11 俺と相原
佳世?
どうしてこんなところに?
部活の帰りか?
私服に着替えてるから違うか。
どこかに出かける途中か?
「ど、どうしたの?慌てた感じだけど?」
「あ、ああ。悪い!今ちょっと時間ないんだ!」
「え?あ……」
悪いな、佳世。
今は一刻も早く相原のところに向かわなくちゃな。
俺は佳世を置いて走り出した。
『相原?今、葬儀場の前に着いた』
『えっ?!ホントに来てくれたの?!』
『ああ、出て来れるか?』
『うん!今行くね!』
よし、相原には会えそうだ。
何を言えばいいのかはわからない。
だけど、これで少しでも相原に元気づける事が出来ればなんでもいい。
そう思い待っていると。
「やあ、初めまして。私は千尋の父です。キミが新谷君かい?」
相原のご両親らしき人たちと、お姉さんらしき人も相原と一緒に葬儀場から出てきた。
「ご、ごめん!どうしてもみんなが挨拶したいって言うから……」
「あ……は、はじめまして!相原の友達の新谷っていいます!」
「あら、はじめまして。千尋の母です。やだ、イケメンじゃないの!」
「はじめまして。千尋の姉です。へえ、千尋が言ってたのって、この人?」
「ち、ちょっと、やめてよ!」
「ははっ、まあまあ。悪いね、千尋の為にこんな時間に」
「いえ、あの、し、心配だったので」
「千尋はさっきまで放心状態で、大分参っていたんだよ。なんせ、大好きなおばあちゃんが亡くなったんだからね。私達も皆落ち込んではいたんだがね……」
「千尋ったら、新谷君から電話が来てこっちに向かってるってなったら、ソワソワしだして」
「ね!なんかこっちまで元気貰っちゃった!」
「や、やめてよ、みんな……」
「ところで新谷君は、夕食は?」
「あ、部活から帰ってすぐだったんで……」
「そうかい。じゃあ千尋、これで二人で食事に行ってきなさい」
「え?いいの?」
「ああ。今日は交代でおばあちゃんの線香を見てないとだから、行っておいで」
「そうね。ゆっくり食べてきなさいよ?」
「あ、ありがとう。あ、新谷君はそれでいい?」
「え?いや、こちらこそごちそうして頂いていいんですか?」
「気にしなくていいんだよ。行っておいで」
そうして、相原と二人でファミレスへ。
「なんか、逆に申し訳ねえ感じなんだけど」
「いいの。来てくれて嬉しい!」
良かった。いつも通りの相原だ。
元気が出たなら良かったな。
「何日か学校休むんだって?」
「うん。明日通夜で、明後日お葬式。お葬式の日にお墓に入れて終わり、なのかな?」
「そうなんだ。俺、身近な人が亡くなった事ないから、わかんないんだ」
「そうだよね。私も初めてなんだ」
「そっか」
「うん、実感として薄いんだけど、さっきひいおばあちゃんの話をしてたら、急に寂しくなっちゃって……」
「俺と電話してた時か……。ごめん」
「あ!謝らないでよ。嬉しかったんだから……。それにね?何となくだけど、ひいおばあちゃんの話をしてた方が、ひいおばあちゃん、喜ぶんじゃないかなって思うの」
「あー……そうかもな」
「ね?寂しいけど……その方が良いのかなって」
それから、食事をしながら相原のひいおばあちゃんの話を聞いた。
時々涙ぐむこともあったが、相原も楽しそうだった。
俺は相原を元気づける事が出来たんだろうか。
そんな事を考えながら、相原の笑顔を見つめていた。