灰
帝国の城内
「ええ、あそこは数年寝かしておけばいいと思います。王国は一年でねをあげるでしょうがもろ手をあげて降参するにはさらに数年かかるでしょうし、私達は状況が好転するのを黙ってみていたらいいのですよ。こちらは穀物の収穫を重ねるごとに活気が出て税収も増えていきますからね」
「そうですか、むこうは早急にどうにかしたいように見受けられます」
「そうしたいならば、まあ、そうしてもいいでしょうが内政に関することならこちらからはなんとも出来ません、戦争中ですから」
「王国の魔術士を宰相として引き抜く案もあるようです」
「それに乗るような宰相は受け入れるべきではありませんね、また裏切るでしょう。国が滅びた後に流浪しているならいいかもしれませんが」
「待っている間に他国に侵略されたりはしませんか」
「それはないでしょう、明らかに帝国と共闘している東の魔女の方が周辺国を含めても強い戦力を持っているのですから、そこから上前をはねるよりは事の顛末を傍観している方が賢いですよ。傍観しない国はまわりも変な国だと思うからそこはやってしまってもいいし、こちらが手を出す前に王国との戦争で疲れるでしょうからさらに他の国が手を出してくるかもしれません。ですがどう考えても王国を攻める国はありませんよ、周辺国はせいぜい王国の周辺にある領土をどさくさにまぎれてかすめ取るだけでしょう」
「・・いえ実は、王国の魔術士どのと会ったのですが・・」
「まああなたに直接接触してくるとはだいぶ慌てているようですね、これはねをあげるのはもっと早いかも。それでなんと」
「一計を講じて王や貴族の心根を折ろうと計画しています」
「これは、これは、あのご老人ですよね、先を見通しましたか。おいておけばなる様になるのに、よほどあの国に愛着がわいたと見えます」
「それで、暗黒大陸に現れた化物を国内に誕生させてそれを黒帝に倒されるところを見せて戦力差を思い知らせたいと」
「それで騙される王様ならもっと簡単に転ぶでしょうが、それを織り込んでも王国に未来が無いと白旗をあげるほどの聡明さや国民を思う気持ちも無いように思いますね」
「そうですか、では断っておきましょう」
「ですが、何か自暴自棄になられても困ります、更地にもどされでもしたら再構築に大変なエネルギーがかかりますから。・・誰かエライ者の使いを使わせてはどうでしょう。ルーシーさんが行って、この国の方針をかえなさい、と言えばどうですか」
「小娘の言うことを聞かないと思いますが」
「じゃあベーゼルさん」
「ああ、それなら」
「神々しく行きますか、それともまがまがしく」
「神々しくですかね、魔界につながりを感じて来られても困りますから」
「ああそうですね、来ても安全を保障できませんから、神隠しとかになると困りますし。しばらくしたら神官長達が帝国の代表として行けばいいのでしょう。使徒として認識されて神殿を建てたりすればいいのですよ、そしてメイドもおいておけば不意に変なことをやらかしたりしないでしょう」
「では、その方向で」
「あのご老人に伝えてください、まだ血気盛んなようですから時間を開けると何をするか分かりません」
「と、言うことなんです。セッティングお願いします」
「分りました、この国の国教に女神を据えるのですね」
「神、ですね、ベーゼルはそこまで化けられないから」
「ルーシー様では無いのですか」
「私だと小娘の外観を見て初見でなめられる可能性があるから。ただ神官は女だから、そちらでも候補者を見つくろっておいてくれ」
「はい分かりました。さすがマーラ様、スケールが違いますな」
「それは内緒で、そうそう、これからも体を気遣って知の巨人として務めてくれ、とのことです」
「オオオオオオ、さようでございますか!これは嬉しき事、これからもこの老体に鞭打って頑張りまする」
「ハハハッ、その動きが鈍った体を捨てて若い体に移らないのですか」
「いえいえ、この年老いた体はこの国で仕事についている間は捨てません、それにマーラ様からおほめ頂いたのだからなおさらです」
「そうか、そういうものか、我が一族は戦いの中に身を置くから使い終わるときは戦死か詰め腹を斬るときだからそこまではいかないよ。では化物は処分してくれ」
「それがですな、これはもうつぶすには大きすぎまして」
暗黒大陸に上陸した化物の半分ぐらいに成長した化物が王城の地下空間いっぱいに生成していた。
「壊すのが苦手だったか、魔族にしては変わっている、普通反対なんだが。では私が始末するぞ、いいね」
ルーシーは手をかざすと化物は凍結した。
「風通しを良くすれば腐らずに粉になるだろう」




