?」
「ああ、新谷君ならもう帰ったよ?」
「え?あ、そうなんですか、ありがとうございます」
早いな、瞬。
急いで帰ろう。
帰ってシャワー浴びて、瞬の家に行こう。
そして告白するんだ。
準備を済ませ、瞬の家へと。
歩いて十分もかからない。
あれ?向こうから来るのは……瞬?!
丁度良かった!
「あ、瞬!あ、あの……、ちょっと話があるんだけど……いい?」
あれ?何か慌ただしい感じ?
どこかに行くのかな?
「ど、どうしたの?慌てた感じだけど?」
「あ、ああ。悪い!今ちょっと時間ないんだ!」
「え?あ……」
行っちゃった……。
そんな……。
せっかく覚悟決めてきたのに……。
でも……。
少しホッとしてる自分もいる。
覚悟を決めたと言っても、怖いものは怖い。
もし振られたら、と考えるとね……。
でも、次会った時には、ちゃんと言わないと……。
そんな風に思っていたんだけど……。
その翌日も、その次の日も、瞬とは会えなかった。
夜、瞬の家に行っても、瞬はいなかった。
何かあったのかと思い、瞬のおばさんに聞いてみたけど、友達と会うと言って家を出たと言っていた。
誰と会ってるの?
メッセージを送ろうか、とも思ったけど、ちゃんと会って話したい。
そうして二日ほど過ぎた頃。
「佳世!新谷君と話せなかったの?!今聞いたんだけど、新谷君、バスケ部の子と付き合い始めたって!!!!!」