はじめての日常
居室に帰るとマーシャがソファーに座って膝を軽くたたいた。ここに座って甘えていいよってことだろうか?
まあ微妙だが耳かきの時間らしい。膝枕で耳掃除してもらうのは気持ちいい、寝てもいいかな、などと至高の時間を楽しんでいるとマーシャが
「明日トリア王国から新種の穀物の種子を取りに来ますがその時にソフィア様達王族の近衛師団に属する女性騎士が護衛として来られます、ソフィア様に契約のネックレスを届けるなら剣士様にお頼みするのが良いと思いますがいかがいたしますか」
ソフィア様とは、誰なのだろうか、探ってみる
「どんなネックレスが良いのだろうか」
マーシャは、困り顔で
「あなた様が選んだネックレスが意味を持ちます、宝石商を呼びましょう」
すぐに宝石商が来ていくつものネックレスを広げて言った
「皇帝様がご婚約に使われるネックレスにふさわしいものを集めてまいりました。明日までにご入用とのことですが手直しなど出来る職人を待機させておりますので何なりとお申し付けください」
許嫁がいたんだねアスマス君。しかしこれは・・マーシャの顔をうかがいながら探り探り選べばなんとかなるか・・と思ったが。ド派手なのばかりだ、唯一まともなのはこの濃紺の石がついたネックレスだから、これかな。
「ではこのネックレスにします、これの鎖の部分に皇帝の婚約者にふさわしい細工をお願いします」
あいまいな発注をしてしまったが宝石商はマーシャと何か相談しているので何とかしてくれるだろう。明日が楽しみだ。
マーシャは機嫌が良く
「良い石をお選びになられました。あなた様の瞳の色と同じですし、ソフィア様の瞳の色ともよく合っています。鎖には髪の色と同じ黄金の細工をほどこし、石のまわりには皇帝の紋章に使われている龍の爪と豊穣のつるを織り込むよう頼みました」
婚約者が龍の爪の入ったアクセサリーを喜ぶのか分からないが、ここはマーシャさんのセンスにお任せするしかないのである。そもそもシーサーペントのウズには爪は無かったけど、まだ他に守護神がいるのかもしれないが、どうなのかな、まあノリでのりきろう。明日の昼前には到着するとのことなので受け取ってすぐ渡さなければならない。
翌日早朝、トリア国の一団が訪れた、注文したネックレスはまだ納品されていない。穀物の種子を速く受け取って今日中に領地内まで帰りたいようだ。だがこちらにも都合がある、なんとか引き延ばすのだ、そこでハイエ宰相に引き渡しを頼んだ、まさか宰相みずから引き渡しを行っているのに途中で中断して帰るわけにもいかないだろう。それに彼は口がたつ、細かい栽培条件から種子の保存方法、税率を決めるに至った経緯、開発費の内訳などなど、嘘か本当か分からないが喋りまくる、相手ももう頭に入ってないだろう、だが我慢強く聞くしかないのだ。
それを遠巻きに見ている体格のいい女性騎士たちがいた。4名の女性騎士はヴァレンティーナ、ラアラ、リオニ、カーサであった。ヴァレンティーナは金髪の髪をなびかせた身長175cmぐらいの剣士でリーダー格の美人、冷静に見えた。ラアラも剣士だが大剣を使うようだ、常に何か喋っている落ち着きのない印象、赤髪で色黒の肌をしている、だらしなくヘソを出した服装、喧嘩っ早そうで危ない。槍使いのリオニは黒髪の190cmほどの高身長で色白、切れ長の目は獲物を探しているようにまわりに気を配っている。カーサはフードを深くかぶっていて下を向いているこれと言って印象に残らない、短剣を使うようだ。
わたしはネックレスが来たらすぐ渡せるようにさらに遠巻きにして観察していた。
ラアラは声が大きいのでよく聞こえてくるのだが
「あの宰相ほっとくと明日の昼まで喋りまくるぜ、俺が行って黙らせてこようか」
リオニが困ったように
「戦争になるからやめとけ、そのうちしゃべり疲れるだろ。それよりあの子供はなんだ、もしかして皇帝か」
ラアラが顔をしかめて
「んな分けねえだろ、誰もお供がいねえ。それに子供っていってももうちょっと大きいだろ、噂の戦果が正しければ、あの体格では魔力はしれてる。
おおかたトイレの場所で聞きたいんだろ、はやくうちらは知らないと教えてやらないと漏らしちまうんじゃねえか」
ヴァレンティーナは少し笑いながら
「わからんぞ、そもそもが異常だからな、魔物の塊は我々が総がかりでも一体倒すのに数時間はかかる、それを一瞬で100体倒したのだからな」
数が尾ひれつけて増えている、せいぜい5体だったのに。ヴァレンティーナはさらに続けて
「あれが皇帝なら、こっちに来る途中に聞いたダンジョン攻略についても聞いてみたい。古の龍を3体討伐して魔剣を4本持って帰ったそうだし」
ラアラは即座に
「ねえよ、どこの神話の英雄だ」
4人は笑った。魔剣4本持って帰って来たのだけ当たっている、しかしウズは初代皇帝との約束で帰してくれただけだ。
そうこうしているとマーシャが小走りで私に駆け寄ってきた、どうやらネックレスが出来たようだ。マーシャは小声で
「もうすぐミアが持ってここに来ます、ハイエ様はもう限界です、あなた様が3人に話しかけてください」
了解した。女性剣士たちは雰囲気が変わったことに気付いて身構えた。




